【完結】なにぶん、貴族の夫婦ですので

あれから

あれからも、ダンは私の側にいる。約束通りに。
時々切なそうな目で私を見つめる以外は、特に変わらない態度で。
私は、そんな視線を感じるたびに落ちつかない気分になりつつも、ダンを手放せない。

本当は、ダメなのかもしれない。
そんな想いを向けられていると知った上で、それでも側に異性をおくなど。
けれど、ダンはもうずっと、十年以上も私の一番近くにいたのだ。
今さら離れることなどできない。

日常生活が困るとかそういうことではなくて、ただ嫌なのだ。
彼と離れるのが。
離れるどころか、距離ができることすら嫌なのだ。
それくらい、彼は私にとってかけがえのない人なのだ。

別に何も疚しいことなどしていないのだから…

そんな考えが浮かぶこと自体が、この状況に疚しさを感じている証拠だと自覚しつつも、それでもやはりダンと離れられない…。