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スピンオフ 怪異蒐集譚
喰
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樺涅:……嘘でしょ、先生…
骸:ハハ、それが全く嘘じゃないんだよね
樺涅:何したの……
鬼姫:何?私が居ると迷惑?
樺涅:……鬼
鬼姫:へぇ、中身が怖がってるのかな?
骸:鬼姫、あんまり虐めないでね
カバネは不老不死なんだけど
自分の死を感じると異常に畏怖する
例え、死ななくても
樺涅:止めて、先生
私は、大丈夫…
鬼姫:その中にあるモノ
温羅に見てもらう?
骸:それは僕の蒐集品だ
手は出すな
鬼姫:へぇ、そんな顔するんだ?骸
樺涅:お茶、用意してくる
骸:頼むね
……温羅は何が見たいのかな?
鬼姫:さぁ?色々見て回ってるけど
良いモノでもあった?温羅
骸:鬼姫は駅には行ったかい?
鬼姫:駅?
骸:きさらぎ駅、と言えば解りやすいかな
鬼姫:行ったことある訳ない…何?
鬼姫:はぁ、“許す”
骸:おや?今回は枷は無いのかい?
鬼姫:『あぁ、別にお前と戦うわけじゃないからな
ある程度の発言権は俺の責任として扱ってくれ』
骸:なるほど、そういうことか
温羅は知ってるのかな?
鬼姫:『そうだな、姫と会う前に一度な
蒐集と言えばあそこも大概だが…』
骸:違うって?
鬼姫:『あぁ、こっちは資料も多いからな
まぁ、怪異と人の違いなのか』
樺涅:……変わってる?
鬼姫:『別に何もしねーよ、俺が出ると嫌そうだな
すぐに変わってやるよ』
樺涅:別に
骸:そんなに怯える必要はないよ、カバネ
鬼姫と温羅なら大丈……
今日は来客が多いね
樺涅:?
先生?誰か来たの?
骸:鬼姫
鬼姫:何?
骸:今日はどうする?
鬼姫:……、また面倒臭そうなのに巻き込まれた
いいよ、温羅も興味持ってる
遍外:面倒臭いと聞こえたのだが
それは、もしかして、私のことだろうか?
いや、どうやら僕の事のようだ
だとしたら、本当にすまない
僕のせいと言うより、道唵がいけない
だって、彼が俺を此処に向かわせたんだから
椿:皆んな困ってますよ
一人で喋りすぎるのは
アナタの悪い癖です
遍外:あぁ!そうだった、そうだったね
何せ、久しぶりのホンモノたちじゃないか!
私も少し、興奮気味だ
さて、勝手に入ったことは謝ろう
しかし、入れたということはそういうことだろう?
俺の来訪を待っていたのかな?
椿:話、聞いてましたか?
骸:ハハ!キミが遍外か
遍外:少しの情報で、よく僕と解ったね
素晴らしいじゃないか!
僕も解るよ、キミが骸だ
骸の陰に隠れているキミは樺涅だね
そして、そこのキミ
鬼姫、だろう
鬼は見えないが気配は解る
どうだろう?私の答えは
鬼姫:煩い人
合ってるけどさ
遍外:はは!女子高生!いいじゃないか!
どうだい?青春しているかな?
うーん、若い割に苦労をしていそうだ
鬼姫:何、この人……
アナタ
遍外:あぁ!それは私の能力、と言っても過言ではない
フフフ、凄いだろう!
椿:あの、さっきから、聞いてますかね?
アナタの耳は飾りですか?
遍外:いや、本当にすまない…
樺涅:先生、この人
私と同じ…混ざってる
骸:うん…そうだね
しかも、コレはまた別の
遍外:なるほど!樺涅!
キミは呪いを受けていないのか!
それは興味深い
どれ、一度見せてあげよう
椿:殴りますよ
遍外:…すまない、椿
椿:申し遅れました
この煩いのが遍外
私は椿、遍外と共に在るモノです
道唵から話を伺い、誠に勝手ながら
本日、こちらに
遍外:堅い!椿、それくらいに!
椿:礼儀は必要でしょう
アナタに欠落している部分です
骸:一度、落ち着いて喋ろうか
すまないカバネ、頼むよ
樺涅:わかった
【間】
骸:改めて、僕は骸
これはーー
遍外:偽名、うん、理解した
骸:……その話から先にした方がいいのかな?
遍外:いやいや、まずは自己紹介でいい
樺涅:樺涅、不老不死
遍外:おお!簡潔!
俺の事を理解したのかな?
素晴らしい
鬼姫:鬼姫、高一
椿:アナタのせいですよ
遍外:うむ…すまない
骸:一度、道唵から話を聞いたことがある
知り合いにヤバい奴がいる、ってね
どうやら全くその通りみたいだけど
鬼姫:本当、会話のテンポが早すぎて疲れる
おじさんの割にお喋りだし
樺涅:おじさん?
鬼姫:え?おじさんでしょ?
樺涅:私には女に見えてる
鬼姫:え?温羅、アナタは?
…幼女?
骸:へぇ……
遍外:僕もある程度は話を聞いている
骸、キミには俺の姿がどう映るのか
それは答えないで貰いたい
それは私が一番隠していることだ
骸:解った
樺涅:どういうこと?
骸:僕には遍外の本当の姿が見えている
それ以上は答えてはいけないみたいだ
鬼姫:人によって見え方が違う?
アナタ、一体何?
椿:この人の能力です
それについては、今から
遍外:うん、まずはこれを見て欲しい
包帯の様なモノを巻き付けた左腕を出す遍外
遍外:私は、幼い頃に呪いを受けた
それは、禁忌を犯した罪だと、私は認識している
しかし、何故だろう、私はその時から異様に
その禁忌が愛おしい
鬼姫:酷い…人の腕じゃない…
樺涅:これは…なぜまだ機能しているのか解らない…
椿:全くその通りです
腐っている、と言うより腐り果てている
そう表現する方が正しいと思います
遍外:ジャンケンでもするかい?
