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第2話 離宮の庭園にて
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歳の頃はエレイナと同じくらいだろうか。見事な黒髪を高い位置で結って、カールした後ろ髪を肩にふわりと落としている。
襟の詰まった空色のドレスは、レースをふんだんにあしらった極上品。身につけているペンダントも髪飾りも、とても高価なものだとひと目でわかる代物だ。
しかし、何よりも彼女の美しさを際立たせているのは、海のように深い青色をしたその瞳だろう。その青さを、陶器にも似た滑らかな肌が際立たせている。
――なんて素敵な人。
たった今まで泣いていたことも忘れ、うっとりと見惚れるエレイナだったが。
自分がとんでもない格好をしていることに気づいて、慌てて立ち上がる。
「い、いえ、なんでもないのです。ちょっと目にゴミが」
「そう。よかったらこれをお使いなさいな」
女性が優雅な手つきで差し出したハンカチを借りて、エレイナは目元を押さえた。
ハンカチからはとてもいい匂いがする。ちょっとやそっとでは手に入りにくい、異国の地で作られた香水かもしれない。
エレイナはハンカチを返すと、ドレスを摘んで丁寧にお辞儀をした。
「ご親切にありがとうございます。わたくしはクロナージュ伯爵の娘でエレイナと申します。こちらで花木の管理をさせていただいております」
「ええ、もちろん知ってるわ。いつもきれいに花を咲かせてくださってありがとう。私はそうね……アデレイド……アデルとでも呼んでいただこうかしら」
……えっ?
「は、はい。アデレイド様。よろしくお願いいたします」
彼女の言い方に疑念を抱き、一瞬の間が空いた。
お辞儀をしながら、エレイナは考える。『アデルとでも呼んでいただこうかしら』とはどういうことだろう。まるで偽名でも使っているような……。
それに、王族の女性なら大抵はその姿を見たことがあるが、この女性はまるで記憶にない。これだけ美しく、背の高い女性なら一度見ただけでも忘れるとは思えないが。
しかし彼女は、エレイナの訝る気持ちをまったく意に介する風でもなく、庭園の花々に見入っている。
「ところでエレイナ、今日はいい天気ね。お庭の花たちも嬉しそう」
そう言ってアデレイドは、腰を折ってすぐ目の前にある天使の鐘の蕾に手を伸ばす。
驚いたことに、彼女の指が触れた途端に蕾が弾けた。
おそらく刺激になったのだろう。ふたりで見詰めていると、蕾はみるみる花弁を開いて、あっという間に大聖堂の鐘そっくりの形になった。
襟の詰まった空色のドレスは、レースをふんだんにあしらった極上品。身につけているペンダントも髪飾りも、とても高価なものだとひと目でわかる代物だ。
しかし、何よりも彼女の美しさを際立たせているのは、海のように深い青色をしたその瞳だろう。その青さを、陶器にも似た滑らかな肌が際立たせている。
――なんて素敵な人。
たった今まで泣いていたことも忘れ、うっとりと見惚れるエレイナだったが。
自分がとんでもない格好をしていることに気づいて、慌てて立ち上がる。
「い、いえ、なんでもないのです。ちょっと目にゴミが」
「そう。よかったらこれをお使いなさいな」
女性が優雅な手つきで差し出したハンカチを借りて、エレイナは目元を押さえた。
ハンカチからはとてもいい匂いがする。ちょっとやそっとでは手に入りにくい、異国の地で作られた香水かもしれない。
エレイナはハンカチを返すと、ドレスを摘んで丁寧にお辞儀をした。
「ご親切にありがとうございます。わたくしはクロナージュ伯爵の娘でエレイナと申します。こちらで花木の管理をさせていただいております」
「ええ、もちろん知ってるわ。いつもきれいに花を咲かせてくださってありがとう。私はそうね……アデレイド……アデルとでも呼んでいただこうかしら」
……えっ?
「は、はい。アデレイド様。よろしくお願いいたします」
彼女の言い方に疑念を抱き、一瞬の間が空いた。
お辞儀をしながら、エレイナは考える。『アデルとでも呼んでいただこうかしら』とはどういうことだろう。まるで偽名でも使っているような……。
それに、王族の女性なら大抵はその姿を見たことがあるが、この女性はまるで記憶にない。これだけ美しく、背の高い女性なら一度見ただけでも忘れるとは思えないが。
しかし彼女は、エレイナの訝る気持ちをまったく意に介する風でもなく、庭園の花々に見入っている。
「ところでエレイナ、今日はいい天気ね。お庭の花たちも嬉しそう」
そう言ってアデレイドは、腰を折ってすぐ目の前にある天使の鐘の蕾に手を伸ばす。
驚いたことに、彼女の指が触れた途端に蕾が弾けた。
おそらく刺激になったのだろう。ふたりで見詰めていると、蕾はみるみる花弁を開いて、あっという間に大聖堂の鐘そっくりの形になった。
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