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第5話 私、どうしてしまったのかしら
①
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エレイナがアデルと出会った日から、五日が過ぎた。
あの日以来、エレイナは父親のクロナージュ伯爵とほとんど顔を合わせていない。
合わせることができないのだ。王族の、しかも女性と口づけを交わしたことが、恥ずかしくて、後ろめたくて。
だから、ここ数日伯爵が留守がちにしているのは、エレイナにとって好都合だった。
執事の話によると、彼が宰相を務めていた先々代の王が崩御して以来、ずっと疎遠になっていた王宮との付き合いが、突然復活したらしい。
彼は三日前、宰相補佐官から呼び出されて、明け方から王宮へ出向いていた。そこで告げられたのは、前任者死亡により空席になっていた元老院の議席に、伯爵を登用したいという話だった。それ以降彼は、新しい服を注文しにいったり、長旅に耐える若い馬を見にいったりと、屋敷にいる間も惜しいといった風に奔走している。
今日も彼は、朝からどこかへ出掛けたのだろう。厩から連れ出された馬が、明け方には玄関前でいなないていた。
エレイナは朝の身支度をゆっくり整えて、そろそろと階段を降りていく。この時間なら父はもういないはずだ。さっさと朝食を済ませて、離宮へ行く準備をしなければ。
中央階段の踊り場を右に曲がり、屋敷の二階廊下を進む。最初にある扉の奥が、食事に使っている部屋だ。
エレイナは真鍮でできた把手を掴み、両開き戸を引いた。しかし、近頃この扉は老朽化に加え、メンテナンス不足で建てつけが悪く、ちょっとやそっとじゃ開いてくれない。そこで、思い切り力を込めて引っ張ったのだが。
扉が開いた瞬間、壁にぶつかったかのように勢いよく立ち止った。伯爵だ。既に出掛けたものと思っていた父が、テーブルの上で手を組んで微笑んでいる。
「おはよう、エレイナ」
「……おはようございます」
動揺を悟られないよう静かに言って、エレイナは父の正面の席に着いた。彼の食器はすっかり片づけられたあとで、食後のお茶すら置かれていない。
テーブルの上の呼び鈴を鳴らすと、メイドがやってきて給仕を始める。
「お父様はもうお出かけになられたと思っていたわ」
「ああ。そろそろ出ようと思うが、もうちょっとここにいてもいいかな? お前が嫌じゃなければ」
「い、嫌なんかじゃないわ。もちろん」
何か変だ。父は気付いているのだろうか。たとえばここ数日、娘がやけに念入りに化粧をしていることとか、足しげく離宮に通っていることとか……。
あの日以来、エレイナは父親のクロナージュ伯爵とほとんど顔を合わせていない。
合わせることができないのだ。王族の、しかも女性と口づけを交わしたことが、恥ずかしくて、後ろめたくて。
だから、ここ数日伯爵が留守がちにしているのは、エレイナにとって好都合だった。
執事の話によると、彼が宰相を務めていた先々代の王が崩御して以来、ずっと疎遠になっていた王宮との付き合いが、突然復活したらしい。
彼は三日前、宰相補佐官から呼び出されて、明け方から王宮へ出向いていた。そこで告げられたのは、前任者死亡により空席になっていた元老院の議席に、伯爵を登用したいという話だった。それ以降彼は、新しい服を注文しにいったり、長旅に耐える若い馬を見にいったりと、屋敷にいる間も惜しいといった風に奔走している。
今日も彼は、朝からどこかへ出掛けたのだろう。厩から連れ出された馬が、明け方には玄関前でいなないていた。
エレイナは朝の身支度をゆっくり整えて、そろそろと階段を降りていく。この時間なら父はもういないはずだ。さっさと朝食を済ませて、離宮へ行く準備をしなければ。
中央階段の踊り場を右に曲がり、屋敷の二階廊下を進む。最初にある扉の奥が、食事に使っている部屋だ。
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扉が開いた瞬間、壁にぶつかったかのように勢いよく立ち止った。伯爵だ。既に出掛けたものと思っていた父が、テーブルの上で手を組んで微笑んでいる。
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