フフ、案外動くんだよ
椿:…キツい冗談ですね
遍外:あっはは!少しは紛らわそうとね
鬼姫:触ると駄目だね
移りそう
遍外:小学生のイジメみたいだ
鬼姫:…本当、なんかムカつく
樺涅:気持ち、解る
骸:変なところで意気投合してるね
確かに、触らない方がいいけど
指一本くらい欲しいくらいだ
遍外:おっと、それは目と対価かな?
骸:……へぇ、価値が解るのかい?
遍外:怒らせたようだ
全く、冗談だって
椿:そういうところですよ
さぁ、早く本題を話しましょう
遍外:キミはせっかちだ
しかし、椿から怒られるのも飽きたところだ
さて、僕は人によって見え方が違う
これはつまり、私の能力であり
俺の能力では、無いのだ
鬼姫:誰かから奪ったってこと?
遍外:ううん?察しが良すぎるね
鬼姫:舐めてる?
樺涅:顔が変わる体質……?
遍外:あぁ、凄いね
正解だよ、全くその通り
その妖怪で間違いない
樺涅:私、まだ何も言ってないけど
遍外:うん…そうだ、そうだった
椿:悪い癖ですよ、全く
遍外:俺のコレは妖怪の力だ
さて、鬼姫
何の妖怪だろう?
鬼姫:急なクイズ…本当、調子狂う
のっぺらぼう
遍外:素晴らしい
骸:のっぺらぼうの肉を喰ったのか
その左腕は代償、かな
椿:この封をすれば、日常生活において不便はないのです
全くもって代償と呼ぶべきなのか疑問ですが
骸:椿、と言ったね
キミの事については後程聞くよ
椿:……えぇ
遍外:さて、私の話だ
僕が物心付いた頃、それに出会った
他を見た事はないが、身長が同じだった
もしかしたら、子供だったのかもしれない
ちなみに、俺の両親は公務員であり
霊感なんてモノは一切ない
……と、そんな平凡な家庭に生まれ
平凡に生きる筈が、出会ってしまってね
私は、駆られたんだ
鬼姫:食べることに?
遍外:あぁ、そうだ
食べたくて食べたくて仕方なくなったのを
昨日の様に覚えている…いや、昨日じゃない
ついさっきの出来事の様に
椿:遍外はその時、食べた代償で左腕を腐らせ
人によって見え方が変わる力を手に入れました
のっぺらぼうの、力を
私について話すと、その左腕を封じたのが私です
樺涅:年齢が合わない?
アナタも混ざってる?
椿:えぇ、そうですね
私の場合、少し特殊ではありますが
実年齢を言えば、60を超えているでしょうが
私の欠落した部分で、身体も精神もこの歳の時で止まっています
つまり、26歳から先に進めません
鬼姫:羨ましい限りだと思うけど
完全な不老不死ではないから
いつ、動き出すか解らない恐怖があるのかな?
椿:えぇ、そうですね
無いと言えば、嘘になります
骸:遍外……
変化ではなく、遍く、外道外法
それがキミか
遍外:言葉の意味を理解し紐解く
案外、知的な戦いをするのか
力に頼りきったものだと思っていたが
骸:僕は蒐集家だからね
会話や言葉は商売道具だよ
この目も使い所があるんだ
遍外:では、そんな君たちに
依頼でもしようかな
樺涅:依頼?
遍外:あぁ、ここは怪異屋
店であるなら、客として来たからには、それなりのものを、ね
鬼姫:はぁ、本当面倒臭いのが来た
温羅、後で解ってるよね?
椿:道唵から伺っています
骸に会うなら手土産に面白い話を持っていけ、と
骸:ハハ、道唵も気を使いすぎだよ
じゃあ、折角だし
骸:その依頼、受けようか
【間】
樺涅:血箱?
椿:正式名称は解りません
しかし、それが怪異である事は間違いないと
鬼姫:誰の血が入っているの?
椿:その捉え方は間違ってますね
鬼姫:間違い?
遍外:箱と聞けば、何かを入れるモノとして捉える
つまり、そこが落とし穴であり、人間らしい
鬼に聞くといい
鬼姫:温羅、余計なことは言わないで
……そうね、血で作られた箱…
骸:血という言葉こそミスリードの可能性は?
鬼姫:……そこまで追うの?
骸:鬼姫の場合、温羅がいるから正しい道に行ける
もし、ただの霊感のみだった場合は
全ての可能性を考えて動かないと
予想を超えたナニカに襲われる
それが、怪異だよ
遍外:流石は骸
何故か見えていたモノが見えない
格の違い、聞いていた時より成長していた
そもそも話自体が捻じ曲がってしまっている
などなど、人の範疇を超えるのが怪異の専売特許だ
全ての可能性を考えても無駄なことも多い
いや、人がそもそも全てを考え尽くすことはあり得ない
鬼姫:なるほど
確かに、温羅のおかげってことは、解ってはいたことだけど
なんかムカつくのよね
樺涅:鬼に勝てる人なんて限られてる
それを従えてるだけでもアナタは特別
鬼姫:嬉しくない
椿:まだお若いですから
遍外:寿命は沢山あるだろうから
鬼姫:その話、した?
遍外:そうだった、そうだったね
いけない、いけないね
集中を切らすといつもこうだ
椿:しっかりしなさい
遍外:あぁ、うん…そうだね
血箱、について少し話そう
コトリバコは知っているようだね
あぁ、いや、忘れてくれ
コトリバコは知っているかい?
樺涅:逆に掴みにくい
普通に話して
遍外:……コトリバコは材料に女か子供と血を入れる
水子の身体でもいいらしいが
生きたモノを使うとより効果的だとも聞いた
と、これは呪具であり生き物ではない
一人でに勝手に動き出したり
コトリバコに意志があり、呪う訳でもない
では、血箱とは?
そう、生き物だ
樺涅:血を吸う箱?
遍外:違う
鬼姫、実はあまり間違ってはない
血で出来た箱なんだが
それには意志があり、選別をする
骸:へぇ、呪う相手を箱自体が決めるんだ
遍外:作り方は簡単だよ
人間の女、もしくはメスの狐、犬、牛、あとは蛇
それの血で箱を満たす
箱は何でも良いそうだけど
とりあえずは箱全体に血を巡らせる
これが所謂
鬼姫:血管…?
