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モテ期到来
しおりを挟む「京治って呼んでください。俺も、茉由さんって呼んで良いですか?」
いつも通りの無表情でそう言った彼の瞳は、いつになく熱っぽい色を帯びていた。
「うん。じゃあ京治君、って呼ぶね。」
「茉由さん、たまには食事でも行きませんか。二人きりで。」
彼の顔を見つめてみても、本気なのか冗談なのかまるでわからない。
(京治君、ぐいぐいくるなぁ・・・♡あぁ、、味見したくてたまらない・・・♡)
嬉しい気持ちと邪な気持ちを抑えこんで、平静を装う。
「いいよ。21時に先約があるから、それまででもいい?」
「大丈夫です。店予約しておきますね。」
組織の人間は、基地内で生活している。
基地は山の中にあり、一般人が近づけないように警備隊に包囲されていた。
車で30分ほど行けば、レストランやスーパーマーケット、衣料品店などがある。
今夜は橘さんが私の部屋に来る約束の日だった。
彼は毎週土曜の夜に、私の部屋へやってくる。
私は彼の誠実さや優しさに惹かれるようになっていた。
真面目な性格、的確な判断力、論理的で理知的な考え方。
後輩の面倒見が良く、上層部からも一目置かれる人格者。
「考え事ですか?」
俺といるのに。と珍しく拗ねた視線でこちらを見る、可愛い後輩。
京治君は明らかに私に懐いている。先輩として好いてくれているのだろう。
今日1日で彼の印象がさらに良くなった。
運転は上手いし、店選びもなかなか、私の感情を敏感に察知して気遣いしてくれる。
「可愛い後輩」と言いたいところだけれど、彼がイケメンすぎるのが、問題だった。
私のようにモテない女にとってイケメンの言葉は強烈で、すぐに淡い期待を抱いてしまいそうになる。
(こんなイケメンとベッドインしてみたいなぁ・・・♡まぁ、私には無理だろうなぁ・・・)
復讐のためにも、たくさんのイケメンと楽しみたい。
司令官一筋で生きてきた自分を呪いたいほどに、私の周りは見渡す限りイケメンだらけだった。
「俺といる間中、何か考え事してたでしょ。」
「そんなことないよ。そう見えたなら、ごめんね。」
後輩相手に下品な勘違いをしないようにと自分を戒めていたせいで、意識が散漫になっていたかもしれない。
「傷つくなぁ。俺、茉由さんのこと・・本気ですから。」
「え・・?」
「部屋まで送ります。」
(本気って・・・どういう意味・・・?)
手をとって歩き出した彼の背に問いかける勇気が、今の私にはなかった。
(手・・・繋いでる・・・!え・・・?)
ここまでされたら勘違いしても仕方ない気がする。
握りしめる彼の手のひらに、年甲斐もなくドキドキした。
触れ合っていると、もっと彼に触れたくてたまらなくなる。
彼に愛されたら、どうなってしまうのだろう。
妄想に火がついて止められない。
彼の乱れた姿が見たいという、強烈な欲求。
「茉由さん、あれ・・九条?一緒だったのか。」
私の部屋の前で、橘さんが待っていた。
京治君の顔色が変わる。
「橘先輩・・・お疲れ様です。」
「すみません遅くなって・・・京治君とご飯に行ってて。」
「大丈夫。俺が早く来すぎただけだよ。」
彼はいつも通り穏やかな笑顔を向け、ふわりと私の肩を優しく包んだ。
(え・・・?橘さん・・・?)
普段ならこんなふうに気安く触れてきたりしない。
いつもと違う彼の態度に戸惑いながら彼を見ると、京治君と視線を交わしている。
二人とも言葉を発するわけでもなく、数十秒見つめあっていた。
「茉由さん。さっき言ったこと、返事聞かせてください。俺・・待ってます。」
(返事・・・?さっき言ったこと・・・?)
『俺、茉由さんのこと・・本気ですから。』
京治君の言葉が頭の中でリピートされる。
(もしかして・・・モテ期到来・・・?♡イケメンに取り合いされるオイシイ展開・・・!?)
私は橘さんに肩を抱かれ導かれるまま、京治君を残してその場を後にした。
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