小っちゃくたって猛禽類!〜消えてしまえと言われたので家を出ます。父上母上兄上それから婚約者様ごめんなさい〜

れると

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第2章 冒険者に必要なもの

魔力の塊

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 あれからディーが一人でうんうん唸った後、結局アレクは従魔登録しないことになった。それを決めるまでも「同族に会ったことないってもしかして突然変異?そもそもこのサイズで人語とか」等々独り言をずっと言いながら一人で悩んで、帰る間際に「こいつの登録はしない!」と決めていた。

 ……いいのかな?登録しないと行けないルールなんでしょ?まぁでもディーが言うなら良いか。

 人に見られないようにしろと言われたので、俺の鞄の中にアレクを突っ込んだ。アレクは不服だったが仕方ない。だって他に隠しようがないんだもん。

 俺の鞄は、ショルダーバック。3日分の携帯食と竹で出来た水筒。替えの洋服。あといざと言う時の換金出来るものが余裕で入るくらいの大きさに、手の平サイズのアレクを入れたらパンパンだ。しかもよく見ると時々モゾモゾと動いてる。明らかに怪しいけど、俺の鞄をじっと見るやつなんて居ないから問題ないだろう。

 ディーは討伐報告をするためにギルドに寄って行った。俺は、いつの間にか摘んだ薬草をどっかにやってしまっていたから納品するものが無いのと、時々もぞもぞっと動く鞄が気持ち悪いと言われたので先に宿に帰ってきた。

 そういえば、俺の保護者登録する前からディーは同じ部屋でとってくれてたな。もしかして、最初から俺の保護者登録してくれるつもりだったのかな。そう思うと、なんだか心がほわっと暖かくなった。

「ただいまぁ」

 ディーから預かった鍵を使って誰もいない部屋に入る。外はもう夜。誰もいない暗い部屋がなんだか寂しい。

「早く開けろー」

 鞄の中からくぐもったアレクの声が聞こえた。
 慌てて鞄を開けて出してやる。

「はぁ、狭い!」

「あはは、ごめんごめん。見られたらまずいみたいだから」

 文句を言いつつ俺の周りをパタパタ飛ぶアレクがなんだか可愛い。ふわふわはしていないが、まるで生きたぬいぐるみみたいな感じがする。

「飯!」

「えっと?俺の魔力でいいんだっけ?また火を出す感じでいいのか?」

「魔力の塊作ってくれよ!」

「え、何それ?魔力の塊?」

「あるだろ、お前たちの世界で言うとー、飴玉みたいなやつ!」

「え、知らない」

 飴玉みたいな魔力の塊?何それ、聞いたこともない。

 ぽかん、と間抜けな顔をしているとアレクが苛立ったように俺に指示を出してきた。

「指先に炎出せ」

 言われた通りに、ぼうっと指先に炎を灯す。

「それをそのまま、ぎゅうっと固めてみろ」

「え?」

 か、固める!?どういう事!?圧縮って事!?

 とりあえずやってみた。指先の炎の揺らぎが小さくなり、炎自体も小さくなる。だが決して消えそうなわけではなく、しっかりと燃えている。

「もっと、もっとだ。固形になるまで固めろ。小さくなったらもっと燃やせ。それでまた固めて、繰り返せ」

 待って、圧縮しながらまた炎の威力をあげるとか、難しすぎる!

「はぁ、はぁ」

 気がついたら息が上がってる。
 アレクが言うような固形になるまでなんて程遠い。それがすごく悔しい。でも、上手くできない。固めながら、炎を足して、固めながら、あああああ!なんでだ!出来ない!!

「まぁ、初めてにしてはできてる方だぞ」

 そういいながら俺の炎をぱくりと食べるアレク。

「塊には程遠いけどな」

「いや、これ、はぁ。かなりの魔力と、魔力操作技術が必要、なんじゃ、ない?」

 今のでかなり疲れた。気がつけば汗だくだし。魔力もかなり使った気がする。

「まぁな。だから毎日やれば魔力も増えるし、扱いやすくなるだろ」

「まじ!?」

「あぁ、まじまじ大まじ。俺にもっとうまい飯食わせてくれよな」

 アレクの言ううまい飯が、結局は俺の魔力だし、よく分かんないけど、魔力量が増えて魔力操作が上達するならやる!俺、魔術に関してはもっと上を目指したいって思ってたんだ!

「じゃあ、俺は寝る」

 そう言って俺の周りをくるくる飛び回っていたアレクはベッドの真ん中に着陸してぽすんと横になった。

「いや、アレク体ちっちゃいのにそんな真ん中で寝たら困るし、そこは俺のベッドー!せめて端っこで寝てくれよー!」

「やだね」

 そう言ってそのまま寝ようとするアレクをむんずと掴んで枕の横に置く。
 半目を開けたアレクは起き上がりのそのそとまたベッドの真ん中でぽすんと体を横にした。
 俺はまたむんずと掴んで移動させる。

「おい、俺を猫みたいに掴むな」

「猫より聞き分けが悪いからしょうがない」

「しょうがなくない」

 そんなやり取りをしつつ俺が移動させる、アレクが戻ってくるを繰り返していると「お前ら何やってるんだ?」と呆れたディーの声が聞こえてきた。

「ディーのおかえり。アレクが俺のベッド取るんだよ」

「エルが俺を猫扱いしてくる」

「してないし、猫よりタチ悪いし」

「悪くない」

「じゃあ端っこで寝て」

 そんな俺らのやり取りを見てため息を吐くディー。

「お前らガキかよ……。あ、ガキだったわ、悪い」

 む……そりゃあディーよりは子供ですけれど?
 ディーの一言に納得がいかず、自然と動きを止める俺とアレク。

「ってかエルその汗どうした?」

「あー、アレクが魔力欲しいっていうから頑張って固めてた。出来なかったけど」

「魔力を固める……?」

「なんかねぇ、飴玉みたいにしたのが欲しいって言われたんだけど、出来なくて。頑張ってやってみたらすっごく疲れて汗かいた」

「初めてにしては結構いい線いってたぜ。これからが楽しみだなぁ」

「なっ……魔力を固めるなんて御伽噺の中だけの話かと思ってたが、出来るのか?」

「さぁね?」

 そう言ってアレクは本格的に寝入る体制に入ってしまった。……だからベッドの真ん中で寝るなよ。





 飯の前に風呂という事になって、ディーの風呂上がりを待っている間、俺は部屋でぼーっとしていた。完全に寝入ったアレクを枕の横に移動して天井を何の気なしに見上げている。

 時折、階下の食堂から笑い声が響いてくる。
 そのせいか、部屋が妙に静かに感じる。

 なんだか唐突にリュカ様に会いたくなった。絶対に有り得ないんだけど、なんだか近くに来てくれているような気がして。

 そんな事はないない、と頭を振る。

 それに、俺は自分から家を出て来たんだ。自分で冒険者になるって決めて出てきたんだから、今更会いたいとか、虫がよすぎるのは分かってる。でも、なんだか無性に会いたくなっちゃったんだ。
 兄上も元気かな。俺が急に居なくなって大丈夫だろうか。父上と母上はどうだろう。レオ様は、いつも通りだろうな。

 さっきまで全然平気だったのに 、なんで突然会いたくなっちゃったんだろう。

 でも、大丈夫、きっとディーが戻ってきたら今まで通りの俺で居られるから。きっと、疲れて空腹だからこうなってるだけ。

 だからディー、早く戻ってきて一緒にご飯食べようよ。
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