8 / 9
告白(SIDE ナオミ)
しおりを挟む私が働いている雑貨屋は、国内外のあちこちからオーナーが買い集めた置き物や食器、ステーショナリーで溢れている。
職場に来るだけで私は毎日ワクワクした気持ちになる。
昔から可愛いものには目がなかった。
雑貨屋はきっと私の天職だ。
「いらっしゃいませ。あれ、七瀬さん、どうしたんですか?」
目の前に、いつものカフェの「七瀬さん」が立っている。
珍しい、と驚くと、彼はいつも通りの爽やかな笑顔を浮かべ、口を開く。
「あなたが働いているお店を、一度見てみたかったんです。」
ハンサムな彼の笑顔に、店内にいた女性二人組がわぁ、と声を上げた。
雑貨店で一緒に働くマリアも、彼にポーッと見惚れている。
「あ・・・えっと、ありがとうございます。」
彼の笑顔には、人を惹きつける魅力がある。
カフェの常連の半数は、彼のファンだろう。
以前から知っているお店だけれど、彼が働き始めてから女性客が一気に増えた。
「素敵なお店ですね。」
「私も大好きなお店で、ここで働いていて毎日幸せです。」
本心だった。
彼は驚いたように一瞬目を丸くして、眩しそうに目を細めて笑う。
「ナオミさん・・・僕は、あなたが好きです。僕の恋人になってくれませんか?」
彼は唐突にそう言った。
周りの女性陣が、信じられないという目で彼を見る。
私はドラマの中のようなそのシーンを、他人事のような気持ちで傍観していた。
♢♢♢
彼は私の仕事が終わるまで、近くで待っていてくれた。
家まで送るという彼の言葉を断りきれず、彼と並んでいつもの帰り道を歩く。
「さっきは、突然すみませんでした。」
「そんな・・・私の方こそ・・。」
言葉が見つからない。
「幸せそうに働いているあなたを見ていたら、急に告白したくなってしまって。」
彼は困ったような顔で、そう言った。
未だに現実味がない。
彼は不思議な人だった。
ノアに少しだけ似ている。
七瀬さんを初めて見た時、そう感じたのを思い出した。
彼には、背景が無いのだ。
どんな街で生まれて、どんな家庭で育って、どんな風に生きてきたのか。
背景がまるで見えてこない、得体の知れない人物像。
それはとても魅力的に、私の目に映る。
私は突然動き出した人生に、戸惑いを感じていた。
ノアに置き去りにされ、あの小さな部屋で全て完結してしまうような人生が、また再び動き出してしまったことに。
0
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる