現世の常識なんて異世界では通じなかった話

(´と・ω・び`)

文字の大きさ
26 / 39
第六章 出立

三節 蒼竜

しおりを挟む
三節

 30分から40分ほど飛び、ウルリアの村に着いた。入り口付近に着地し、アリアの家の方へ向かう。最初あれだけ訝し気な目で見てきた村人たちも、今は笑顔で挨拶をしてくれる。多分アリアとおっさんの力なんだろうなぁ。アリアの家の扉を鳴らすと、いつも通りの優しい笑顔のアリアが出てきた。その笑顔にさっきまでの不安が和らいだ気がした。

「おかえりなさい、ユーリさん!」
「うん、ただいま~。」
「ユーリ・・・だったか。久しぶりだな、はっはっは!」
「あ、おっ・・・デマさん。お久しぶりです。」
「それで・・・そうだな。とりあえずユーリ君と話がしたいから、席をはずしてくれないか、アリア。」
「わかりました。」

 そういうとアリアは部屋を出て行った。話ってなんだろ?

「・・・ほかの国に渡ろうということだそうじゃないか。」
「ええ。」
「精霊様のためということならわかる。だが、娘を連れていく事は反対だ。」
「・・・。」
「親バカだと言われようが、わしは絶対に反対だ。・・・あの子の母親・・・つまり私の嫁なんだが・・・。あの子を産んで数か月後には此処には居なかった。わしが男手一つで育ててきたんだ。そう易々と外出させたくないのが本心だ。・・・こんなことを君にいうのはどうかと思うが・・・ほかの国に渡るのを止めさせてくれないか・・・?」
「・・・お言葉ですが。付いてくると言ったのはアリアです。アリアが心配なのはわかりますが・・・。ですが、付いてくると言われた以上、ちゃんと守り抜いて見せます。それでも僕の手が回らなかったときは・・・。煮るなり焼くなり好きにしてください。」
「そう・・・か。・・・覚悟ができていないのはわしの方なのかもな・・・。すまん、なら・・・。アリアを頼んだ・・・。もし死なせるようなことがあってみろ・・・。その時は貴様を本当に焼いて灰にして畑に撒いてやるわ!」
「守り切れるかどうかは正直不安でしかないですが、それでも精一杯守り抜きます!」
「ああ、貴様になら・・・娘をやってもいいかもな」
「へ?」

 杜に帰ろうと思って、アリアの部屋に顔を出すとどうやら話を盗み聞きしていたらしく、顔が赤くなっていた。

 アリアと杜に戻り、夕飯やらを済ませた後、今後のルートを考えることにした。
目的地は水の国最北端にある街、[アクトゥルム]基本的に飛んでいけば済む話ではあるが、アリアの家にあった水の国の地図を見ると、アクトゥルムの南側は山で覆われていることがわかる。水の村を覆っていた崖は、アクトゥルムの西側の山脈の一部だったようだ。東側の山は、西に比べるとそんなに高くないらしい。その山脈付近に[アクアラグーン王国]という国名が書かれている。そういえば、何気に今まで「王」とかそういうファンタジーにはつきものの単語を聞かなかったな。
 ちなみに、水の国は簡単に言うとL字型で、それを大河が三つに分断しているような形をしている。北ブロックと南ブロック、あと東ブロックとあるようだ。この杜はというと、南西端のところにある。そこから東側にウルリアの村がある。地図で見ると、本当に杜の真北に水の村あるんだなぁ・・・。

 地図を見たうえで決めたルートは、まず、取り敢えず行けるところまで飛んで行ってみる。そして山が予想以上に高かったり、行くのが困難だと判断した場合、アクアラグーンに寄り道し、そこからアクトゥルムへ。

「さて、とりあえずこのルートで行ってみようか。」
「そうですね・・・。あ、でも山の方は・・・。」
「ん?山が何かあった?」
「あ、いえ大丈夫です。」
「?」

 朝になり朝食を食べ、支度を済ませた。財布やら筆記用具やらと、今回は地図を持ってアリアと杜から出た。いつものように飛んでいると、水の村が見えてきた。普段あまり気にしていなかったが、地図を見ながら飛ぶと、意外とこの地図が正確なことがわかる。ちゃんと地図通りに村や森なんかがあるからそれを見ているだけでも案外面白い。
 水の村を通り過ぎ、また10分くらい飛んでいると、段々と険しい山脈が見えてきた。水の村より先は行ったことが無かったから、見るものすべてが新鮮だった。ちらっとアリアの方を見てみると、アリアも同じらしく目をきらきらと輝かせていた。山を東側から迂回しながら飛んでいると、グギャァアアというような鳴き声が聞こえてきた。一度動きを止め、ホバリング状態になってあたりを見渡すと、山の方に青い竜が数匹いるのが分かった。

「あ・・・。やっぱり・・・。ユーリさん、降りましょう!!」
「え、ちょ、何あれ?」
「あれは蒼竜です!気づかれないうちに・・・」

グギャァァァアアアアアア!!!!

