彼女の葬列

aika

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死場所

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姉はいつも死を恐れていた。
少なくとも私の目には、そう見えていた。

もし病気だったとしたら・・・
そんな風に、少しの不調ですぐ大病だと思い込む心配症の姉は、よく病院にかかっていた。
こりゃ長生きするぞ・・・
そのたびに私は、そう確信していたのだ。

自分の体に自信がある人間こそ、なかなか病院へ行かず、結果手遅れになることが多いと、母がよく言っている。
実際にうちの父がそうだった。
多少調子が悪くても、なかなか病院にかからない人だった。

死というのは、誰にでも平等に訪れるものなのに、どうしてこんなにも納得のいかない後味を残していくのだろう。

姉が不可解な謎を残さずに亡くなっていたとしても、私はきっと同じような気持ちを抱えている気がした。


彼女の死場所となったお寺は、私たちが暮らす町から車で40分ほど離れた田舎町にある。
その街は父と母の生まれ故郷で、私と姉も小学校に上がる前の幼い頃に暮らしたことのある土地だった。

姉はそのお寺が好きで、よく祖母に会いに通っていた。

立派な本堂。併設された幼稚園。
増設されたと思われる建物がもう一つ敷地内にあり、渡り廊下で無理矢理くっつけたせいで、迷路のように変わった構造をしている。

お寺に入ると、100歳はゆうに超えたように見えるおばあちゃんが、ガラス一枚で隔てられている室内でTVを見ている。そこが受付となっていた。
お参りに来た人たちは「こんにちは」と優しく声をかけ合い、納骨堂へ向かう。


御多分に洩れず、私もそのしきたりに従う。
聞こえてるのか聞こえてないのかわからないけれど、おばあちゃんは私の顔を見て、「ご苦労様です」と微笑んだ。

このお寺に来るのは久しぶりだった。
姉の死の報せが来るまでは、2年以上お参りに来ていないはずだ。

おばあちゃん、罰当たりな孫でごめん。
心の中で呟いた。

姉は1ヶ月に1度はここに来ていたのだ。
どうしてそんな姉を先に連れて行ったのだろう。
そんな理不尽な八つ当たりを祖母にしてみたけれど、心は重く沈み込むばかりだった。

姉は祖母に何を話していたのだろう。

最期に祖母の仏壇の前で、手を組んで横たわった姉は、何を考えていたのだろう?


考えても答えが出るはずもない問いばかりが、私の頭の中を過ぎ去っていく。


姉の葬式は、このお寺で執り行うことに決めていた。
死場所にさえ選ぶほど、彼女が好きだったこのお寺で。



祖母の仏壇に手を合せる。


「和葉ちゃん・・・」

男性の声に振り返ると、そこには姉の夫が立っていた。

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