9 / 9
知らない女(SIDE レオン)
しおりを挟む彼女は、簡単に靡きそうになかった。
ハニートラップというには、あまりにお粗末な展開。
元々彼女は、潜入先のカフェのただの常連だ。
ノアの恋人だと思うと、急激に彼女の存在が俺の世界の中で意味を持つ。
完全に油断していた自分が憎い。
「七瀬さんのことを、聞かせてください。」
いつものパンケーキを差し出すと、彼女は静かにそう言った。
「僕のこと、ですか?」
「はい。七瀬さんのこと、もっと知りたいんです。」
秦野とうまく行っているんじゃないのか?
そんな疑問が、頭を掠める。
俺のことを知りたいなんて、脈アリと言っているようなものだ。
告白を断られた後の手を、すでに考えていたというのに。
「僕の何が、知りたいですか?」
「・・・あなたの背景。」
彼女の言葉に一瞬、背筋がぞくりと震える。
「背景、というのは?」
「どこで生まれたとか、どんな仕事をしているとか、どんな家族がいるとか、そういうことです。」
おかしなことを言う。どんな仕事をしているか?
これは俺に向けた言葉なんだろうか?
「じゃあ、僕とデートしてくれますか?そうしたら、どんな質問でも答えます。」
「わかりました。」
♢♢♢♢
彼女の部屋に、こんなに簡単に入れるとは思わなかった。
俺は、彼女の手料理を食べながら、彼女の質問に延々と答え続ける。
「家族は、姉さんがいます。遠くに嫁いだので、なかなか会えないんですよ。」
彼女は俺の話を楽しそうに聞いていた。
もちろん全て、架空の話だ。
彼女も俺の質問に答えて、家族の話や、仕事の話を色々としてくれた。
そんなことはもう全て、調査済みだ。
俺が聞き出したいのは、ただ一つ。
恋人のノアの話だけ。
「七瀬さんは・・・私の恋人に、似てるんです。」
俺が、ノアに似てるだと・・・・?
彼女が自分から彼の話をし始めたので、好都合だと思った。
どう聞き出そうか、ずっとタイミングを窺っていたから。
「あ、もう元恋人、なんですけど。」
彼女は自嘲気味に、そう呟いた。
「どんなところが、似ているんですか?」
俺の目を見つめたまま、彼女は沈黙する。
「本当のことを・・・・何も言ってくれないところです。」
彼女の言葉に、一気に鼓動が速くなる。
目の前にいる彼女が、全く知らない女の顔で俺を見つめていた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる