現世の常識なんて異世界では通じなかった話

(´と・ω・び`)

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第五章 大戦

四節 猫の理論

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四節

 それから二週間ほどすると肩のけがはほとんど治っていた。要するに、もうこの村ともお別れということだ。あれから村の人たちにも味方だということが伝わったらしく、普通に接してきてくれた。中には魔法を教えてほしいなんて子供もいた。自分もよくわからないというとむすっとして帰っていったが。ちょっと申し訳ないことをしたかな・・・。とりあえずこの村を離れる予定なのは明日の朝だ。アストラさんが念のために付いてきてくれるとは言っていたが、どのみち空を飛んで帰るので敵には出くわさないだろうということで断った。
 夜になってまたいつも通りアリアが布団に入ってきて、スヤスヤと寝始めた。
え、襲わないのかヘタレって?・・・うん、なんか最近、どちらかというとこう、妹とかみたく見えてきたんだよ。だから襲わ・・・え?だからヘタレじゃないって!

 朝になって、もう一度アストラさんにアリアと挨拶に行く。
「アストラさん、数日間お世話になりました。」
「いや・・・お前も私が呼んだばっかりに怪我を負ってしまったしな・・・すまない。」
「いえいえ、僕も新しい戦い方とかも学ばせてもらいましたし、怪我の功名ってやつですよ。」
「・・・気を遣って言ってくれているのは分かるんだが・・・たぶんそういうことじゃないぞ?」
「いやいや、もしこちらに来てなければまた痛い思いするはずですから。」

そしてちょっとうなっているアストラさんをしり目にアリアを背負い、ありがとうともう一度声を掛けて飛んで行った。帰りはなんとなくの土地勘でも戻ることができた。意外と自分でも覚えているということに驚いた。何事も人並みの自分にとって、やっと褒められるべきものができてきた。
そんなことを考えながら飛んでいると、アリアからちょんちょん、と肩をつつかれた。早いと風の音で何も聞こえないので、ちょっとスピードを下げ、アリアに耳を向ける。

「どうしたの?」
「あれ見てください。あれってなんか杜の方に向かってませんか・・・?」
「え・・・。」

 言われた方に目線を向けると、つい二週間前に襲撃してきた敵の服装や装備のやつらがぞろぞろと・・・。というかここからだと結構見えにくいんだけど・・・。良く見つけたな。

「ちょっとまってね。ついでに倒してくるよ。」

全速力で飛ばして、数10m離れた木の陰に着地すると、アリアを置いて、また数m離れたところから空に飛び上がる。アリアに注意を向けさせないため、自分が囮になる。自分が強いとは思っていないが、アストラさんに鍛えてもらったおかげでだいぶ自信にはなっていた。とりあえず全速力で敵の進軍している正面に出る。

「・・・。」
「・・・なんだ貴様。」
「・・・。」
「おい、邪魔だ。退かぬなら切り捨てるぞ。」
「・・・。」
「聞いてるのか?・・・もういい、やってしまえ。」
「はっ!」

敵の大将のような男がそういうと前にいた従者らしき人が切りかかってきた。左肩から右の脇腹までをスッっと剣閃が通る。それはその体を真っ二つに切り裂き、俺を塵一つ残さずに消した。
 気づいている人もいるだろうが、今のは蜃気楼だ。すぐそばならまだしも、距離があるときは声を出せばばれる。その蜃気楼に敵がかまけている間に最後尾に回る。ざっと300近く敵兵がいるだろう。蜃気楼が切り裂かれた瞬間、最後尾から全速力で飛びながら火炎弾を叩き込む。一番先頭まで来、後ろを振り返った瞬間。トライデントの突きが頬をかすめた。

「名を名乗れ。」
「いやですよ。拡散されちゃうんでしょう?この世の中怖いですね。」
「おちょくるのも体外にしろぉおおおお!」

 そういうととりあえず見える範囲で唯一生き残っていたその敵の大将と戦う。ただの槍ならまだしも、トライデントだ。刺さる箇所が多い。その分ちょっと大きく回避を取らなければならなかったが、アストラさんの稽古のおかげか、割と思ったように体が動いた。次は・・・右上。そこから斜めに振り払って来る。それを一度引き戻し縦向きで突いてくる・・・。と、動きは単純で避けやすかった。ただ、それに油断してしまったのだろうか。足元にあった石ころにかかとが引っかかってしまった。その瞬間、最後の一撃とでも言わんばかりの今までとは比べ物にならないくらいの速度で槍が来た。守れるかどうかわからなかったから、同時に土の槍を発生させる。若干こっちのほうが早かったようで、向こうが回避を取った時、その被っていた兜が脱げた。
 ガィン・・・ガン・・・ガン・・ガンガン・・・。
鈍い金属音とともに現れたその顔は。

「え・・・おっちゃん・・・?」
「・・・貴様は・・・そうか。少し情が湧いていたが・・・邪魔をするなら切り捨てなければならん。せめてもの猶予をやろう。」
「いや・・・敵だったんですね・・・。」
「ああ。自分はハーフだといったろう?方やマー族ではあるが、もう片方は闇の国の人間だ。」
「そう・・・だったんですか。」
「それで。今ここで死ぬか、もう一度あった時に殺されるか。腹は決まったか?」
「・・・本当は、村で最初におっちゃんに話しかけてもらって、認めてくれる人がいるって・・・。思ってたんですけど・・・。悩みの種は残したくないので。今ここで貴方を討ちます!」

 正直な話、多分ラミエルなんかよりももっと強いんだろう。こんなとこで戦って勝てる相手ではないと思う。さっきまでのは様子見だったようだ。気迫が全く違う。多分最後の一撃のような攻撃しか来ないのだろう。ならまず先手を打つ。土と風の複合魔法、サンドストームを起こす。まず視界を閉ざす。その間に自分は上に飛び上がり、砂嵐を起こしている場所を土の壁で覆う。言ってみれば闘技場のようなものだ。と、その瞬間、下から無数の氷塊が飛んできた。土壁で防御したいが、それをするとこちらの視界も遮られかねないので、本当によけきれないのだけを最小限の大きさの土壁でガードした。まだ砂嵐は消えていない。その砂嵐の風を一瞬でかき消す。砂も自分で生成していたので、そのまま砂も落下する。要は足場を最悪にする。そこに水を少し混ぜ、どろっどろにする。そうしたうえで、土壁に蓋を作る。あたりから見れば巨大な土の筒のようなものができているのだから、相当異様な光景だろう。こんな嬲り殺しみたいなやり方はしたくなかったが、これしか勝てる方法が思い浮かばなかった。この筒の中では、今は地面は足がすぐはまるような泥に、砂嵐に、壁からは土の槍が飛び出、さらに厚さを5m程にしてあるため多分出れないはずだ。そして、真っ暗闇の中で死んでくれ。
 俺はこの筒を開けることはないから中の様子は全く分からない。言ってみればシュレーディンガーの猫と同じ理屈だ。
そしてアリアのいる場所に戻り、アリアをもう一度おぶってまた帰路についた。

 恨むなよ、おっちゃん。
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