現世の常識なんて異世界では通じなかった話

(´と・ω・び`)

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第二章 魔法

三節 朝

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三節

「・・・あの~、リムさん・・・?」
 あれから、リムはむっすぅ~としたまま部屋の角で体育座りをしていじけている。力を抑えていたとしても負けたということに対していじけているんだろうか。どうしたら許してもらえるんだろ・・・。その日は料理で釣ったり色々話しかけてみたりしたが何をしてもいじけていて、結局気づいたら寝てしまっていた。
 朝目が覚めるとリムに枕にされていた。結局昨日はそのまま部屋で雑魚寝してしまったようで、背中とか所々痛かった。
「・・・り、リムさん~?朝だよ~・・・。」
さすがに枕にされっぱなしになるのもアレなのでリムの顔をぺちぺちと叩いて起こしてみる。
「・・・・ぅ~・・・。」
なかなか起きそうにない。折角なので寝顔を拝む。なんというかこう、幼げがあって可愛い顔してると思う。肌も色白で綺麗だし。こんな風に人の顔をそれも女の子の顔をまじまじと見る機会なんてそうそうないことだから、つい見てしまう。・・・今なら何かしても気づかれないかな・・・?そんなことを考えていると、口角が上がっているのに自分でも気づいた。そうこうしているとリムが起きた。
「・・・気持ち悪い顔してるぞ。」
昨日のようなむっす~とした顔ではなかったが、なんかこう蔑んだような目で見られた。
「いやだなぁ、何もしてないですよハハハハハ。」
「・・・服は乱れてないな・・・。」
「ちょ、だから何にもしてないって。」
「まぁ、何かされてもすぐ気づくけどな、あはははは。それじゃあ私はちょっと体洗ってくるぞ。・・・覗くなよ?」
額から冷や汗が流れてくる。何もしてなくてよかった。・・・というか叩いても起きなかったんだから起きなそうな気もするけど・・・。とにかく、自分も着替えないと。

 今更な気もするが、こっちの世界には自分の身に着けていたものも一緒に転移してきたようで、学生服はもちろん、鞄や鞄に入っていたスマホや財布、教科書や筆記用具なんかもあった。教科書やノート、お金(札のやつだけ)なんかは水に濡れて駄目になっていたが、スマホは防水のやつだったから無事だった。ただ、充電は残り20%くらいしか残ってなかったけど。雷を作って充電できないかとも考えたが、ショートして使えなくなるのも嫌なので放置しといた。リムに日本語を見せたときは「ミミズが踊ってるような文字だな」なんて言っていた。俺からしたらこっちの文字がそうなんだけど・・・。筆記用具や財布は乾かしたら普通に使えた。こっちの世界のことを勉強するときは紙類だけ貸してもらって、そこに日本語でメモしたりしていた。ただ、シャーペンの芯が切れたら使えないから、できるだけ大事に使いたい。リムにとっては現世のものが珍しかったらしく、色々聞いてきた。特にスマホに一番興味を示していた。その時にリムが構いすぎて結局電池切れになったんだけど・・・。と、そうこうしているうちにリムが戻ってきた。というか、自分の部屋あるだろうになんで俺の部屋来るんだ?
「ふぅ、さっぱりした!あ、そうだ明日から数日間杜を空けるからな。」
「え、ああ。うん、わかった。」
「・・・物分かり良すぎだな・・・。もっと名残惜しんでくれてもいいんだぞ・・・?」
なんだこの可愛い生き物は。
「いやいや、めちゃくちゃ寂しいよ。リムが帰ってこないなんて考えられないよ、うん。」
「・・・本当か?」
「ホントホント。」
「・・・そうかそうか♪」
いや、寧ろ離れたくないのはリムの方なんじゃ・・・。とか思ったけど、さすがにそれは自信過剰かな。

 その日の夜。
「・・・あの~、リムさん?」
そろそろ寝ようかな、と思っていた時、リムが部屋に入ってきた。いつもは寝るときは別々なんだけど、今日はなぜかこっちの部屋に来た。何か用でもあったかなと思っていたら、俺のベッドに一直線に向かって行って、そのまま布団に入ってしまった。その様子を驚きつつ見ていたら、スッとリムが布団の端を持ち上げた。
「入れ。」
その時の顔はなんというかこう、「にひっ」って感じの顔をしていた。童貞の考えで入っていいものか躊躇していると、布団から出てきて腕を引っ張って布団の中に引きずり込まれた。思考回路がショートして固まっていると、さっきとは打って変わって神妙な面持ちでリムが話しかけてきた。
「なあ、私がいなくなったら寂しいか?」
「え、だから寂しいって言ったじゃん?」
「いや、そうか・・・ほ、ほら早く寝ろ!」
「・・・?」
結局その日はそれ以上話さず、気づいたら寝ていた。

