サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽

Pero

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第六章 ベトナム旅行記・アイスコーヒーウイズミルク

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       第十六話


 翌日、朝七時頃に部屋をドンドンと叩く音で目が覚めた。

 「ペロ吉ィ~、先に市場の屋台に行ってるよ!」

 本当に彼女達は元気だなぁ、と感心しながら重い体を起こしてシャワーを浴びた。

 昨夜はあれから彼女達の部屋で大富豪というトランプゲームで二時間くらい遊んだのだが、このゲームは最も早く上がった者が大富豪で、ビリの者は大貧民と名付けられ、中間の者は平民と呼ぶのである。

 しかしシステムとしては弱者いじめというか、大貧民は最初配られたカードから最も有効なカード(ジョーカーが最も強く、次に二のカード、次にエースのカードという具合で、最も弱いカードは三のカードということになる)を一枚大富豪様に進呈し、大富豪様は大貧民に対し、配られたカードの中で最も弱いカードを一枚恵むというものなのだ。

 これは明らかに民主主義の基本に反するもので、いわば戦前の日本帝国主義に通じる、弱いものを抑圧し支配するという人間の風上にも置けない行為であり、人類が長い歴史を経てようやく勝ち取った自由と平等の社会に相反するものではあるまいか。

 ちょっと大げさだが、要するに僕はこのゲームを普段殆どしたことがなく、勿論やり方は知っているが、彼女達の方がよく知っていて、最初に大貧民になった僕は最後までずっと大貧民のままで、少し気分を悪くして部屋に帰ったのであった。

 そんなことは地球的規模で考えればどうでもいいことなのだが、昨夜彼女達の部屋から帰る頃にはポツポツと雨が降り始めており、今朝は土砂降りというほどではないが、シトシトと鬱陶しく雨が降り続いているのである。

 僕は急いで綿パンにTシャツという格好で、朝食を摂るために市場の屋台に出かけていった。

 昨日の昼食を摂った市場の屋台は、まだ七時半頃だというのに大勢の人でごった返していた。
 僕は彼女達がいる昨日のオバちゃんが切り盛りする屋台の前に座り、人差し指を一本だしてフォーを注文した。

 「ヤッパリ雨だったねぇ」

 「でもどうせトレッキングで汗をかくんだからいいじゃないか」

 「マイケル君達、バイクで迎えに来るかなぁ?」

 「いや、絶対に来るって、彼等は商売なんだから」

 といったような話をしながら朝食を済ませ、(本当にこのフォーというベトナムうどんは美味しくて飽きない)食後のベトナムコーヒーが飲みたいねぇと、昨日のカフェの方向に歩いて行った。

 そのカフェには僕達の宿の前を通って行くのだが、宿の前には二百五十CCくらいのバイクに乗ったベトナム青年三人が既に待機していた。

 彼等は僕達に何か話しかけてきたが、ベトナム語なのでさっぱり分からない。

 おそらく、「今日のトレッキングに行くのはは君達だね」というようなことをいっているのだと思うが、マイケル君がまだ来ないので、僕達はカフェの方向に歩いて行った。

 この時点ではまだ三人とも、「雨だし、どうしようか~」というふうに、余りの乗り気でなかったに違いない。

 さて、カフェに着いてみると早朝から営業は行っておらず、やむなく宿に戻った。
 すると宿の前には既にマイケル君が到着していて、「モーニン!さあ行こうぜ!」といった感じで気合が入っているのだ。

 「よし行こうよ!」

 僕達はそれぞれの部屋に着替えに戻り、僕は彼女からもらったラオスの半パンに白のタンクトップに青いチェックのシャツを着て、頭には紺に赤のペイズリーのバンダナという、センスの微塵も感じられない冴えない格好で降りていった。

 相変らず雨は降り続いており、彼女は赤の短いレインコートにカーキのパンツとサンダルを履き、頭には例のベトナム人民三角帽(ノン)といった、ベトナムのファッション雑誌に乗っても不思議でないような風貌であった。

 オレンジさんも赤の短いレインコートに茶のパンツにサンダルといった格好で、二人ともなかなかお洒落で用意がいいのだ。

 彼女は僕にピンクの、簡易レインコートとでもいおうか、一応頭から被って両腕を通すことのできるナイロン製の雨具を手渡し、「これはフエ(ベトナム中部の都市)で買った雨具なんだよ。使って!」と言った。

 このあたりは割と彼女の心遣いを感じたので、昨日の大富豪の件は帳消しにしてやろうと思った。

 僕達は三人のバイクの後部座席にそれぞれ跨り(マイケル君のバイクは三人乗りで彼女はサンドイッチ状態である)、マイノリティーの部落へ出発した。
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