「えっ、えっ?」
「早く!!!来ますよ!!!」

ギャアァアァァァアアア!!!

 その時、一匹の竜がこちらの事を見つけたのかものすごい勢いで突っ込んできた。
なんとか移動してかわすと、竜は腹を外に向けながら縦に半周、そこから横に半周して、下に向き直すと急降下してまた突撃してきた。

「うわっ!あぶなっ!」
「だから言ったじゃないですかぁ!!」
「ご、ごめんて。うぉっ!!と、とにかく捕まっといて!」
「た、戦う気ですか!?うわぁ!!も、もう!!ユーリさんのバカァ!!!」

こうして会話している間にも何度も突撃された。何とか回避していると、今度は氷塊を飛ばしながら飛んできた。それを土壁で防御しつつ、次の攻撃に持っていけないかを見計らった。攻撃は
確かに強いが、基本的に一定のパターンで動いているのを使って・・・。
 まず、竜より先に飛んできた氷塊を土壁を使って防御。そしてその土壁の形を土弾の形に変形させて、あとから来た竜の胸元に発射!めり込みはしたが、若干怯んだだけだった。そしてそこから更に形状変化で、その土塊から更に土の槍を拡散して5本伸ばす。一本は最初に当たった胸元に。一本は首に。もう一本は腹に。そして残りの二本は両翼に突き刺さった。
 グゲェェェエエアアァアァアアアアアァという断末魔を残して墜ちて行った。

「ふぅ・・・。竜って怖いな・・・。」
「り、竜を倒せるなんて・・・本当に凄いです・・・ユーリさん。」
「え、そうなのか。・・・下に落ちてまだ生きてるなんてことないよな・・・?」
「無い・・・と思いますが、一応とどめさして置いた方がいいんじゃないですか?」
「そうだよな・・・。行くか。」

急降下して、地面に着地した。落下中ももがいていたらしく、槍が主に翼により深く刺さっていた。鼻の奥を刺激するような鉄のにおいが辺り一帯に広がっていた。よくよく見てみると、刺さった槍の所為で大きな動作は出来ないようだが、まだぴくぴくしていて、息があった。さっきまでのような声はしないが、カヒュ・・・カヒュゥ・・・のような呼吸音が聞こえた。ここまでしてまだ死なないって・・・生命力強すぎかよ・・・。その竜は地面からの特大の土槍によって、最期を迎えた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

貧乏奨学生の子爵令嬢は、特許で稼ぐ夢を見る 〜レイシアは、今日も我が道つき進む!~

みちのあかり
ファンタジー
同じゼミに通う王子から、ありえないプロポーズを受ける貧乏奨学生のレイシア。 何でこんなことに? レイシアは今までの生き方を振り返り始めた。 第一部(領地でスローライフ) 5歳の誕生日。お父様とお母様にお祝いされ、教会で祝福を受ける。教会で孤児と一緒に勉強をはじめるレイシアは、その才能が開花し非常に優秀に育っていく。お母様が里帰り出産。生まれてくる弟のために、料理やメイド仕事を覚えようと必死に頑張るレイシア。 お母様も戻り、家族で幸せな生活を送るレイシア。 しかし、未曽有の災害が起こり、領地は借金を負うことに。 貧乏でも明るく生きるレイシアの、ハートフルコメディ。 第二部(学園無双) 貧乏なため、奨学生として貴族が通う学園に入学したレイシア。 貴族としての進学は奨学生では無理? 平民に落ちても生きていけるコースを選ぶ。 だが、様々な思惑により貴族のコースも受けなければいけないレイシア。お金持ちの貴族の女子には嫌われ相手にされない。 そんなことは気にもせず、お金儲け、特許取得を目指すレイシア。 ところが、いきなり王子からプロポーズを受け・・・ 学園無双の痛快コメディ カクヨムで240万PV頂いています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  ブックマーク・評価、宜しくお願いします。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

処理中です...