幼なじみの第二王子(女装)に甘く迫られています♥

ととりとわ

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第8話 招かれざる婚約者

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 挨拶がひと通り済むと、伯爵夫妻は演奏の準備を始めた。同時に小間使いがわらわらとやってきて、来客のための椅子を並べていく。ほどなく支度が済んで、演奏が始まった。
 まずは、伯爵が得意にしているらしい弦楽四重奏からだ。彼が奏でる繊細なバイオリンの音色と、深みのあるチェロのコントラストが素晴らしい。今日は伯爵夫妻の他に演奏家が何人か来ていて、伯爵家の広間は小さいながらも立派なコンサートといった雰囲気を醸している。

 優雅な演奏を二曲ほど聞いたところで、エレイナは急にあることを思い出してそわそわしはじめた。そもそも、今日の目的は婚約者であるスタンフィルに会うことではなかっただろうか。会場に入ってすぐに、アデルに猫の隠れ家に連れ込まれてしまったのですっかり忘れていた。
 演奏の合間にきょろきょろしていると、アデルが顔を覗き込んでくる。

「どうなさったの?」

 拍手をしながら、彼女が囁き声で尋ねた。

「スタンフィル様がお見えになっているはずなんです。今日、彼とお会いする予定でいて」
「そういえばそうだったわね」

 アデルはそっけなく応えて、首を伸ばしてあたりを見回す。

「確かにいないわ」

 もう一度来客の顔を見渡してみるが、ほどなくして次の曲が始まってしまったので諦めた。来ていないのなら、それはそれで好都合だ。もともと気が進まないのだから、先に延ばせるならそれに越したことはない。

 前半の演目が終わって、休憩時間になった。ここから先は演奏を聞きながら、ドリンクやダンスを思い思いに楽しむ時間になる。小間使いが広間の中央に並べてあった椅子を片づけると、来客たちがそこここで立ち話を始めた。やがてダンス向きのアップテンポな曲が流れだすと、一組、また一組とペアが増え、あっという間に華やかなダンス会場となった。

「エレイナは踊らないの?」

 アデルが尋ねて、給仕から受け取ったパンチをひと口含む。

「私はあまりこういうのは得意ではなくて……アデル様は?」
「私もいいわ。だって、踊りたい殿方がいないんだもの」

 つんと澄ました横顔を見て、エレイナは思わず噴き出した。

「私もです。アデル様が男性だったらよかったのに、とは思いますけど」

 思わず言ってしまってから、あっと口を押える。そう心の中で考えたことはこれまでに何度もあったが、まさか口を突いて出てしまうとは自分でも思わなかった。

「す、すみません」

 慌てて謝罪を述べると、アデルが楽しそうに声を立てて笑う。

「私も同じことを何度も考えたわ。……ねえ、女性同士でも踊っても構わないと思わない? そうよ、踊りましょう、エレイナ!」

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