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『代理夫の妊娠』
しおりを挟む代理出産のために、我が家で共に暮らしている譲が、妊娠した。
「神崎、俺たちの子を身籠もってくれて、ありがとう・・・。」
夫の慶斗が、後輩であり友人である神崎譲の肩を抱いて、声を震わせている。
楓の妊娠出産、桜雅や耀亮の妊娠発覚時、医師である慶斗は、誰よりも落ち着いて対応してくれた。
やはり初めての自分の子どもとなると、感慨深いものがあるのかもしれない。
「繭さん、俺・・・・妊娠しました。」
譲は私の顔を見て、困ったように笑った。
彼の笑顔はいつもどことなく切なげで、苦しそうに見える。
この場合は仕方ないかと、シチュエーションがシチュエーションなだけに、気まずかった。
私を好きだと言った、彼の熱い視線を思い出す。
慶斗と私の第一子が、彼のお腹に宿っている。
譲は、この代理出産を終えた瞬間に、私の正式な夫となることが決まっていた。
♢♢♢
ある日の深夜、部屋から出てきた譲とバッタリ出会す。
「譲さん、眠れないんですか?」
「はい。仕事を早めに切り上げたのに、なかなか寝付けなくて・・・。」
すれ違いざまに、ぎゅっと手を握られて驚く。
「すみません、二人きりになれるタイミングが、全然なかったので・・つい・・・」
目が合うと、途端に身体が熱くなる。
停電の夜、私を強く抱きしめた彼の体温を思い出していた。
彼は切なそうに、苦しそうに、私を見る。
「ここに、繭さんの子どもがいます。」
譲は私の手のひらを、お腹へと優しく導く。
トクン、トクン、という、彼の心臓の音が、伝わってくる気がした。
「こんな気持ちになるなんて・・・想像もつきませんでした。」
「譲さん、」
「今も・・・俺の身体の中で、あなたの子どもが育っている。・・・俺は、あなたの身体を・・まだ知らないのに・・・」
妊娠中は、ホルモンバランスや身体の変化によって、精神的に不安定になりやすい。
そうわかっているのに、彼の熱い視線を跳ね除けることは出来そうになかった。
(譲さんは・・・まだ私の夫じゃないんだから・・・・距離をとらないと・・・)
お腹に私の子を宿しているとはいえ、彼はまだ私の夫ではない。
「狂おしいほどに・・・あなたが欲しい。欲しくて欲しくて・・・たまらない・・・っ」
彼は途切れ途切れに言葉を紡ぎ出し、ぎゅっと私の手を握って離さなかった。
「あの・・・プラネタリウム、見に行きませんか?」
我ながら、とぼけた提案をしたな、と口に出した瞬間後悔する。
「譲さん、小説にプラネタリウムの話を書きたいって言ってましたよね。取材がてら、一緒に観に行きませんか?」
仕事で家に篭りがちの譲を、気分転換にどこかへ連れ出したかった。
小説に書くため、プラネタリウムを見に行きたいと言っていたことを、突然思い出したのだ。
「え・・・・あ・・・はい。お願いします。行きたいです・・・!」
拍子抜けしたような表情の彼が、次の瞬間、私を見て嬉しそうに笑った。
こちらへ身を乗り出して私の手を握っている彼が、いつもより幼く見える。
付き合いたてのカップルのように、私と彼は頬を赤く染め手を繋いだまま、微笑み合っていた。
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