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ヤクザな男
しおりを挟む「どうでしたか?横川君の身体は。」
朝っぱらから満面の笑みで、いやらしい質問を投げかけてくる男。
鎌足 柳司。
NMCのトップである鎌足は、いつもニコニコしている。
朝食にカフェでココナツパンケーキを食べようとしている私の前で、彼はアサイーボウルを食べていた。
身長190cm超えの大男が選ぶ朝食とは思えない。
(意識高ッ・・・!女子か?意識高い系の女子なのか・・・?)
「す・・・素晴らしかったです・・・。」
真面目に答える、私も私だ。
昨夜の「お酒の勢いで同僚と一線越えちゃった」シチュエーションは、控えめに言って最高だった。
横川 当真は、仕事の出来る控えめで穏やかな、とても魅力的な男だった。
ベッドでの激しさとのギャップに、本気で落とされるのではと危惧したほどだ。
「大和君が、どうしてもMちゃんのお相手をしたいそうなんです。」
鎌足は唐突に、そう切り出した。
「大和・・・・?」
その名前を聞いて、嫌悪感に頬の筋肉がピクリと引き攣る。
橘 大和。
紳士が聞いて呆れる、泣く子も黙るヤクザな男。
この男には、以前ミッションを邪魔されたという因縁がある。
「シチュエーションは、ヤクザとその女・・・」
「いや、それまんまだし!ヤクザって・・大和そのものだし!」
(あんな男、冗談じゃない・・・・!!)
うちの組織の喧嘩番長、高野 亮よりも数段上手のガラの悪さ。
性格も口も悪いという、関わりたくない人格の持ち主。
そんな男の相手をさせられるなんて、絶対にごめんだった。
「とにかく私は絶対に嫌だから、大和の相手をさせられるなんて。」
「Mちゃんが、他のメンバーに抱かれて汚され尽くしたら、最後に僕がその穴をメチャクチャに犯して上書きしてあげないと・・・・」
鎌足は、アサイーボウルを食べながら、ブツブツと呪文のように、物騒な独り言を唱えている。
ゾクゾクと身震いしながら、恍惚の表情で宙を見つめている彼に、これ以上何を言っても無駄だろう。
(聞いちゃいねぇ・・・!!この男・・・・!!一体どういう性癖・・・・?)
橘 大和を頭に思い浮かべているだけで、口の悪さが移ってしまうほどに、彼は邪悪な存在だった。
♢♢♢
衣装に着替えて、新たなシチュエーションラブの準備に入る。
メイク中に現れた大和は、私を見た瞬間に鼻で笑った。
「あ?どこのブスかと思ったら、お前か。相変わらずボケた面してんなぁ。」
このチビ・・・!!と、思わず口から出そうになるのをグッと抑える。
言い返そうものなら、100万倍になってめためたに仕返しされるのが目に見えていた。
私の相手をしたいと申し出たのは、本当にこの男なのだろうか?
あまりの邪険ぶりに、信じられない気持ちになる。
橘 大和は背が低く、身体は小さいが、態度が馬鹿デカイ。
口が悪く、性格は極悪のチンピラ男。
顔だけは、良い。
濡れたように光る黒髪が、セクシーにウェーブしている。
強面の、イケメン。
確かに見た目は色男だけれど、あまりの口の悪さにそちらばかりが気になって、どうにも受け入れられなかった。
(せっかくのイケメンが台無し・・・一生、黙ってればイイのに・・・・)
ヤクザとその女・・・・どんなシチュエーションラブになるのだろうか。
私はうんざりしながら、目の前のヤクザな男を睨みつけた。
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