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恋人は霊能力者 ②
しおりを挟む俺は彼氏と、友人の篠原が二人で会っているのを目撃してしまった。
二人の姿を見た時、ああやっぱりそうなんだ、と妙に納得している自分がいた。
霊感というのは直感が研ぎ澄まされた結果なんだと、彼氏から聞いたことがある。
俺には全く霊感はないけれど、彼氏と篠原が初めて顔を合わせた瞬間の微妙な空気感はまさに直感的に伝わってきた。
この二人の間には、惹かれ合うものがあるのだと。
人生なんでも自分自身で経験してみなければわからない。
不倫だの浮気だのって、そんなに騒ぐことかよ?と他人事の時は思っていたけれど、いざ自分がその状況になってみて初めてわかることがある。
「不倫は魂の殺人」なんて女友達が大袈裟に言っていた時は笑ったけれど、まさにその通りだと思った。
彼氏が自分の親友と浮気。
言葉にしてしまえばその辺にゴロゴロしているような話で、安っぽくて使い古されたネタのようでなんだか笑えた。
あんなに夢中だったくせに簡単に「元彼」になってしまう。よくある話だった。
♢♢♢
「君の彼氏は取り憑かれていたみたいでね。」
ある日、見知らぬイケメンが俺のアパートの前に現れて突然そんなことを言い出した。
「はぁ?あんた、誰ですか?」
「池野の上司だよ。君は、池野の彼氏だよね?」
「元、彼氏です。」
どうみてもイケてるサラリーマンにしか見えない黒髪長身のその男は、俺の元彼の上司らしい。
やたらと甘いタレ目、ぽってりとした唇。無駄なフェロモンばら撒き系のイケメンだ。
霊能力者ってみんなそうなんだろうか?口がうまい。俺の彼氏もそうだった。
見えないものを見えるって言い張るために、心理学でも勉強して人の心につけ入るんだろうな、なんて俺は偏見の塊みたいな目で彼を見る。
「君の部屋、見てもいいかな?お祓いしたくて来たんだよ。」
そうやって理由つけて家に上がり込んで、っていうのがこいつらのやり方なんだよな。
俺が元彼と付き合い始めた時も、幽霊がいるって言われて部屋にあげたのが始まりだった。
「・・・どうぞ。」
まぁ、イケメンだから部屋に入れるんだけどね。
こうやって彼らは仕事を手にしているんだろう。
本当に霊が部屋にいたら嫌だし・・・仕方ない。
心の中でそんな言い訳をしたけれど、俺はただの面食いだった。
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