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『夫の秘密』
綾人さんの心変わりの理由が、気になっていた。
夜の営みについては今まで完全拒否で、部屋に入れてくれたことさえなかった彼が。
もしかしたら慶斗が、何か言ってくれたのだろうか。
王子様のような、キラキラのルックス。
どの角度から見ても、イケメン。緩くウェーブした明るい茶髪が、彼のセクシーさを際立たせている。
彼は、本心がまるで見えない。
自分の内側を完全に武装していて、他人を寄せ付けないような頑なさがある。
「今まで拒んでいたこと、謝るよ。繭が嫌いとか・・そういうんじゃないから。」
彼は笑顔でそう言ったけれど、どこか取り繕っている感じがしていた。
「あの・・慌てて関係を持たなくても、良いんじゃないかって、私は思っていて・・・」
誤解をされるのが嫌で、言葉を慎重に選ぶ。
彼が一瞬、目を見開いたのがわかった。
夫である綾人のことを、私はまだ何も知らない。
この制度に参加した当初は、ただ子孫を残すためだけのビジネスライクな繋がりをイメージしていた。
けれど、夫たちはみんな家族としての繋がりを欲してくれて、自分で選んだ女ではない私のことを妻として受け入れ、愛してくれている。
みんな家族の愛を求めているし、与えてくれていた。
「綾人さんが、私を愛したいと思ってくれる時が来たら、それからでも良いのかなって。」
「・・・・繭とエッチだけしてれば良いなら、それで良いかなって正直思ってた。ごめん。」
(私はそれでも大歓迎なんですけど・・・・!!)
「慶斗さんや桜雅たちが、なんであんなに繭を大事にするのか、わかった気がするよ。」
彼は目を伏せたまま、沈黙する。
いつか見た、彼の寂しそうな表情を思い出す。
私は彼をこれ以上、思い悩ませたくなかった。
「今日は、手を繋いで寝ませんか・・?」
子どもじみた提案。
それでも、今の私たちには必要に思えた。
「俺には・・・秘密がたくさんある。・・・妻であっても、全部を君に伝えることは出来ない。多分、一生ね。」
「はい。みんなそれぞれ自分の人生の課題があって、共有できる部分とそうじゃない部分があると思います。もし言いたくなったら、その時は全力で聴きますね。」
(秘密ってなに?超気になる・・・!!秘密がある男って、ミステリアスでそそるなぁ・・・・)
相手がイケメンなら、なんでも許せるものだと、実感する。
ベッドに入ると、彼は後ろからぎゅっと私を抱きしめて、朝まで離さなかった。
ふわりと彼の香りと体温に包まれて、落ち着かない。
彼なりに、私に甘えてくれているのかもしれないと思うと、愛おしかった。
♢♢♢
「おはよう。俺の奥さん・・・♡」
目を覚ますと、目の前にイケメン夫の爽やかな笑顔があった。
(え・・・!!寝起きでこのクオリティ・・・?!ヤバイ・・・私の顔、どんだけ酷いんだろ・・・そんなキラキラした目で見ないで・・・・いつから見てたの・・・?)
イケメン夫と朝を迎えて感じること。
それはいつも同じだ。
ものすごいトキメキと、激しい劣等感。
「繭・・・抱き心地良いな。久々に熟睡できた感じがする。」
彼は、私の前髪を指でかき上げながら、ふっと笑った。
(寝起きの笑顔・・これはヤバイ・・萌え死ぬ・・・・)
「もう少しこのままでいて良い・・・?」
彼の胸にすっぽりと抱きしめられ、私は黙ってゆっくり頷いた。
♢♢♢
「あの人、素直じゃないよなぁ。寂しがり屋なくせに、そんなとこ絶対ぇ見せないから。」
珍しく、桜雅がセックスについては触れてこなかった。
リビングでソファーに寝転びながらノートパソコンをいじっていた彼は、視線を画面に向けたまま口を開く。
「寂しがり屋、なのかな?やっぱり。」
タチ悪いよなぁ、と苦笑する桜雅。
彼は、愛に溢れている良い男だなぁ、といつも思う。
他の夫たちのことをいつも気にかけてくれているし、私のこともよく見ている。
「俺、足に使われてっから。あの人、職場から帰るの面倒な時、車で迎えに来いって連絡してくんの。」
「桜雅、俺の奥さんに悪口吹き込むのやめて。」
いつの間にかリビングに降りてきた綾人が、桜雅の頭を小突いた。
「痛っ!綾人さん、俺の妻に本当のこと言って何が悪いんすか。」
ドヤ顔で言った桜雅に、綾人は生意気!と小さく言った。
私の夫たちは、仲が良い。
みんなが一つの家族として、完成しつつあった。
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