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ep.2 シェルター都市では、悪魔は白い目で見られます
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巨大な鋼鉄の門が、ぎぎ……と重たい音を立てて開いた。
「ここが、シェルター都市《カレイド》か」
「人間の巣だね」
「言い方!」
俺――ジルは思わずツッコミを入れた。
高い城壁、魔力を帯びた結界、武装した兵士たち。
悪魔が跋扈する世界において、人類が必死に築き上げた“安全圏”。
……のはずだが。
「おい、あれ見ろ」
「悪魔を連れてるぞ」
「本物か……?」
門をくぐった瞬間から、視線が痛い。
いや、正確には――
「ジル、みんな主のこと見てるよ?」
「半分はお前のせいだからな?」
俺の腕にしっかり絡みつき、悪魔の羽をぱたぱたさせているルナ。
どう見ても、どう言い訳しても、完全アウトな光景だった。
「えー? 悪魔と仲良くしてる方が、平和的でよくない?」
「それを理解できる世界だったら苦労しねえよ……」
そのとき。
「――止まってください」
凛とした声が、俺たちを呼び止めた。
振り向くと、そこに立っていたのは一人の少女。
淡い銀髪を後ろで束ね、シェルター都市の制服を着た、いかにも真面目そうな人間。
腰には短剣。
目は鋭く、状況判断が早そうなタイプだ。
「シェルター都市《カレイド》へようこそ。
……と言いたいところですが、その悪魔を連れての入場は認められません」
「ですよねー」
俺は即答した。
揉める未来が見えすぎている。
「俺はジル。旅人だ。こっちは――」
「ルナだよ。よろしく、人間ちゃん」
ルナがにこっと笑い、軽く手を振る。
次の瞬間。
少女の目が、氷点下まで冷えた。
「……悪魔が、自己紹介を?」
「うん。礼儀正しいでしょ?」
「そういう問題ではありません」
即、切り捨てられた。
「ジル、でしたね。あなた、自分が何をしているかわかっていますか?」
「一応、毎日命がけではある」
「そういう意味ではなく!」
少女は深く息を吸い、俺とルナを交互に見た。
「この都市では、悪魔は敵です。
危険で、制御不能で、人類を滅ぼした存在」
「ひどーい」
「まあ、だいたい合ってる」
俺が肩をすくめると、少女はさらに眉をひそめた。
「……あなた、本気でその悪魔と行動しているんですか?」
「ああ。本気も本気。命預けてる」
ルナがぎゅっと俺の腕に胸を押しつけてくる。
「ねー、主♡」
「ちょ、やめろって!」
その瞬間。
少女の視線が、完全にひややかになった。
「……なるほど。
あなたが“悪魔付き”ですか」
「噂になってるのか」
「悪い意味で、です」
即答だった。
「私はアリシア。シェルター都市防衛隊所属です」
「どうも」
「一つ、確認します」
アリシアは真っ直ぐ俺を見据えた。
「あなたは、人類の味方ですか?」
「一応」
「即答できない時点でアウト寄りですが……」
ため息をつき、彼女は頭を押さえる。
「どうして悪魔と、そんな……」
「仲良く?」
「いちゃついているんですか」
ルナが満足そうに頷いた。
「仲良しだよね、ジル」
「余計な一言だ!」
アリシアはしばらく沈黙し、やがて諦めたように言った。
「……わかりました。
上層部に報告します。その代わり――」
彼女はルナを睨む。
「都市内では、絶対に問題を起こさないでください」
「はーい。人間は食べないよ?」
「そういう発言が問題なんです!」
こうして俺は、
常識人の人間ヒロインに冷たい目で見られながら
シェルター都市に足を踏み入れた。
悪魔と一緒に。
「ねえジル」
「なんだ」
「この子、面白そうだね」
「やめろ。絶対トラブルになる」
……どうやら、
この都市でも平穏は期待できそうになかった。
「ここが、シェルター都市《カレイド》か」
「人間の巣だね」
「言い方!」
俺――ジルは思わずツッコミを入れた。
高い城壁、魔力を帯びた結界、武装した兵士たち。
悪魔が跋扈する世界において、人類が必死に築き上げた“安全圏”。
……のはずだが。
「おい、あれ見ろ」
「悪魔を連れてるぞ」
「本物か……?」
門をくぐった瞬間から、視線が痛い。
いや、正確には――
「ジル、みんな主のこと見てるよ?」
「半分はお前のせいだからな?」
俺の腕にしっかり絡みつき、悪魔の羽をぱたぱたさせているルナ。
どう見ても、どう言い訳しても、完全アウトな光景だった。
「えー? 悪魔と仲良くしてる方が、平和的でよくない?」
「それを理解できる世界だったら苦労しねえよ……」
そのとき。
「――止まってください」
凛とした声が、俺たちを呼び止めた。
振り向くと、そこに立っていたのは一人の少女。
淡い銀髪を後ろで束ね、シェルター都市の制服を着た、いかにも真面目そうな人間。
腰には短剣。
目は鋭く、状況判断が早そうなタイプだ。
「シェルター都市《カレイド》へようこそ。
……と言いたいところですが、その悪魔を連れての入場は認められません」
「ですよねー」
俺は即答した。
揉める未来が見えすぎている。
「俺はジル。旅人だ。こっちは――」
「ルナだよ。よろしく、人間ちゃん」
ルナがにこっと笑い、軽く手を振る。
次の瞬間。
少女の目が、氷点下まで冷えた。
「……悪魔が、自己紹介を?」
「うん。礼儀正しいでしょ?」
「そういう問題ではありません」
即、切り捨てられた。
「ジル、でしたね。あなた、自分が何をしているかわかっていますか?」
「一応、毎日命がけではある」
「そういう意味ではなく!」
少女は深く息を吸い、俺とルナを交互に見た。
「この都市では、悪魔は敵です。
危険で、制御不能で、人類を滅ぼした存在」
「ひどーい」
「まあ、だいたい合ってる」
俺が肩をすくめると、少女はさらに眉をひそめた。
「……あなた、本気でその悪魔と行動しているんですか?」
「ああ。本気も本気。命預けてる」
ルナがぎゅっと俺の腕に胸を押しつけてくる。
「ねー、主♡」
「ちょ、やめろって!」
その瞬間。
少女の視線が、完全にひややかになった。
「……なるほど。
あなたが“悪魔付き”ですか」
「噂になってるのか」
「悪い意味で、です」
即答だった。
「私はアリシア。シェルター都市防衛隊所属です」
「どうも」
「一つ、確認します」
アリシアは真っ直ぐ俺を見据えた。
「あなたは、人類の味方ですか?」
「一応」
「即答できない時点でアウト寄りですが……」
ため息をつき、彼女は頭を押さえる。
「どうして悪魔と、そんな……」
「仲良く?」
「いちゃついているんですか」
ルナが満足そうに頷いた。
「仲良しだよね、ジル」
「余計な一言だ!」
アリシアはしばらく沈黙し、やがて諦めたように言った。
「……わかりました。
上層部に報告します。その代わり――」
彼女はルナを睨む。
「都市内では、絶対に問題を起こさないでください」
「はーい。人間は食べないよ?」
「そういう発言が問題なんです!」
こうして俺は、
常識人の人間ヒロインに冷たい目で見られながら
シェルター都市に足を踏み入れた。
悪魔と一緒に。
「ねえジル」
「なんだ」
「この子、面白そうだね」
「やめろ。絶対トラブルになる」
……どうやら、
この都市でも平穏は期待できそうになかった。
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