 次の日。朝目が覚めると、今日は枕じゃなくて抱き枕にされていた。
「はぁ・・・。ほら、リム、起きて。」
今日も昨日のように顔をぺちぺちする。昨日のことを踏まえ今日はちょっと強めに叩いてみる。
「・・・ぅ・・・痛ぃ・・・ふぁ~ぁ、んぅ、おはょぉ・・・ゅーり・・・。すぅ・・・。」
「いや、起きろって。」
「ぅー・・・。お前こそ起きてるじゃないか・・・。ここ・・・。」
そういって股間に手を伸ばす。
「いや、それはですね、生理現象でして、別に誰かさんの所為とかじゃなくてですね。」
「・・・ふふふ・・・。まぁそう焦るな・・・。」
「と、というか早く起きなくていいの?今日から何かあるんじゃないの?」
「・・・もうちょっと・・・。」
「もー、ほら起きろって。」
そういってリムを引きはがす。んぅ~・・・。と最後まで粘っていたが、なんとか剥がした。そうして、台所のようなところまで行って、朝食を作る。どうやら近くに村があるらしく、朝には杜の入り口にかごに入った野菜が置かれている。前にリムは食べなくていいはずなのに何故?と聞いたことがあった。村の人の善意だから昔からよく貰っていたためらしい。食べなくても大丈夫だけど、おいしいものを食べるのは好き、だそうだ。とりあえず適当につくって、朝食を食べる。そこまで複雑なものは作れないけれど、学校の必修科目に家庭科があったおかげで、簡単なものなら作れた。こっちの食材でも代用できた上に、これが意外とリムにも評判が良かった。そうして作り終わると、リムをもう一度起こして朝食を食べた。
「ん~、今日の飯も美味いな!」
「いや、サラダとかだからこれは野菜本来の味だと思うよ。ちゃんと愛情込めて野菜を育ててんだろうな。」

 そのあと、リムが家を出るようだったので見送りに行った。
「それじゃあ、杜を頼んだぞ。」
「うん、わかった。あ、そうだ。なんかあった時のために村までの道、教えてくれない?」
「あー・・・。村はそこの道をまっすぐ行けば着く。」
「そっか、わかった。じゃあ気を付けていってらっしゃい。」
「・・・行ってくる。」
最後にこちらを振り返って寂しそうな笑顔でひらひらと手を振るとそのまま歩いて行ってしまった。

 その後、小銭しか入っていない財布とメモ紙、筆記用具を鞄に詰めて家を出た。数分歩いたところで何かお土産を持って行かないとと考え杜に戻った。朝の残りの野菜を簡単に調理して、洗った箱に詰めた。箱を紐で縛って、鞄に詰めもう一度家を出た。行先は、最寄りの村。毎朝野菜を持ってきてくれるっていう距離だからそこまで遠くないだろうと踏んでいた。
 その考えが甘かった。多分もう軽く4時間は歩いただろう。水は自分で作り出したのを土を使って作ったコップに入れて飲めばいいからいいものの、腹が減った。作った野菜炒めを食べるわけにもいかず、どうしようかと考えていた時にやっと村が見えてきた。もう足がパンパンだ。村に入ると、近くにいたおばさんが声を掛けてきた。
「あら、こんなところに旅人さんかい?珍しいねぇ。」
「いえいえ、そういうんじゃないです。いつも美味しい野菜を貰っているのでお礼とご挨拶にと思って、伺った次第です。」
「・・・野菜?」
「あぁ、リムに助けてもらって、杜に住まわせてもらってるんですよ。」
「・・・あ、ああ、そう・・・。」
そういうとそのおばさんは村の中心のほうに走っていった。数分すると村人がわらわらと出てきた。
「あ、あのいつも貰ってばっかじゃ悪いので、これ、頂いた野菜で作ってみました。よければ・・・。」
と、野菜炒めの入った箱を差し出す。その時村人たちが怪しいことに気づく。よく見ると皆なんらかの武器を持っている。
「・・・えっと、どうかされたんですか・・・?」
「・・・。・・―――・・・・・。・・―――・・・・。」
村人たちが話しているのは分かるが何を言っているかまではわからない。
「す、すいません。僕何か変なことしました・・・?」
村人の怪訝な目がこっちを見たかと思った瞬間、一斉に襲い掛かってきた。さすがに俺も油断していたのと、一斉に来た所為で体が動かず、気づいた時には捕まってしまった。
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