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婚約者
しおりを挟む「展示会?」
「そう。出版業界の人もたくさんくるから、人脈広げるのに良いんじゃないかと思って。」
ネクタイをシュルリと外しながら、御影がこちらを見る。
彼にじっと見つめられると、ドキンと胸が高鳴った。
どうしても、あの夜のことを思い出してしまう。
御影の会社のシステム展示会。
出版業界の人が、たくさん出入りするらしい。
フリーのライターとしては、ありがたい提案だった。
「行っていいの?」
「もちろん。このパスがあれば、自由に出入りできるから。」
首から下げるタイプの、フリーパスを手渡される。
「え!ありがとう!」
「その代わり、」
やっぱり何か見返りを求められるのか、と身構える。
前にもこんなことがあった。
「俺の婚約者として、上司に紹介したいんだけど、良い?」
「えっ!?こ、こ、婚約者?!」
同棲していた彼氏に裏切られ、家を追い出された私には眩しすぎる言葉だ。
「上司からお見合いしろって迫られて困ってるんだ。婚約者がいるって断ったんだけど、嘘だってバレてたみたいで。」
「良いけど、大丈夫なの?相手が私で・・・」
彼のようなイケメンが、こんな干物女を婚約者として紹介するのは無理がないか?と、そんなことを真剣に考える自分が悲しい。
「真美が来てくれたら、助かる。」
ふっと優しく苦笑した御影に、見惚れてしまう。
御影の婚約者。
たとえ振りだけだとしても、気分が上がるのはどうしてだろう。
♢♢
「そんな嘘ついてまで、仕事が欲しいのかよ。」
その話を聞いた浅葱は、ずっとムスっとしていた。
「大人って、意味わかんねぇ。」
「でも御影がお見合いさせられるのも、困るでしょう。本人がその気がないのに、そういう上司ってしつこいんだよね。私も経験あるからわかる。」
「どうせ俺には、そんな経験ねぇよ。」
ふん、とそっぽを向いた浅葱は、明らかにふて腐れている。
「大人の世界は色々あるのよ。しがらみとか、そういうのが。」
「くだらねぇ。俺はそんなことに振り回される大人には、絶対ならねぇ。」
私を睨みつけた彼は、大きな声で言い捨てる。
純粋な彼の視線が、痛かった。
「お前って、御影のことすげぇ好きだよな。」
吐き捨てるようにそう言うと、浅葱は部屋に戻ってしまった。
♢♢♢
深夜のコーヒータイム。
御影がコーヒーを淹れて、私の部屋へやってきた。
彼が私の部屋に居ると、それだけでどうにも落ち着かない。
「婚約者なら、それらしく振る舞わないとね。」
「み、御影・・・?」
彼のスイッチは、突然入る。
私のベッドに腰掛けている彼は、私の腕を掴んで、自分の隣に移動させた。
「練習しようか。」
私の頬に、彼の長い指が触れる。
ゆっくりと、彼の顔が近づいてきて、唇が触れるか触れないかの位置で止まった。
(キ・・・キス・・・するの・・・?!しないの・・・!?)
「それとも・・・既成事実を作って、本当に俺の婚約者になるのはどう?」
(き、既成事実って・・・!?最高に魅力的な言葉・・・!!!)
ぐらりときて、思わずうんと頷いてしまいそうになる。
婚約、結婚。そういう言葉に弱いお年頃なのだ。
彼の吐息が、私の唇にかかる。
「・・ほら、やってみて?」
(れ、練習って・・・どうやれば良いの・・・?!)
涼しい顔で無茶振りしてくる彼は、この状況を心底楽しんでいるに違いない。
「み、御影さん、私以外の女性に、色目使ったら許さないから。」
(どこの世界の婚約者だよ・・・・)
やっている自分が、恥ずかしくなる。
「馬鹿だな、お前は。俺が、お前以外の女に興味なんて持つわけないだろ?」
恥ずかしげもなくやってのけた目の前の色男。
極上の笑顔に、私は簡単に心を鷲掴みされてしまった。
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