遍外:そうだね、合っている
その後、箱の中に髪を入れる
これは、人間の女の髪のみ
本数というより、一束と言おうか
それに呪いではなく、祝詞を込める
樺涅:祝詞?神降ろしでもするつもり?
椿:ええ、そうです
血箱とは、神様の憑代が入っている怪異
しかし、箱自体が穢れているため
降りた神は穢れ、神では無くなる
骸:フフ、アハハ、ハハハハ!
それは誰が持ち込んだ怪異なんだ?遍外
遍外:ある村にだけ伝わるもので
俺の能力があるからこそ聞けたものだ
私は、見え方が違うが、見せ方も変えられる
元々、のっぺらぼうとはそういう妖怪だ
骸:村人の誰かに化けたとでも?
遍外:あぁ、うん、そうだ
鬼姫:それで、そんな血箱が此処にあるわけ?
アナタが作ってみましたとか言うの?
遍外:違う
生きていると言った筈
来たんだよ、此処に
樺涅:人を呪いながら動く呪具…いや、怪異
椿:それを結界にて封印した
対処方法は、呪具関係と同じで
破壊、封印といったところです
怪異であるものの、除霊等は効きません
元は神なので
遍外:呪われた者は身体中の穴から血が噴き出る
またその血で箱が満たされ、穢れる
対象は女、子供だけじゃなく、男もだ
混ざり合うことでより穢れを増す
つまりは、堕ちた神が更に堕ちて
厄災になる
鬼姫:それで?私たちに何をさせたい訳?
その箱を壊せとか言うつもり?
遍外:いいや、そんな事はしなくていい
見ていて欲しいんだ
鬼姫:見る?血箱を?
遍外:……この世を生きる者は役割を持っている
全て、そう、全てのモノが
骸:……
遍外:鬼姫、キミは鬼を宿し、従え
鬼の姫としてその生を全うする運命があり
キミの物語ならば主人公、ヒロインと言ったところか
案外、鬼は元は人で呪いによって鬼に変えられた話ならば
ラブロマンスだ
しかし、今、この場ではキミは鬼の姫という役割
鬼姫:温羅とそんなことはあり得ないけど
役割……そうね
遍外:樺涅、キミは助手、それとも弟子かな
骸を先生と呼び、慕い、一緒に在る存在
あぁ、これも案外、恋心があればラブロマンスだね
樺涅:私が先生と?それもあり得ない
遍外:そして、骸
キミは超越者、どの物語にも介入し
その力を振るうだろう
だが、ここでは怪異屋
そして、蒐集家という役割がある
骸:そうだね
遍外:働いている者は社会人
勉学に勤しむ者は学生だったり
自殺志願者は死に向かう物語を
人を殺す者は殺人者の物語を
愛する者は甘酸っぱい恋愛を描くのか否か
物語を紡ぐ者もいれば、演じる者もいる
それぞれの役割を全うし、死ぬ
それが人だ
樺涅:言いたいことは解る
して欲しいことが見えない
血箱を見るだけってどういうことなの?
遍外:依頼、と言ったがこれは手土産だ
私から骸への
しかし、骸は怪異屋という役割
店に客が行くのに、手土産ではおかしい
たがら、依頼なんだよ
骸:手土産は蒐集家としての僕にってことかな
椿:そういうことです
鬼姫:ふぅん、まぁ温羅も興味あるみたいだから
見るだけで良いって言うなら
それはそれで面倒臭くなくていい
樺涅:本当に
今回は無事に終わりそうでよかった
骸:無事…フフ、無事に終わるかな?
樺涅:ちょ、先生、それって
骸:遍外、それに椿
僕たちに対しての考察は楽しかったよ
骸:じゃあ、キミたちは一体何なんだろうね?
椿:やはり、気づきますか
遍外:俺は、それを食べた時
自分の中のナニカと繋がった気がした
私という存在が、何を意味し、何を求めるのか
鬼姫:私が温羅に初めて許を与えた時
繋がる感じは体験した
それってこと?
遍外:お前たちは悪霊に取り憑かれたことはあるかな?
自分が自分じゃない感覚を味わったことも
四肢が千切れそうな痛みも…
内臓が外側に出そうな不快感
腕が段々と腐っていく歯痒さを
骸:……
遍外:怪異と出会う時、何を感じる?
何を求める?何に、恐怖する?
樺涅:っ……この人…
椿:呪いを受けた感覚
それを身に宿した超越感
自分が自分じゃ無くなる恐怖と虚無感
それら全てが混ざり合う時の光を見た事は?
遍外:あぁ、怪異だけじゃない
この世の全ての謎と不可思議も
遍外:お前たちは、味わったことがあるかい?
椿:味わいたいと思わないですか?
遍外:自分の身体で、脳で、六感で
椿:その全てを
遍外:そして私はーー
遍外:全てを食べたい
遍外:骸、キミなら解る筈だ
僕たちは狂っているんだ
自分で自分のナニカと繋がった時から
あの時から、僕は
樺涅:明らかに私と違いすぎる
私は好きでこの身体になったわけじゃない
鬼姫:私は……解る
私は、あの時からーー
骸:そうだね、僕たちは狂っている
君が言った言葉も、僕は以前、話したことがある
同じような言葉を使ってね
遍外:そう、俺たちは特別だ
骸:総じて僕はソレを指と呼んでいる
人であり、人でない者たち
やはり、キミも指だ
遍外:光栄だね
…話を戻そう
僕たちの役割についてだが
私は美食家であり
椿は謂わば、毒見役だ
樺涅:毒味?
椿:ええ、そうです
遍外:さぁ、まずは見てもらおう
これが、血箱だ
鬼姫:強力な結界に護られてる
これは、アナタの?
遍外:あぁ、結界とそれに加えて
家畜と椿の尿を混ぜて撒いた
鬼姫:は?キモいんだけど
遍外:あぁ、こういう方法は好まないね
たしかに、古い考え方は嫌われる
しかし、穢れに対しては有効だ
ん?これは温羅かな?
そうだ、やり方は知っている
鬼姫:……温羅の言葉まで先取りした…
樺涅:先生…?
骸:初めて見た
穢れ過ぎているね、これ
呪いというより、なんだろう
中に入っている神はもう駄目だね
これを食べるって、一体何をするつもりかな?
