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動揺
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夫が部屋から出ていくと、ダンが緊張した面持ちで口を開いた。
「お嬢様。逃げましょう」
「何を言っているの?」
ダンの強張って蒼白な顔を見上げる。
「危険です。逃げましょう。あなたは何があっても私が守りますから。この身に代えても」
一瞬、ダンが何を言っているのかわからず、次いで理解した。
ああそうか。普通の貴族の夫婦なら、きっとこの後、二人とも酷い目に遭わされるのだろう…
けれど私は首を横に振った。
「その必要はないわ」
「どうしてっ…!」
「危険なことになんてならないもの」
「っ…」
「そう悪いことにはならないから大丈夫よ」
安心させるように微笑んでみせる。
確信があったから。
夫は、私たちに理不尽なことなどしないと。
「………夫婦だから、ですか?」
「ええ、そうね」
悔しそうに顔を歪めるダンに苦笑を返す。
私たちは、決して愛し合っている夫婦ではないけれど、仲が悪い訳でもない。義務とはいえ、何度も身体を重ねて子どもだってできたのだ。
わかることだってある。
夫は、今回のことで酷いことなどしない。私にもダンにも。
その程度の信頼はある。
おそらく夫も、私とダンが不貞にまでは及んでいないことは、信じてくれている筈だ。
ただ、夫の言う通り、話し合いはしないといけないけれど…。
軽くため息を吐いた私に、ダンの苦しそうな視線が突き刺さった。
「お嬢様。逃げましょう」
「何を言っているの?」
ダンの強張って蒼白な顔を見上げる。
「危険です。逃げましょう。あなたは何があっても私が守りますから。この身に代えても」
一瞬、ダンが何を言っているのかわからず、次いで理解した。
ああそうか。普通の貴族の夫婦なら、きっとこの後、二人とも酷い目に遭わされるのだろう…
けれど私は首を横に振った。
「その必要はないわ」
「どうしてっ…!」
「危険なことになんてならないもの」
「っ…」
「そう悪いことにはならないから大丈夫よ」
安心させるように微笑んでみせる。
確信があったから。
夫は、私たちに理不尽なことなどしないと。
「………夫婦だから、ですか?」
「ええ、そうね」
悔しそうに顔を歪めるダンに苦笑を返す。
私たちは、決して愛し合っている夫婦ではないけれど、仲が悪い訳でもない。義務とはいえ、何度も身体を重ねて子どもだってできたのだ。
わかることだってある。
夫は、今回のことで酷いことなどしない。私にもダンにも。
その程度の信頼はある。
おそらく夫も、私とダンが不貞にまでは及んでいないことは、信じてくれている筈だ。
ただ、夫の言う通り、話し合いはしないといけないけれど…。
軽くため息を吐いた私に、ダンの苦しそうな視線が突き刺さった。
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