サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽

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第四章 タイ・ラオス・ベトナム駆け足雨季の旅

サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 149

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      三十三話


 2007年7月7日、日本では七夕祭りで、ヒコ星と織姫が年に一度のセックスを楽しんでいる頃、僕はタイのパタヤーからバンコクへバスで向かっていた。

 前日はテスコロータスのMKでタイスキをしこたま食べて、MKダンスにも遭遇する幸運にも恵まれた。

 そのあとは夜の街には繰り出さず、N君が疲れていたこともあって、おとなしくホテルに帰って寝たのだった。


 さて、今回の旅行もあと数日だ。

 バンコクへ戻って買い物などを実施し、タイマッサージで疲れを取ったら、あとは帰国を待つだけだ。

 朝10時過ぎに出発したバスは、これと言った渋滞もなく、それでもバンコク市内に入ればグダグダと遅れて、ようやく午後二時過ぎに東バスターミナルへ到着した。

 スクンビット・オンヌットGHへバックパックをおろして、少し休んでからホアランポーンへ向かった。

 おそらくまだファミリーゲストハウスに滞在しているI君に会うためである。

 三日ぶりに訪れてみると、前回と同様に大田周二さんが入り口で本を読んでいた。

 このあとの旅行の際も何度かここを訪れたが、いつも大田さんは入り口で静かに本を読んでいるのだった。

 「どうも藤井です。パタヤーから戻ってきました。I君はまだいますか?」

 大田さんは結構武闘派であるが、内に秘めた闘志など表面的には全く窺えないもの静かで腰の低いひとである。

 こういう人がいざ怒ると滅茶苦茶怖いのだ。

 「すぐもどってきますから、ここでお待ちください」

 ニコニコしながらプラスチック製の椅子を勧める大田さん。

 「ところでパタヤーはいかがでした?」

 「いやはや、欧米人のために作られたようなリゾート地ですね」

 「今はオランダやロシアなどの麻薬やドラッグのマフィアが入り込んできていますからね。パタヤーは一昔前のパタヤーとは大きく変わっているのじゃありませんかね」

 大田さんはミャンマー取材が基本だが、今はタイ南部のイスラム過激派の取材に、時々南部のハジャイなどに出かけている。

 長年タイに住んでいるので、パタヤーのこともある程度情報が入るのだろう。

 さて、そうこうしている内にI君が戻ってきた。

 しばらくI君と太田さんとを交えてコーラを飲みながら、旅話から政治話からタイの話から日本の話も、様々なことを語り合った。

 そして、大田さんはゲストハウスの仕事があるので行けないが、今夜はI君と、僕の知人が営む「一等食堂」で晩御飯を食べようということになった。

 この時期、タイは雨季の始めであるが、三人で雑談をしている時からスコールのような激しい雨が降り出した。

 しばらくは雨が降り続くバンコクの町並みを三人で眺めていた。こういうシチュエイションが僕はとても好きで、幸福を感じるのだった。

 一時間あまりも降り続いた雨は、一気にカラッと晴れて、すぐに今度は夕焼けとなった。

 日没前の太陽の日差しもかなりきつく、水溜りから水蒸気が上がる。

 太田さんに「また来ますからお元気で」と言葉を残してファミリーゲストハウスをあとにした。

 地下鉄に乗り、アソークでBTSに乗り換えてビクトリモニュメント駅で下車、一等食堂へ。

 ちょうど晩御飯時なので、店はほぼ満席に近い状態だった。

 いつも午後八時ごろにしか顔を出さないオーナーのMさんだが、この夜は既に店にいた。

 「あれ?藤井さん、帰ってこられましたか」と人懐っこい笑顔で迎えてくれた。

◆一等食堂はその後店舗のビル所有者に乗っ取られて、今はラチャプラロップ通りで長月と名を替えて営業しています。






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