あぁ、凄いね…これは蒐集したい
遍外:すまないが、渡せないね
あくまで見るだけだ
鬼姫:……温羅、どう?
近寄りたくはない…うん、そうだね
この穢れごと自分の中に入れるなんて
それって人なの?もう化け物だよ
椿:……
樺涅:私でもこれは…食べたくない
遍外:食べるのは美食家の役割だ
キミたちはそこで見ているだけでいい
これは見るだけで価値が……骸?
骸:……話をしよう、遍外
樺涅:!?先生!何してるの?
骸:少し、話をしてくるよ
鬼姫:私は?
骸:カバネと、椿の動きを見ておくんだ
鬼姫:ふぅん
遍外:椿、渡しておく
椿:たしかに
【間】
遍外:へぇ、これが骸の結界
骸:僕の為の僕だけの結界だよ
不便だろうけど
遍外:口以外動かせない、なるほど
キミが言葉を大切にしているのは役割のせいか
骸:キミは何を食べたんだい?
遍外:のっぺらぼうさ
骸:覚も、だろう
遍外:……それは、解るだろうね
集中を切らすと、すぐに先読みしてしまう
骸、キミはすぐに頭を空にして対策したみたいだけど
骸:解りやすいからね
最初に食べた怪異はなんだい?
遍外:……そこまで
骸:僕はカバネを知っている、見ている
カバネの中には二つ入っている
だが、キミの中身は多すぎる
遍外:フフ、フフフ
あぁ、凄く、キミは…怪異だ
いつかキミの目も食べてみたい
骸:僕も君を蒐集してみたくなったよ
遍外:ハハ!しかし、この結界
口が動けば問題ないこともあるだ
骸:へぇ……
遍外:いやぁ、まぁ、聞いてくれ
【間】
樺涅:先生…一体何考えて
鬼姫:その血箱、どうするつもり?
椿:私には私の役割がありますから
鬼姫:毒味、だっけ?
椿:ふふ、その意味が解りますか?
まだお若いですからね、アナタは
樺涅:ソレを少し取り込んで呪いの深度を測るんでしょ?
椿:……なるほど
樺涅:私は何故か妖怪の肉を食べても、呪われなかった
先生は死にかけていたせいだと言っていた
じゃあ、普通の人が食べたらどうなるの?
それは遍外の腕のように呪いを受ける
鬼姫:……なるほど
遍外も普通の人ってワケね
ただ、怪異を食べることに魅了された
そして、食べることが可能な特別な人間
だけど、呪いは受ける
その程度を測る為だけの存在
それが、椿…毒見役
椿:流石です
しかし、アナタたちに止める理由はない
そこで、少し見ていてください
鬼姫:そんなモノ、取り込んでどうなるか解ってんの?
椿:私は、どうなろうと構わない
鬼姫:っ!
樺涅:アナタの中には怪異はいない
何故平気なの?
椿:それが、椿
そういうことです
箱に付着していた血を舐める椿
椿:グッ…アッ……ッッッ、ァアッア!!
鬼姫:嘘でしょ!?一切躊躇しないの!?
樺涅:鬼姫
鬼姫:暴れられても困るからね
温羅、“許す”
一方、骸たちは
遍外:……何?
骸:あぁ、効かないんだ
そういうの
遍外:化け物だよ、キミは
骸:僕からすればキミも化け物だ
殺したかったらナイフや銃でやるしかないよ
色々聞いて解った
これで6人目だ
遍外:指、か
骸:それと、僕とキミは似ている
だから、僕としてはキミに興味がある
ここで何をしようと殺す事はない
遍外:殺せると?
骸:まぁ、そのくらいならできるよ
遍外:……おや、もう毒味は終わりか
骸:…結界の外が解るのかい?
遍外:あぁ、そうだった、そうだったね
いや、もういい
雲外鏡だよ、これは
骸:キミは妖怪しか食べない、グルメなのかい?
遍外:いや、そういうわけじゃない
使い勝手がいいのが妖怪に多いだけだよ
骸:…もう終わったなら仕方がない
会話もこれで終わりにするよ
骸の結界が解けていく
樺涅:先生!
骸:血箱の呪いか
遍外:神を宿している割にはこんなものか
さぁ、椿
残りは僕が、いただこうじゃないか
椿:カッ…ハッ
吐血を繰り返す椿
遍外:椿
椿:ハァ…ハァ…
終わりました……
遍外:よし、じゃあ食べようか
鬼姫:『おいおい、一声だと?』
遍外:キミが温羅か
どう?キミも一杯飲むかい?
鬼姫:『あー、俺と姫なら大丈夫な気がするが
やめておく、それは忌物だ』
椿:身体の中から燃える感覚と内臓を幾つか
本来の呪いでは血を吸う筈ですが、それはないです
樺涅:違う
アナタの中の血液が沸騰したの
燃える感覚はそれ
この程度って言葉で済ますには危険
遍外:いいや、私にとってはこの程度なんだよ
さぁ、食べよう
そう言い、血箱の中身を全てその腹におさめる
しかし、何も起こらない
遍外:……あぁ、ああ、これは素晴らしい…
ご馳走様
骸:その左腕かな
遍外:フフ、それは秘密だよ
鬼姫:ふぅ、なんか疲れた
私に害ないから今回はいいけど
樺涅:先生、後で色々教えて
骸:カバネ、言える事は少ないよ
樺涅:むー…
椿:では、帰りましょう
いい手土産も依頼も達成しました
骸:うん、僕にとっては最高のものだった
鬼姫:温羅、後で話そう
うん、私ももう少し知る必要がありそう
骸:遍外
遍外:いや、いずれだろうそれは
うん?なぜ読ませた?
骸:ハハ!こうすれば口が滑ると思ってね
遍外:……あー…本当だ
私の悪い癖だよ、全く
骸:僕たちも帰ろうかカバネ
樺涅:うん、先生
鬼姫:骸、また来るから
骸:あぁ、解った
椿:帰りますよ、遍外
遍外:……今回の血箱
その抜け殻はあげるよ
骸:……いいのかい?
