2 / 9
②
舞踏会から数日、
バルコニーでの出来事から、ソフィアはハルトの事で頭が一杯になっていた。
「ハルト様……」
出窓の窓辺で頬杖をつき、屋敷の庭をぼんやりと眺めていると、
「お嬢様、何か考え事ですか?最近ずっとそうしていらっしゃいますが……もしかして、気になる令息でも出来ましたか?」
メイドのマリアが、紅茶を持って部屋に入ってくる。
「そ、そんなわけ……そうなのかも知れないわね……元々学園にいた時も憧れのようなものはあったの……でも、あの頃は全く令嬢達を近づけようと為さらなかったあのハルト様が……。」
独り言のようなトーンで、ぼそぼそと話すソフィア。
マリアは、パッと明るい表情になり、
「それはおめでとうございますお嬢様!」
ティーセットをサイドテーブルに置くと、両掌を正面で合わせ、眼を輝かせるマリア。
そんなマリアとは対照的に、ソフィアは溜め息をつきながら、
「何が?なにもめでたくなんて無いわよ……」
窓から外を眺めるソフィアに、マリアは嬉々として紅茶をカップに注ぎながら、
「おめでたいですよ!だって、今まで数々の令息様達とお話ししても、何も感じなかったんですよね?それが、お嬢様の心を動かす方に出会えた。これは奇跡ですよ。だから、おめでとうございます。」
まるでもう婚約が決まったような勢いのマリアに圧されるようにソフィアは苦笑いをしつつ、
「ありがとう、マリア。でもね、あの方は変わられてしまっているのよ……あんなに明るく、カリスマ性のあったあの方が……なんかくたびれて疲れた表情をされていたの………。」
うつむき加減でソフィアはそう話す。
そんなソフィアを励ますようにマリアは、ガッツポーズをしながら、
「……お嬢様。それはチャンスです。」
鼻息をフンッ!
と出すような感じのマリアに、ソフィアは素直に疑問に感じ問う。
「は?何でよ?」
そんなソフィアに、マリアは滔々と、
「人は、私生活で充実している時は、言い寄るものは邪魔に感じますが、弱っている時に優しく声をかけられれば、コロッと………。」
悪い顔で微笑むマリア。
「あはは、マリア……顔が怖い……。」
ちょっと引き気味のソフィアにマリアは口角を上げ、わざとらしく、
「そうですよ。女は怖いものです。ハルト様と言えば、公爵令息ですよね。それはそれは……お父上もその方ならお許しに。」
そう言ってウンウンと頷くマリア。
ソフィアはそんなマリアに、
「父は関係無いでしょ?」
マリアはズイッとソフィアに顔を突きだし、
「いえ、おお有りです!貴族同士の結婚ですからね。爵位やお相手の領地の事なんかも………。ノワール公爵様の所は領地も申し分なく大きいですし、農地の収入の他に、領内にある工場での魔法具の生産も……。何より、このヴェール領にある鉱山で取れる魔石は魔法具の生産には欠かせません……これはご両親の後押しも望めますね。」
ウンウンとうなずき、ブツブツと独り言を繰り返すマリア。
ソフィアは、そんなマリアを呆れ顔で、
「あのね、マリア。色々とあなたの中で話を進めてるみたいだけど、話はそんなに簡単じゃ無いと思うわよ…。」
ソフィアはまた溜め息をつく。
マリアは不思議そうに訪ねる、
「何でですか?」
ソフィアは首を左右に降ると、マリアに、
「だって、ハルト様とは先日二年ぶりに話したばかりで、それも、お邪魔したみたいだし、印象は最悪よ……きっと嫌われたわ。」
今にも泣き出しそうな表情に変わるソフィア。
しかし、マリアは自信満々に、
「いえ、大丈夫です。」
ソフィアは少しビックリして、マリアにたずねる。
「何で、そう言えるの?」
ソフィアの問いに、マリアは得意そうに、
「それは、現ヴェール侯爵様と現ノワール公爵様のお祖父様、そうですね、お嬢様の曾祖父同士はかつての戦争で、共に戦った戦友です。その縁をたどれば……。」
両腕を組み、ウンウンと頷きながら自分の考えを話すマリアに、ソフィアは驚いた顔で問う。
「な、何でそんなことをメイドの貴女が知ってるのよ。」
マリアはその問いに冷たい視線をソフィアに向けながら応える。
