サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽

Pero

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第六章 ベトナム旅行記・アイスコーヒーウイズミルク

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        十一話


 彼女はちょっと疲れたような顔をして、「ペロ吉、どうしたの?バスが着いても全然降りてこないから、今夜の便か明日の便に変更したのかと思ったよ」と言った。

 僕は、ミニバスがバス発着場に予定通りに連れて行ってくれず、あるゲストハウスに着いたが、そこで偶然にもこのゲストハウスの女性がいたことなどを説明した。


 ※当時のバス発着場付近

 



 彼女にずっとバス発着場で待ってくれていたのと聞くと、発着場が見えるカフェでヨーグルトを食べていたとのことで、しかも一人ではなく、彼女の隣にニコニコして立っているオレンジさんという女性と一緒に待っていてくれたということだ。

 このオレンジさんと彼女とは中学生時代からの友人で、三日前にハノイで合流して、翌日の夜行列車でラオ・カイに到着、サ・パには昨日の今頃の時刻に到着したらしい。
 オレンジさんは勿論女性で、東京在住るらしいのだが、夏休みを利用して少しだけ彼女の旅のお邪魔をしているというわけである。

 ここまで我慢して、僕のこの旅行記を読んでくださった方達の期待を大きく裏切ったのではないかと申しわけなく思うのであるが、つまり僕は出発日が異なった航空チケットをいくつかキャンセル待ちしていて、彼女が八月十二日頃にハノイに到着する便が取れないかプッシュしなさいといってくれていたのに、結局、十五日発のチケットしか取れなかった。

 だからオレンジさんがハノイに着く前に彼女と会って、僅か二日間でも二人で過ごせるチャンスをみすみす逃したという結果になってしまったのだ。
 今から思えば、仮に何も色めいたことがなかったにしても、二人だけのハノイを過ごせるという、大げさにいえばハレー彗星や月食や日食の如く、人生で何度もめぐってこない絶好のチャンスを、自分自身の不注意によって逸したということなのだ。


 彼女は七月初旬に日本を脱出してタイからラオスに滞在中の頃、僕がメールで「仕事の都合がうまくつけば、十日から十五日の間で出発できそうだ。もし予定通り仕事がはかどらない場合は、八月の終わり頃になりそうだよ」と送ったら「メールや、場合によっては国際電話で連絡を取れている限り、私はいつでもペロ吉を迎えに行くことができる」と返事が届いていた。

 だから、その辺じっくり吟味検討の末、八月末頃に彼女の滞在先に旅する計画に変更してもよかったのだ。つくづく僕って要領の悪い男だと思ってしまうのだが、そんなことを今更いっても仕方がない。

 「やあ!はじめまして、会えて嬉しいです」

 僕はオレンジさんに丁寧に、ぎこちなく挨拶をした。

 「あっ、噂の探偵さんだ。無事に着いてよかったね」

 オレンジさんは典型的な日本人女性というふっくらした体躯を揺すりながら、ニコニコと嬉しそうに笑うのであった。

 とりあえず彼女達が僕のために予約してくれていた部屋に案内してもらってバックパックをおろし、僕の部屋でベトナムティーでも飲んで無事の再会を祝おうということになった。

 Phuong Nam ゲストハウスは二棟の建物を階段でつないで構成されていて、一階にフロントとロビーのある建物は二階建てで、一、二階はドミトリー風の部屋になっているようで、階段を昇った別館の建物は、地下一階が経営者の住居、一階~三階が客室になっており、部屋数は十室程度と思われた。


 ※Phuong Nam ゲストハウス

 



 僕の部屋は階段を上がって最初の部屋で、中には大きなベッドと縦長のタンス、テーブルと小さな椅子が二つ置かれていて、トイレと兼用のシャワー室はお湯が出た。(一泊四ドル)

 窓からはサ・パの洋風建物やその向こうには霧に曇った山々が見え、ちょっとメルヘンチックな景色である。

 僕をここまで案内してくれたゲストハウスの娘さんは、早速ポットにお湯を入れて持って来てくれた。彼女は小柄で、不二家のペコちゃんのような顔をしていて、本当に中学生くらいにしか見えなかった。

 僕達はベトナムティーを小さなティーカップに注いで、「乾杯!よかったねぇ」と再会を祝った。

 僕がノイ・バイ空港からハノイまでのミニバスのことや、夜行列車で一緒になったベトナム青年、脳天気なフランス娘達などの話をして彼女達に笑われたり、ロータストラベル・ゲストハウスのアイスコーヒー・ウイズ・ミルクは最高だったねなどと、久しぶりにリラックスした気分になって三人で暫し談笑した。

 「ねえ、考えたら僕は朝から何も食べていないんだよ」

 朝からではなくて、昨日のバンコクからハノイまでの機内食以後は水分以外、何も摂っていなかったのだが、何故か恥ずかしくて本当のことをいえなかった。
 僕達は昼食にサ・パの市場の方に出かけることにした。

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