遍外:はんぶんこ、だ
骸:随分取られたみたいだけどね
遍外:じゃあ、おまけだ
骸、僕はね
一瞬で骸の側により、耳元で…
骸:……ッ!
遍外:じゃあね
骸:…あぁ、また
後日
樺涅:私の蒐集には使え無さそう
骸:遍外のことかい?
樺涅:あれから少し考えてみたけど
私とは違いすぎるから
骸:…そうだね
あの日ーー
遍外:骸、僕はね
遍外:魔王を食べているよ
その言葉を思い出す骸
骸:本当、怪異って面白いね全く
フフ、アハハ!益々…
骸:蒐めたくなっちゃうじゃないか…!
喰 終
骸:ハハ、それが全く嘘じゃないんだよね
樺涅:何したの……
鬼姫:何?私が居ると迷惑?
樺涅:……鬼
鬼姫:へぇ、中身が怖がってるのかな?
骸:鬼姫、あんまり虐めないでね
カバネは不老不死なんだけど
自分の死を感じると異常に畏怖する
例え、死ななくても
樺涅:止めて、先生
私は、大丈夫…
鬼姫:その中にあるモノ
温羅に見てもらう?
骸:それは僕の蒐集品だ
手は出すな
鬼姫:へぇ、そんな顔するんだ?骸
樺涅:お茶、用意してくる
骸:頼むね
……温羅は何が見たいのかな?
鬼姫:さぁ?色々見て回ってるけど
良いモノでもあった?温羅
骸:鬼姫は駅には行ったかい?
鬼姫:駅?
骸:きさらぎ駅、と言えば解りやすいかな
鬼姫:行ったことある訳ない…何?
鬼姫:はぁ、“許す”
骸:おや?今回は枷は無いのかい?
鬼姫:『あぁ、別にお前と戦うわけじゃないからな
ある程度の発言権は俺の責任として扱ってくれ』
骸:なるほど、そういうことか
温羅は知ってるのかな?
鬼姫:『そうだな、姫と会う前に一度な
蒐集と言えばあそこも大概だが…』
骸:違うって?
鬼姫:『あぁ、こっちは資料も多いからな
まぁ、怪異と人の違いなのか』
樺涅:……変わってる?
鬼姫:『別に何もしねーよ、俺が出ると嫌そうだな
すぐに変わってやるよ』
樺涅:別に
骸:そんなに怯える必要はないよ、カバネ
鬼姫と温羅なら大丈……
今日は来客が多いね
樺涅:?
先生?誰か来たの?
骸:鬼姫
鬼姫:何?
骸:今日はどうする?
鬼姫:……、また面倒臭そうなのに巻き込まれた
いいよ、温羅も興味持ってる
遍外:面倒臭いと聞こえたのだが
それは、もしかして、私のことだろうか?
いや、どうやら僕の事のようだ
だとしたら、本当にすまない
僕のせいと言うより、道唵がいけない
だって、彼が俺を此処に向かわせたんだから
椿:皆んな困ってますよ
一人で喋りすぎるのは
アナタの悪い癖です
遍外:あぁ!そうだった、そうだったね
何せ、久しぶりのホンモノたちじゃないか!
私も少し、興奮気味だ
さて、勝手に入ったことは謝ろう
しかし、入れたということはそういうことだろう?
俺の来訪を待っていたのかな?
椿:話、聞いてましたか?
骸:ハハ!キミが遍外か
遍外:少しの情報で、よく僕と解ったね
素晴らしいじゃないか!
僕も解るよ、キミが骸だ
骸の陰に隠れているキミは樺涅だね
そして、そこのキミ
鬼姫、だろう
鬼は見えないが気配は解る
どうだろう?私の答えは
鬼姫:煩い人
合ってるけどさ
遍外:はは!女子高生!いいじゃないか!
どうだい?青春しているかな?
うーん、若い割に苦労をしていそうだ
鬼姫:何、この人……
アナタ
遍外:あぁ!それは私の能力、と言っても過言ではない
フフフ、凄いだろう!
椿:あの、さっきから、聞いてますかね?
アナタの耳は飾りですか?
遍外:いや、本当にすまない…
樺涅:先生、この人
私と同じ…混ざってる
骸:うん…そうだね
しかも、コレはまた別の
遍外:なるほど!樺涅!
キミは呪いを受けていないのか!
それは興味深い
どれ、一度見せてあげよう
椿:殴りますよ
遍外:…すまない、椿
椿:申し遅れました
この煩いのが遍外
私は椿、遍外と共に在るモノです
道唵から話を伺い、誠に勝手ながら
本日、こちらに
遍外:堅い!椿、それくらいに!
椿:礼儀は必要でしょう
アナタに欠落している部分です
骸:一度、落ち着いて喋ろうか
すまないカバネ、頼むよ
樺涅:わかった
【間】
骸:改めて、僕は骸
これはーー
遍外:偽名、うん、理解した
骸:……その話から先にした方がいいのかな?
遍外:いやいや、まずは自己紹介でいい
樺涅:樺涅、不老不死
遍外:おお!簡潔!
俺の事を理解したのかな?
素晴らしい
鬼姫:鬼姫、高一
椿:アナタのせいですよ
遍外:うむ…すまない
骸:一度、道唵から話を聞いたことがある
知り合いにヤバい奴がいる、ってね
どうやら全くその通りみたいだけど
鬼姫:本当、会話のテンポが早すぎて疲れる
おじさんの割にお喋りだし
樺涅:おじさん?
鬼姫:え?おじさんでしょ?
樺涅:私には女に見えてる
鬼姫:え?温羅、アナタは?
…幼女?
骸:へぇ……
遍外:僕もある程度は話を聞いている
骸、キミには俺の姿がどう映るのか
それは答えないで貰いたい
それは私が一番隠していることだ
骸:解った
樺涅:どういうこと?
骸:僕には遍外の本当の姿が見えている
それ以上は答えてはいけないみたいだ
鬼姫:人によって見え方が違う?
アナタ、一体何?