「お嬢様、歴史……お忘れですか?学園では何を学ばれていたんですか?そもそもお嬢様は………。」
ソフィアは、青い顔でマリアの説教を聞きながら、ハルトへの想いを募らせるのだった。
バルコニーでの出来事から、ソフィアはハルトの事で頭が一杯になっていた。
「ハルト様……」
出窓の窓辺で頬杖をつき、屋敷の庭をぼんやりと眺めていると、
「お嬢様、何か考え事ですか?最近ずっとそうしていらっしゃいますが……もしかして、気になる令息でも出来ましたか?」
メイドのマリアが、紅茶を持って部屋に入ってくる。
「そ、そんなわけ……そうなのかも知れないわね……元々学園にいた時も憧れのようなものはあったの……でも、あの頃は全く令嬢達を近づけようと為さらなかったあのハルト様が……。」
独り言のようなトーンで、ぼそぼそと話すソフィア。
マリアは、パッと明るい表情になり、
「それはおめでとうございますお嬢様!」
ティーセットをサイドテーブルに置くと、両掌を正面で合わせ、眼を輝かせるマリア。
そんなマリアとは対照的に、ソフィアは溜め息をつきながら、
「何が?なにもめでたくなんて無いわよ……」
窓から外を眺めるソフィアに、マリアは嬉々として紅茶をカップに注ぎながら、
「おめでたいですよ!だって、今まで数々の令息様達とお話ししても、何も感じなかったんですよね?それが、お嬢様の心を動かす方に出会えた。これは奇跡ですよ。だから、おめでとうございます。」
まるでもう婚約が決まったような勢いのマリアに圧されるようにソフィアは苦笑いをしつつ、
「ありがとう、マリア。でもね、あの方は変わられてしまっているのよ……あんなに明るく、カリスマ性のあったあの方が……なんかくたびれて疲れた表情をされていたの………。」
うつむき加減でソフィアはそう話す。
そんなソフィアを励ますようにマリアは、ガッツポーズをしながら、
「……お嬢様。それはチャンスです。」
鼻息をフンッ!
と出すような感じのマリアに、ソフィアは素直に疑問に感じ問う。
「は?何でよ?」
そんなソフィアに、マリアは滔々と、
「人は、私生活で充実している時は、言い寄るものは邪魔に感じますが、弱っている時に優しく声をかけられれば、コロッと………。」
悪い顔で微笑むマリア。
「あはは、マリア……顔が怖い……。」
ちょっと引き気味のソフィアにマリアは口角を上げ、わざとらしく、
「そうですよ。女は怖いものです。ハルト様と言えば、公爵令息ですよね。それはそれは……お父上もその方ならお許しに。」
そう言ってウンウンと頷くマリア。
ソフィアはそんなマリアに、
「父は関係無いでしょ?」
マリアはズイッとソフィアに顔を突きだし、
「いえ、おお有りです!貴族同士の結婚ですからね。爵位やお相手の領地の事なんかも………。ノワール公爵様の所は領地も申し分なく大きいですし、農地の収入の他に、領内にある工場での魔法具の生産も……。何より、このヴェール領にある鉱山で取れる魔石は魔法具の生産には欠かせません……これはご両親の後押しも望めますね。」
ウンウンとうなずき、ブツブツと独り言を繰り返すマリア。
ソフィアは、そんなマリアを呆れ顔で、
「あのね、マリア。色々とあなたの中で話を進めてるみたいだけど、話はそんなに簡単じゃ無いと思うわよ…。」
ソフィアはまた溜め息をつく。
マリアは不思議そうに訪ねる、
「何でですか?」
ソフィアは首を左右に降ると、マリアに、
「だって、ハルト様とは先日二年ぶりに話したばかりで、それも、お邪魔したみたいだし、印象は最悪よ……きっと嫌われたわ。」
今にも泣き出しそうな表情に変わるソフィア。
しかし、マリアは自信満々に、
「いえ、大丈夫です。」
ソフィアは少しビックリして、マリアにたずねる。
「何で、そう言えるの?」
ソフィアの問いに、マリアは得意そうに、
「それは、現ヴェール侯爵様と現ノワール公爵様のお祖父様、そうですね、お嬢様の曾祖父同士はかつての戦争で、共に戦った戦友です。その縁をたどれば……。」
両腕を組み、ウンウンと頷きながら自分の考えを話すマリアに、ソフィアは驚いた顔で問う。
