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『理想の夫』
しおりを挟む「理想の夫かぁ・・・」
ポツリと呟くと、その場にいた夫全員が一瞬で私に注目した。
「何だよ急に、その呟き。めちゃくちゃ意味深じゃね?」
読んでいた雑誌をパタン、と閉じて、怪訝な表情でこちらを見つめる桜雅。
「繭、もしかして俺たちに不満があるとか・・?」
桜雅の隣で妊娠中の身体に必要なサプリを調べていた雫が、不安そうな声をあげる。
「俺はお前にとって、理想的な夫じゃないかもしれねぇ・・・努力する。」
「年下で頼りないかもしれねーけど、愛情だけは誰にも負けないつもりだよ俺は!!」
TVの前で筋トレしていた耀亮が、深刻な表情でこちらを振り返り、一緒にストレッチをしていた樹が、必死の形相で訴えてきた。
「ち、違うの・・・理想の夫とは?っていう課題を、煌大君に出されてて・・・」
芸術家の夫、煌大に突然投げかけられた課題。
「理想の夫」とは、どんな人物だろうか?という彼の問いかけに、私は即答出来ずにいた。
来年開催する個展の題材を、「妻」である私に関するものにしたい。
彼からそう相談された時は、正直嬉しかった。
個展のテーマにしてもらえるほど、煌大にとって自分は特別な存在なのだと実感したから。
「理想の夫って、そんなの俺に決まってねぇ?なぁ、繭ちゃん?」
グイと身を乗り出して、至近距離に迫ってきた桜雅の色男ぶりにクラリと眩暈がした。
しばらく彼の身体に触れていない。唇が重なりそうなほど近い彼の顔に、思わず見惚れる。
ドキドキに浸る暇もなく、耀亮の逞しい身体が割り込んできた。
鍛え上げられた太い腕。抱きしめられている時の彼の力強さが、身体に蘇ってくる。
「俺はお前の一番になりたいって、いつも思ってる。そのためにはどんな努力もするから足りないところは言ってくれ。」
耀亮の視線は、どんな時も直球で愛を伝えてくれる。
「俺は繭の一番の理解者でありたいって、いつも思ってるよ。」
穏やかな口調で愛を伝える雫は、大人の男の余裕を見せつけ、にっこりと微笑んだ。
笑う時に首を傾げる彼の癖。
サラリと揺れる綺麗な黒髪は、何度見ても激しく胸がときめく。
「俺も!!繭たんがずーっと笑っていてくれるように、そばで一生守るし!!!」
子どもが母親にアピールするように、最年少の夫、樹が手を上げながら宣誓した。
(あぁ・・♡夫たちの愛情・・・尊すぎる・・・♡)
「何騒いでんの?」
仕事から帰宅した綾人が、廊下からひょいと顔を出す。
「綾人さん、おかえりなさい!」
「ただいま。俺の奥さん。今日は疲れたから、じっくり俺を癒してくれる?」
スーツ姿の綾人は、仕事後だというのに朝出かける時と寸分変わらぬ艶やかさで、王子スマイルを浮かべている。
すっぽりと腕の中に収められ、ベッドでの彼の温もりを思い出し、私は赤面した。
「綾人さん、抜け駆け禁止っすよ。今、繭ちゃんの理想の夫は誰かって話で、俺ら真剣なんで。」
「へぇ。繭の本命は俺だって、お前知らなかったんだ?」
桜雅の挑発的な言葉に、綾人が妖艶な笑みを浮かべて応戦する。
私の夫たちは皆優しくて、愛情深い。
それぞれのやり方で、私を大事にしてくれている。
心から愛してくれる夫たちに守られて、生きていける幸せ。
夫たちの言い争いがヒートアップしていくのをうっとりと見つめながら、私はいつも通り幸せな時間を過ごしていた。
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