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『弟の彼氏』(SIDE 龍司)
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陸斗の顔を見に久々に実家に帰ったら、家の前でとんでもない場面に遭遇した。
「あ~・・お兄さん、こんにちは。陸斗君とお付き合いさせていただいてます。美能 浅葱です。」
「ちょ・・・ちょお浅葱・・!」
陸斗とよくつるんでいる同級生が、一歩前に出て会釈する。
いつもポーカーフェイスでクールな印象の彼は、喜怒哀楽が激しい弟の陸斗とは真逆のタイプに思えたが、彼らはいつも一緒にいた。
親友だと嬉しそうに話していた陸斗が、まさか彼と恋人同士になろうとは想像もしていなかったので動揺が隠せない。
信じられない気持ちで陸斗の顔を見ると、困ったような顔で彼に耳打ちしていた。
「彼と、付き合ってるのか・・・?」
「えっと・・あ~・・・う~ん、まぁ・・」
イタズラ好きの陸斗が俺にまた何か仕掛けているのかと期待したが、どうやら本当に付き合っているらしい。
俺と目が合うと罰が悪そうに、陸斗は煮え切らない態度をとる。
「じゃあ俺帰るんで。お兄さん、会えて良かったです。」
「あ・・俺、浅葱を送ってくる!」
慌てて彼の背中を追いかけ、家を出ていった陸斗の姿を放心状態で見送った。
陸斗だって年頃の男だ。
恋人が出来るかもしれないという可能性を、俺はどうして考えなかったのだろう。
家に戻ってきた陸斗を問い詰めると、相変わらずはっきりしない態度でうーとかあーとか訳のわからない言葉を吐く。
「いつから付き合ってるんだ?」
「え?」
「彼とだよ。ただの友達だと思ってた。」
「いや・・・先週・・・?」
さっきからずっと隠し事をしている時の顔をしている。
陸斗は昔からわかりやすい性格だった。嘘なんてうまくつける奴じゃない。
「彼のことが好きなんて、全然知らなかった。」
弟の恋に口出しするなんて、どうかしている。
悪い男ならまだしも、彼は礼儀正しくて筋の通った気持ちのいい男だと以前からそう思っていたのだ。
「いや~・・好きって言うか・・・」
「本当に好きじゃないなら、付き合うなんて失礼だろ。」
口にしてから、ハッとした。
俺はどんな立場でそんなことを言っているのだろう。
『2番でもいいから、龍ちゃんの恋人になりたい・・・』
自分の本当の気持ちに嘘をついて渚と付き合っている俺が、陸斗の恋愛に口を出す権利はない。
「好き・・だよ?」
彼を好きだという陸斗の言葉に、俺は心底打ちのめされてしまった。
「あ~・・お兄さん、こんにちは。陸斗君とお付き合いさせていただいてます。美能 浅葱です。」
「ちょ・・・ちょお浅葱・・!」
陸斗とよくつるんでいる同級生が、一歩前に出て会釈する。
いつもポーカーフェイスでクールな印象の彼は、喜怒哀楽が激しい弟の陸斗とは真逆のタイプに思えたが、彼らはいつも一緒にいた。
親友だと嬉しそうに話していた陸斗が、まさか彼と恋人同士になろうとは想像もしていなかったので動揺が隠せない。
信じられない気持ちで陸斗の顔を見ると、困ったような顔で彼に耳打ちしていた。
「彼と、付き合ってるのか・・・?」
「えっと・・あ~・・・う~ん、まぁ・・」
イタズラ好きの陸斗が俺にまた何か仕掛けているのかと期待したが、どうやら本当に付き合っているらしい。
俺と目が合うと罰が悪そうに、陸斗は煮え切らない態度をとる。
「じゃあ俺帰るんで。お兄さん、会えて良かったです。」
「あ・・俺、浅葱を送ってくる!」
慌てて彼の背中を追いかけ、家を出ていった陸斗の姿を放心状態で見送った。
陸斗だって年頃の男だ。
恋人が出来るかもしれないという可能性を、俺はどうして考えなかったのだろう。
家に戻ってきた陸斗を問い詰めると、相変わらずはっきりしない態度でうーとかあーとか訳のわからない言葉を吐く。
「いつから付き合ってるんだ?」
「え?」
「彼とだよ。ただの友達だと思ってた。」
「いや・・・先週・・・?」
さっきからずっと隠し事をしている時の顔をしている。
陸斗は昔からわかりやすい性格だった。嘘なんてうまくつける奴じゃない。
「彼のことが好きなんて、全然知らなかった。」
弟の恋に口出しするなんて、どうかしている。
悪い男ならまだしも、彼は礼儀正しくて筋の通った気持ちのいい男だと以前からそう思っていたのだ。
「いや~・・好きって言うか・・・」
「本当に好きじゃないなら、付き合うなんて失礼だろ。」
口にしてから、ハッとした。
俺はどんな立場でそんなことを言っているのだろう。
『2番でもいいから、龍ちゃんの恋人になりたい・・・』
自分の本当の気持ちに嘘をついて渚と付き合っている俺が、陸斗の恋愛に口を出す権利はない。
「好き・・だよ?」
彼を好きだという陸斗の言葉に、俺は心底打ちのめされてしまった。
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