椿:この人の能力です
それについては、今から
遍外:うん、まずはこれを見て欲しい
包帯の様なモノを巻き付けた左腕を出す遍外
遍外:私は、幼い頃に呪いを受けた
それは、禁忌を犯した罪だと、私は認識している
しかし、何故だろう、私はその時から異様に
その禁忌が愛おしい
鬼姫:酷い…人の腕じゃない…
樺涅:これは…なぜまだ機能しているのか解らない…
椿:全くその通りです
腐っている、と言うより腐り果てている
そう表現する方が正しいと思います
遍外:ジャンケンでもするかい?
フフ、案外動くんだよ
椿:…キツい冗談ですね
遍外:あっはは!少しは紛らわそうとね
鬼姫:触ると駄目だね
移りそう
遍外:小学生のイジメみたいだ
鬼姫:…本当、なんかムカつく
樺涅:気持ち、解る
骸:変なところで意気投合してるね
確かに、触らない方がいいけど
指一本くらい欲しいくらいだ
遍外:おっと、それは目と対価かな?
骸:……へぇ、価値が解るのかい?
遍外:怒らせたようだ
全く、冗談だって
椿:そういうところですよ
さぁ、早く本題を話しましょう
遍外:キミはせっかちだ
しかし、椿から怒られるのも飽きたところだ
さて、僕は人によって見え方が違う
これはつまり、私の能力であり
俺の能力では、無いのだ
鬼姫:誰かから奪ったってこと?
遍外:ううん?察しが良すぎるね
鬼姫:舐めてる?
樺涅:顔が変わる体質……?
遍外:あぁ、凄いね
正解だよ、全くその通り
その妖怪で間違いない
樺涅:私、まだ何も言ってないけど
遍外:うん…そうだ、そうだった
椿:悪い癖ですよ、全く
遍外:俺のコレは妖怪の力だ
さて、鬼姫
何の妖怪だろう?
鬼姫:急なクイズ…本当、調子狂う
のっぺらぼう
遍外:素晴らしい
骸:のっぺらぼうの肉を喰ったのか
その左腕は代償、かな
椿:この封をすれば、日常生活において不便はないのです
全くもって代償と呼ぶべきなのか疑問ですが
骸:椿、と言ったね
キミの事については後程聞くよ
椿:……えぇ
遍外:さて、私の話だ
僕が物心付いた頃、それに出会った
他を見た事はないが、身長が同じだった
もしかしたら、子供だったのかもしれない
ちなみに、俺の両親は公務員であり
霊感なんてモノは一切ない
……と、そんな平凡な家庭に生まれ
平凡に生きる筈が、出会ってしまってね
私は、駆られたんだ
鬼姫:食べることに?
遍外:あぁ、そうだ
食べたくて食べたくて仕方なくなったのを
昨日の様に覚えている…いや、昨日じゃない
ついさっきの出来事の様に
椿:遍外はその時、食べた代償で左腕を腐らせ
人によって見え方が変わる力を手に入れました
のっぺらぼうの、力を
私について話すと、その左腕を封じたのが私です
樺涅:年齢が合わない?
アナタも混ざってる?
椿:えぇ、そうですね
私の場合、少し特殊ではありますが
実年齢を言えば、60を超えているでしょうが
私の欠落した部分で、身体も精神もこの歳の時で止まっています
つまり、26歳から先に進めません
鬼姫:羨ましい限りだと思うけど
完全な不老不死ではないから
いつ、動き出すか解らない恐怖があるのかな?
椿:えぇ、そうですね
無いと言えば、嘘になります
骸:遍外……
変化ではなく、遍く、外道外法
それがキミか
遍外:言葉の意味を理解し紐解く
案外、知的な戦いをするのか
力に頼りきったものだと思っていたが
骸:僕は蒐集家だからね
会話や言葉は商売道具だよ
この目も使い所があるんだ
遍外:では、そんな君たちに
依頼でもしようかな
樺涅:依頼?
遍外:あぁ、ここは怪異屋
店であるなら、客として来たからには、それなりのものを、ね
鬼姫:はぁ、本当面倒臭いのが来た
温羅、後で解ってるよね?
椿:道唵から伺っています
骸に会うなら手土産に面白い話を持っていけ、と
骸:ハハ、道唵も気を使いすぎだよ
じゃあ、折角だし
骸:その依頼、受けようか
【間】
樺涅:血箱?
椿:正式名称は解りません
しかし、それが怪異である事は間違いないと
鬼姫:誰の血が入っているの?
椿:その捉え方は間違ってますね
鬼姫:間違い?
遍外:箱と聞けば、何かを入れるモノとして捉える
つまり、そこが落とし穴であり、人間らしい
鬼に聞くといい
鬼姫:温羅、余計なことは言わないで
……そうね、血で作られた箱…
骸:血という言葉こそミスリードの可能性は?
鬼姫:……そこまで追うの?
骸:鬼姫の場合、温羅がいるから正しい道に行ける
もし、ただの霊感のみだった場合は
全ての可能性を考えて動かないと
予想を超えたナニカに襲われる
それが、怪異だよ
遍外:流石は骸
何故か見えていたモノが見えない
格の違い、聞いていた時より成長していた
そもそも話自体が捻じ曲がってしまっている
などなど、人の範疇を超えるのが怪異の専売特許だ
全ての可能性を考えても無駄なことも多い
いや、人がそもそも全てを考え尽くすことはあり得ない
鬼姫:なるほど
確かに、温羅のおかげってことは、解ってはいたことだけど
なんかムカつくのよね
樺涅:鬼に勝てる人なんて限られてる
それを従えてるだけでもアナタは特別
鬼姫:嬉しくない
椿:まだお若いですから
遍外:寿命は沢山あるだろうから
鬼姫:その話、した?
遍外:そうだった、そうだったね
いけない、いけないね
集中を切らすといつもこうだ
椿:しっかりしなさい
遍外:あぁ、うん…そうだね
血箱、について少し話そう
コトリバコは知っているようだね
あぁ、いや、忘れてくれ
コトリバコは知っているかい?
樺涅:逆に掴みにくい
普通に話して
遍外:……コトリバコは材料に女か子供と血を入れる
水子の身体でもいいらしいが
生きたモノを使うとより効果的だとも聞いた
と、これは呪具であり生き物ではない
一人でに勝手に動き出したり
コトリバコに意志があり、呪う訳でもない
では、血箱とは?
そう、生き物だ
樺涅:血を吸う箱?
