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運命の分かれ道
しおりを挟む「さぁどうぞ、お嬢様。」
彼はミノアの手をとって、軽やかな足取りで先導する。
ヨットの知識がまるで無いミノアから見ても、それは高級とわかる作りをしていた。
彼は完璧に彼女をエスコートしている。
ミノアは彼の完璧な立ち振る舞いに惚れ惚れしてしまった。
ヨットの内装は豪華で、キッチンやソファー奥にはベッドも備えられている。
トイレやシャワーまであるので、ここで生活しても何の不自由もなさそうだった。
広く豪華な空間。落ち着いた色味の木目調で統一された内装は、特別な時間を演出している。
「素晴らしいわ。あなた・・・本当に何者なの?」
見た目も美しく気品ある振る舞い。やり過ぎない程度にミノアに好意を寄せていることを悟らせる視線や行動。絶妙な距離感。
男を自由自在に操り手玉にとってきたミノアには、彼の心理技術の高さがよくわかる。
エスコートされるままにソファーに腰掛けると、彼はミノアのために紅茶を振舞ってくれた。
センスの良さを感じるティーカップと、お揃いの小さなお皿にはかわいいクッキー。
「お店に来るあなたを見るたびに、僕はもっとあなたを知りたいと思うようになった。」
彼の真剣な瞳が、ミノアを捕らえる。
(あなたでいやらしい妄想をしていたのよ、なんて・・・まさか言えないわ・・・)
バツの悪さを感じながら、彼を見つめ返す。
「あなたを見た瞬間、これは運命だってそう思ったんです。」
彼は続ける。
(彼も私に運命を感じていたの・・・?もしかしてこれは本当に・・・運命なのかも・・)
ミノアはいつもの判断力を完全に失っていた。
運命の彼と、この素晴らしく豪華なヨットの中で情熱的な交わりをかわす。
そう決意してしまった。
運命の人ならば、この身を任せ彼の胸に飛び込んでみたい。そう思ってしまったのだ。
それが今後の自分の運命を、恐ろしく険しいものに変えてしまうとは夢にも思わずに。
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