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おじさん ③ 完
しおりを挟む結局僕はおじさんとおばさんの家で暮らすことになった。
「なぁ、拓実。そこの皿とってくれよ。」
「はい。これですか?」
彼は寂しがり屋で、全然話しかけなくていい場面でも僕に頼ってくる。
「拓実、これどっちがいいと思う?」
「右のシャツの方が合うんじゃないですか?」
人に頼られるというのは、まぁ悪い気はしない。
僕が飲み会で遅くなると、彼は駅まで迎えにくる。
「いいですよ、わざわざ迎えに来なくても。」
「いいんだよ。この道結構暗いし、酔ってるんだから心配だろ。」
「あなたの方が心配ですよ。」
「俺はいいんだよ。大丈夫なの。」
こんなに寂しがり屋で、よく今まで一人で暮らしていたなぁと思う。
おばさんが死んでから、僕が引っ越してくるまでの間、この人はどんな孤独を抱えて毎日暮らしていたんだろう。
人を好きになるのは、相手の人生や孤独、気持ちについてリアルに想像しようと試みることだ。
彼と暮らすようになってから、僕は何度もそう思った。
「アイス買って帰りましょうか。」
「食べたいかと思って、お前の好きなアイス買っておいた。」
日常の中で彼との思い出が増えていけばいくほど、僕はますますこの人から離れられなくなるだろう。
それも悪くない。
彼と並んで家までの道を歩きながら、僕はそう思った。
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