遍外:違う
鬼姫、実はあまり間違ってはない
血で出来た箱なんだが
それには意志があり、選別をする
骸:へぇ、呪う相手を箱自体が決めるんだ
遍外:作り方は簡単だよ
人間の女、もしくはメスの狐、犬、牛、あとは蛇
それの血で箱を満たす
箱は何でも良いそうだけど
とりあえずは箱全体に血を巡らせる
これが所謂
鬼姫:血管…?
遍外:そうだね、合っている
その後、箱の中に髪を入れる
これは、人間の女の髪のみ
本数というより、一束と言おうか
それに呪いではなく、祝詞を込める
樺涅:祝詞?神降ろしでもするつもり?
椿:ええ、そうです
血箱とは、神様の憑代が入っている怪異
しかし、箱自体が穢れているため
降りた神は穢れ、神では無くなる
骸:フフ、アハハ、ハハハハ!
それは誰が持ち込んだ怪異なんだ?遍外
遍外:ある村にだけ伝わるもので
俺の能力があるからこそ聞けたものだ
私は、見え方が違うが、見せ方も変えられる
元々、のっぺらぼうとはそういう妖怪だ
骸:村人の誰かに化けたとでも?
遍外:あぁ、うん、そうだ
鬼姫:それで、そんな血箱が此処にあるわけ?
アナタが作ってみましたとか言うの?
遍外:違う
生きていると言った筈
来たんだよ、此処に
樺涅:人を呪いながら動く呪具…いや、怪異
椿:それを結界にて封印した
対処方法は、呪具関係と同じで
破壊、封印といったところです
怪異であるものの、除霊等は効きません
元は神なので
遍外:呪われた者は身体中の穴から血が噴き出る
またその血で箱が満たされ、穢れる
対象は女、子供だけじゃなく、男もだ
混ざり合うことでより穢れを増す
つまりは、堕ちた神が更に堕ちて
厄災になる
鬼姫:それで?私たちに何をさせたい訳?
その箱を壊せとか言うつもり?
遍外:いいや、そんな事はしなくていい
見ていて欲しいんだ
鬼姫:見る?血箱を?
遍外:……この世を生きる者は役割を持っている
全て、そう、全てのモノが
骸:……
遍外:鬼姫、キミは鬼を宿し、従え
鬼の姫としてその生を全うする運命があり
キミの物語ならば主人公、ヒロインと言ったところか
案外、鬼は元は人で呪いによって鬼に変えられた話ならば
ラブロマンスだ
しかし、今、この場ではキミは鬼の姫という役割
鬼姫:温羅とそんなことはあり得ないけど
役割……そうね
遍外:樺涅、キミは助手、それとも弟子かな
骸を先生と呼び、慕い、一緒に在る存在
あぁ、これも案外、恋心があればラブロマンスだね
樺涅:私が先生と?それもあり得ない
遍外:そして、骸
キミは超越者、どの物語にも介入し
その力を振るうだろう
だが、ここでは怪異屋
そして、蒐集家という役割がある
骸:そうだね
遍外:働いている者は社会人
勉学に勤しむ者は学生だったり
自殺志願者は死に向かう物語を
人を殺す者は殺人者の物語を
愛する者は甘酸っぱい恋愛を描くのか否か
物語を紡ぐ者もいれば、演じる者もいる
それぞれの役割を全うし、死ぬ
それが人だ
樺涅:言いたいことは解る
して欲しいことが見えない
血箱を見るだけってどういうことなの?
遍外:依頼、と言ったがこれは手土産だ
私から骸への
しかし、骸は怪異屋という役割
店に客が行くのに、手土産ではおかしい
たがら、依頼なんだよ
骸:手土産は蒐集家としての僕にってことかな
椿:そういうことです
鬼姫:ふぅん、まぁ温羅も興味あるみたいだから
見るだけで良いって言うなら
それはそれで面倒臭くなくていい
樺涅:本当に
今回は無事に終わりそうでよかった
骸:無事…フフ、無事に終わるかな?
樺涅:ちょ、先生、それって
骸:遍外、それに椿
僕たちに対しての考察は楽しかったよ
骸:じゃあ、キミたちは一体何なんだろうね?
椿:やはり、気づきますか
遍外:俺は、それを食べた時
自分の中のナニカと繋がった気がした
私という存在が、何を意味し、何を求めるのか
鬼姫:私が温羅に初めて許を与えた時
繋がる感じは体験した
それってこと?
遍外:お前たちは悪霊に取り憑かれたことはあるかな?
自分が自分じゃない感覚を味わったことも
四肢が千切れそうな痛みも…
内臓が外側に出そうな不快感
腕が段々と腐っていく歯痒さを
骸:……
遍外:怪異と出会う時、何を感じる?
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樺涅:っ……この人…
椿:呪いを受けた感覚
それを身に宿した超越感
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それら全てが混ざり合う時の光を見た事は?
遍外:あぁ、怪異だけじゃない
この世の全ての謎と不可思議も
遍外:お前たちは、味わったことがあるかい?
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椿:その全てを
遍外:そして私はーー
遍外:全てを食べたい
遍外:骸、キミなら解る筈だ
僕たちは狂っているんだ
自分で自分のナニカと繋がった時から
あの時から、僕は
樺涅:明らかに私と違いすぎる
私は好きでこの身体になったわけじゃない
鬼姫:私は……解る
私は、あの時からーー
骸:そうだね、僕たちは狂っている
君が言った言葉も、僕は以前、話したことがある
同じような言葉を使ってね
遍外:そう、俺たちは特別だ
骸:総じて僕はソレを指と呼んでいる
人であり、人でない者たち
やはり、キミも指だ
遍外:光栄だね
…話を戻そう
僕たちの役割についてだが
私は美食家であり
椿は謂わば、毒見役だ
樺涅:毒味?
椿:ええ、そうです
遍外:さぁ、まずは見てもらおう
これが、血箱だ
鬼姫:強力な結界に護られてる
これは、アナタの?
