ビッチですが、愛されています。

aika

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性格の悪い女

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可憐な乙女なんて、この世に存在するはずがない。
ミノアは、そう信じていた。

この世界に存在する女は、みんな等しく性格の悪い、卑しい生物に決まっている。



「いやあ、いるんじゃないですかぁ。生まれながらにして性格の良い女っていうのは。」

「いるわけないじゃない、そんなもの。」

私の髪を編み込みんでいる彼を、鏡越しに見る。
青く光る彼の髪は、いつ見ても美しい。

この髪に触れてみたいと、彼に声をかけた日のことを思い出した。
彼の名は、スバル。

ミノアと彼は、もう10年来の付き合いになる。

女性の髪を整えるのが、彼の仕事だ。
スバルは髪結いの仕事を通して、普段から多くの女性と接している。

彼は恋人を作らず、何年もミノアの恋人の「二番手」で良いという立場を貫いてきた。
恋人を作らないのは、女性の本性を知っているからだとばかり思っていたが、そうではなかったのか。

「そんなに性格の良い女がいるっていうなら、どうしてスバルは恋人を作らないの?仕事柄出会いなんて山のようにあるでしょう。」

性格の良い女がいるというのなら、そういう女を恋人にすれば良い。

「あれ、ミノアさん、まだそんなこと言ってるんですか?全然僕のことをわかってないなあ。」

「何よ、もったいぶらないでちょうだい。」

「僕には、心に決めた人がいるからですよ。」

彼はミノアの髪を手際よく編み込みながら、笑った。

人気髪結いの彼は、大通に面した立派な店舗を持っている。
いつも華やかな女性がひっきりなしに訪れ、予約が難しいと評判の店。


「二番手でも良いからそばに居たいと思えるくらい、ミノアさんに夢中だって知りませんでしたか?」

彼はミノアが落ち込んでいる時はいつも、こうやって自信を取り戻させてくれる男だった。


「僕は一生あなたの本命の二番手でいいんです。それで満足していますよ。それに・・男なんて、性格の悪い女が好きなもんなんですよ。」

「どういう意味よ。失礼ね。」


ミノアの身体に、この男が欲しいという欲求が急激に溢れ出てきた。
彼とはしばらく身体を重ねていない。

彼はいつも仕事で忙しくて、あちこちから引っ張りだこのカリスマ髪結いなのだ。



「ねぇ・・・久々に抱いてくれない・・?」

「僕が忙しいの、知ってますよねぇ?」

彼は、そっけなくミノアを突き放すような言い方が得意だ。
淡々と仕事をこなす。
さすが長年の付き合い。ミノアがどうすれば悦ぶのか、熟知している。

「ねぇ、スバル・・・お願いよ。」


彼はふっと満足げに笑うと、ミノアの耳元へ唇を寄せた。

「この後、一人分の予約時間を空きにしてあります。」

店の外から見えないように、優しく唇を重ねる。
スバルとの、久々の口付け。
懐かしい香りに、ミノアは一瞬にして興奮してしまった。


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