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オマケ(彼視点)
ごめんね
彼女の即答に、司祭様は満足気に頷いて聖言を唱え始めた。
聖言は普段話してる言葉よりずっと古い言葉だから、僕にも意味はわからない。ただ何となく、言葉に力がこもっているのは感じる。
不安そうな彼女を宥めて、女神の祝福を待つ。前に見かけたことがあるけど、そんなに長くはかからなかったはずだ。
早く…早く彼女をこの世界に……
思わず彼女の肩を掴む手に力が入る。
程なくして聖言は終わり、司祭様の手が淡く光った。祝福の光だ。
彼女はめちゃくちゃビクっとしてたけど、僕は彼女との絆が一気に強まったのを感じてほっとした。
流石は愛の女神の祝福だ。
…うん。これで彼女とこの世界の繋がりも、かなり強くなったはず。
彼女はもう、ちょっとの事ではこの世界から消えたりしないはずだ。
もしかしたら、もう二度と元の世界には戻れなくなったかもしれない。
そんな大事な事を、勝手に決めた後ろめたさは当然ある。
けれど、彼女を失いたくない気持ちの方がずっと大きかった。
……………ごめんね。
結婚したという事実にひどく動揺している彼女を連れて家に帰った。
それで説明しようとは思ったんだけど、狼狽える彼女が可愛すぎて説明はベッドですることにした。
抱けば抱くほど絆が深まるような気がして、途中から止まれなくなった。
できればそれでうやむやにしたかったんだけど、彼女が聞きたがったので仕方なく再度説明した。でも色々隠しておきたい部分があったので、ぼかし気味にして。
突っ込まれたら、一応正直に言うつもりはあったんだけど…。
説明の途中で、彼女が目を輝かせた。
「私……帰れるの…?」
って……。
…面白くなかった。
…もの凄く面白くなかった。
住んでた世界に愛着があるのはわかる。
けど……
元の世界に帰ったら、僕とは二度と会えなくなるのに。
それでも帰りたいの?
そう思ったら、凄く腹が立ってしまった。勝手に色々決めておいて身勝手だとは、自分でも思うけど…
だからつい「もう帰れないよ」と冷たい声で言ってしまった。
そうしたら、彼女は目に見えて落ち込んだ。
それでも落ち込みながらも「………"もう"?」って彼女は尋ねた。できれば黙っておこうとした部分に、ちゃんと彼女は気づいたのに。僕は最初の決意は忘れたふりして、ただ冷たく繰り返した。
「もう無理」って。
理由は言わずに。
結婚しただけで元の世界に帰れなくなったかどうかは正直わからない。
けど敢えて断言した。
彼女の未練を断ち切りたくて。
元の世界に返したくなくて。
そうしたら、彼女は泣いてしまった。
その様子に胸は痛んだけど、彼女を離したくない想いの方が遥かに強かった。
もう絶対に手放せない。
だからまるで呪いをかけるかのように繰り返した。
「もう絶対に二度と帰れないよ」
って。
相当ショックだったのか、彼女は泣きながら眠ってしまった。
…罪悪感はある。
でも、彼女と離れるなんてできない。
どうしても嫌だ。
もう一度やり直せたとしても、きっと僕は同じ事をする。
説明なんてせずに、彼女をこっちの世界に強引にでも繋ぎ留める。
……ごめんね。
でも、こっちの世界で幸せにするから。
向こうの世界の分も含めて。
ずっと一生、大切にする。
約束するから。
彼女の柔らかい髪をそっと撫でる。
その頼り無い感触が、まるで今の彼女自身みたいで切なくなる。
僕が彼女に隠した部分。
「どうして」帰れなくなったのか。
それはそのうち、バレてしまうかもしれない。けどその頃には「仕方ないなぁ」って、「私も一緒にいたいから、もういいよ」って、許してもらえるように頑張ろう。
…それが僕にできる最大限の事だから。
………元の世界には帰さない。
たとえ方法があっても絶対に。
これからいっぱい可愛がって、僕の事をもっと好きにさせてみせる。
僕がいなきゃ、呼吸もままならなくしてあげる。
凄く幸せにして、元の世界に戻りたいなんて、これっぽっちも思わなくさせてあげる。
こっちの世界の方が、僕と一緒の方が遥かにいいって、絶対に思わせてみせる。
だからこの世界で、僕と一緒にいて。
死ぬまでずっと、僕の側にいて。
ごめんね。愛してる。
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