遍外:あぁ、結界とそれに加えて
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鬼姫:は?キモいんだけど
遍外:あぁ、こういう方法は好まないね
たしかに、古い考え方は嫌われる
しかし、穢れに対しては有効だ
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鬼姫:……温羅の言葉まで先取りした…
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遍外:すまないが、渡せないね
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椿:……
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遍外:食べるのは美食家の役割だ
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骸:少し、話をしてくるよ
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骸:カバネと、椿の動きを見ておくんだ
鬼姫:ふぅん
遍外:椿、渡しておく
椿:たしかに
【間】
遍外:へぇ、これが骸の結界
骸:僕の為の僕だけの結界だよ
不便だろうけど
遍外:口以外動かせない、なるほど
キミが言葉を大切にしているのは役割のせいか
骸:キミは何を食べたんだい?
遍外:のっぺらぼうさ
骸:覚も、だろう
遍外:……それは、解るだろうね
集中を切らすと、すぐに先読みしてしまう
骸、キミはすぐに頭を空にして対策したみたいだけど
骸:解りやすいからね
最初に食べた怪異はなんだい?
遍外:……そこまで
骸:僕はカバネを知っている、見ている
カバネの中には二つ入っている
だが、キミの中身は多すぎる
遍外:フフ、フフフ
あぁ、凄く、キミは…怪異だ
いつかキミの目も食べてみたい
骸:僕も君を蒐集してみたくなったよ
遍外:ハハ!しかし、この結界
口が動けば問題ないこともあるだ
骸:へぇ……
遍外:いやぁ、まぁ、聞いてくれ
【間】
樺涅:先生…一体何考えて
鬼姫:その血箱、どうするつもり?
椿:私には私の役割がありますから
鬼姫:毒味、だっけ?
椿:ふふ、その意味が解りますか?
まだお若いですからね、アナタは
樺涅:ソレを少し取り込んで呪いの深度を測るんでしょ?
椿:……なるほど
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じゃあ、普通の人が食べたらどうなるの?
それは遍外の腕のように呪いを受ける
鬼姫:……なるほど
遍外も普通の人ってワケね
ただ、怪異を食べることに魅了された
そして、食べることが可能な特別な人間
だけど、呪いは受ける
その程度を測る為だけの存在
それが、椿…毒見役
椿:流石です
しかし、アナタたちに止める理由はない
そこで、少し見ていてください
鬼姫:そんなモノ、取り込んでどうなるか解ってんの?
椿:私は、どうなろうと構わない
鬼姫:っ!
樺涅:アナタの中には怪異はいない
何故平気なの?
椿:それが、椿
そういうことです
箱に付着していた血を舐める椿
椿:グッ…アッ……ッッッ、ァアッア!!
鬼姫:嘘でしょ!?一切躊躇しないの!?
樺涅:鬼姫
鬼姫:暴れられても困るからね
温羅、“許す”
一方、骸たちは
遍外:……何?
骸:あぁ、効かないんだ
そういうの
遍外:化け物だよ、キミは
骸:僕からすればキミも化け物だ
殺したかったらナイフや銃でやるしかないよ
色々聞いて解った
これで6人目だ
遍外:指、か
骸:それと、僕とキミは似ている
だから、僕としてはキミに興味がある
ここで何をしようと殺す事はない
遍外:殺せると?
骸:まぁ、そのくらいならできるよ
遍外:……おや、もう毒味は終わりか
骸:…結界の外が解るのかい?
遍外:あぁ、そうだった、そうだったね
いや、もういい
雲外鏡だよ、これは
骸:キミは妖怪しか食べない、グルメなのかい?
遍外:いや、そういうわけじゃない
使い勝手がいいのが妖怪に多いだけだよ
骸:…もう終わったなら仕方がない
会話もこれで終わりにするよ
骸の結界が解けていく
樺涅:先生!
骸:血箱の呪いか
遍外:神を宿している割にはこんなものか
さぁ、椿
残りは僕が、いただこうじゃないか
椿:カッ…ハッ
吐血を繰り返す椿
遍外:椿
椿:ハァ…ハァ…
終わりました……
遍外:よし、じゃあ食べようか
鬼姫:『おいおい、一声だと?』
遍外:キミが温羅か
どう?キミも一杯飲むかい?
鬼姫:『あー、俺と姫なら大丈夫な気がするが
やめておく、それは忌物だ』
椿:身体の中から燃える感覚と内臓を幾つか
本来の呪いでは血を吸う筈ですが、それはないです
樺涅:違う
アナタの中の血液が沸騰したの
燃える感覚はそれ
この程度って言葉で済ますには危険
遍外:いいや、私にとってはこの程度なんだよ
さぁ、食べよう
そう言い、血箱の中身を全てその腹におさめる
しかし、何も起こらない
遍外:……あぁ、ああ、これは素晴らしい…
ご馳走様
骸:その左腕かな
遍外:フフ、それは秘密だよ
鬼姫:ふぅ、なんか疲れた
私に害ないから今回はいいけど
樺涅:先生、後で色々教えて
骸:カバネ、言える事は少ないよ
樺涅:むー…
椿:では、帰りましょう
いい手土産も依頼も達成しました
骸:うん、僕にとっては最高のものだった
鬼姫:温羅、後で話そう
うん、私ももう少し知る必要がありそう
骸:遍外
遍外:いや、いずれだろうそれは
うん?なぜ読ませた?
骸:ハハ!こうすれば口が滑ると思ってね
遍外:……あー…本当だ
私の悪い癖だよ、全く
骸:僕たちも帰ろうかカバネ
樺涅:うん、先生
鬼姫:骸、また来るから
骸:あぁ、解った
椿:帰りますよ、遍外
遍外:……今回の血箱
その抜け殻はあげるよ
骸:……いいのかい?
遍外:はんぶんこ、だ
骸:随分取られたみたいだけどね
遍外:じゃあ、おまけだ
骸、僕はね
一瞬で骸の側により、耳元で…
骸:……ッ!
遍外:じゃあね
骸:…あぁ、また
後日
樺涅:私の蒐集には使え無さそう
骸:遍外のことかい?
樺涅:あれから少し考えてみたけど
私とは違いすぎるから
骸:…そうだね
あの日ーー
遍外:骸、僕はね
遍外:魔王を食べているよ
その言葉を思い出す骸
骸:本当、怪異って面白いね全く
フフ、アハハ!益々…
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喰 終
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