「な、何でそんなことをメイドの貴女が知ってるのよ。」
マリアはその問いに冷たい視線をソフィアに向けながら応える。
「お嬢様、歴史……お忘れですか?学園では何を学ばれていたんですか?そもそもお嬢様は………。」
ソフィアは、青い顔でマリアの説教を聞きながら、ハルトへの想いを募らせるのだった。
あなたにおすすめの小説
触れられないはずの私が、ただ一人の彼にだけ心も体も許してしまいました
由香
恋愛
男性に触れられると体調を崩す令嬢リリア。
そんな彼女にとって唯一“触れられる”存在は――幼なじみの公爵令息レオンだけだった。
手を取られ、抱き寄せられ、当たり前のように触れられる日々。
それがどれほど特別なことなのか、彼女はまだ知らない。
やがて政略結婚の話が持ち上がり、“触れられない相手との結婚”か、“彼に触れられる人生”かを選ぶことに。
「お前に触れていいのは俺だけだ」
逃げ場のない独占と、甘すぎる溺愛。
これは、触れられないはずの少女が、ただ一人にだけすべてを許していく物語。
許嫁が「愛する人ができた」と告白してきたのでお別れします~そのあと元許嫁の家が没落したようですが関係ありません~
明衣令央
恋愛
許嫁に「他に愛する人ができた」と告げられ、婚約を解消したヒルデガルド。
深く傷ついた彼女を支えてくれたのは、誠実な青年カーチスだった。
彼の優しさに触れ、ヒルデガルドは少しずつ笑顔を取り戻していく。
一方で、彼女と別れた元許嫁の家には、静かに崩壊の兆しが――。
誰も傷つけない、穏やかなざまぁと再生の恋物語。
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
白い結婚のまま、旦那様は薔薇のような美人に夢中になりました
柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢リディアは、美貌で有名な侯爵レオンハルトに嫁いだ。
けれど結婚して二年、夫婦は一度も結ばれないまま――白い結婚だった。
それでも旦那様は優しかった。
冷たいわけではない。気づかいの言葉も、穏やかな笑顔もくれる。
だからリディアは、愛されてはいなくても、いつか少しは夫婦になれるのではないかと信じていた。
そんなある日、彼女は知ってしまう。
旦那様が薔薇の君と呼ばれる絶世の美女に心を奪われていることを。
彼が触れなかったのは私にだけだったのだと。
都合のいい奥方として、役に立っていたと悟る
静かに離縁を決意したリディアは、実家へ戻ったあと、女子学院で働き始める。
すると侯爵夫人時代には当たり前だった実務のすべてが、外では驚くほど必要とされていた。
感謝され、認められ、自分の足で立ち始めた彼女は、少しずつ見違えるほど美しくなっていく
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
公爵夫人は愛されている事に気が付かない
山葵
恋愛
「あら?侯爵夫人ご覧になって…」
「あれはクライマス公爵…いつ見ても惚れ惚れしてしまいますわねぇ~♡」
「本当に女性が見ても羨ましいくらいの美形ですわねぇ~♡…それなのに…」
「本当にクライマス公爵が可哀想でならないわ…いくら王命だからと言ってもねぇ…」
社交パーティーに参加すれば、いつも聞こえてくる私への陰口…。
貴女達が言わなくても、私が1番、分かっている。
夫の隣に私は相応しくないのだと…。
皇太子殿下は、幼なじみに触れていないと落ち着かない
由香
ファンタジー
幼い頃から一緒に育った皇子は、なぜか距離が近すぎる。
後ろから抱きしめられ、手を取られ、頬に触れられるのが当たり前の日常。
やがて彼は皇太子となるが――その距離は変わらないどころか、むしろ深まっていき。
「触れていないと、落ち着かない」
公の場でも離してくれない彼の執着に、周囲は騒然。
けれどその腕の中は、どうしようもなく安心してしまう。
これは、幼なじみの距離のまま始まる、逃げ場のない溺愛の物語。