オサキ怪異相談所

てくす

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スピンオフ 怪異蒐集譚

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樺涅:……嘘でしょ、先生…

骸:ハハ、それが全く嘘じゃないんだよね

樺涅:何したの……

鬼姫:何?私が居ると迷惑?

樺涅:……鬼

鬼姫:へぇ、中身が怖がってるのかな?

骸:鬼姫、あんまり虐めないでね
  カバネは不老不死なんだけど
  自分の死を感じると異常に畏怖する
  例え、死ななくても

樺涅:止めて、先生
   私は、大丈夫…

鬼姫:その中にあるモノ
   温羅に見てもらう?

骸:それは僕の蒐集品だ
  手は出すな

鬼姫:へぇ、そんな顔するんだ?骸

樺涅:お茶、用意してくる

骸:頼むね
  ……温羅は何が見たいのかな?

鬼姫:さぁ?色々見て回ってるけど
   良いモノでもあった?温羅

骸:鬼姫は駅には行ったかい?

鬼姫:駅?

骸:きさらぎ駅、と言えば解りやすいかな

鬼姫:行ったことある訳ない…何?
鬼姫:はぁ、“許す”

骸:おや?今回は枷は無いのかい?

鬼姫:『あぁ、別にお前と戦うわけじゃないからな
   ある程度の発言権は俺の責任として扱ってくれ』

骸:なるほど、そういうことか
  温羅は知ってるのかな?

鬼姫:『そうだな、姫と会う前に一度な
   蒐集と言えばあそこも大概だが…』

骸:違うって?

鬼姫:『あぁ、こっちは資料も多いからな
   まぁ、怪異と人の違いなのか』

樺涅:……変わってる?

鬼姫:『別に何もしねーよ、俺が出ると嫌そうだな
   すぐに変わってやるよ』

樺涅:別に

骸:そんなに怯える必要はないよ、カバネ
  鬼姫と温羅なら大丈……
  今日は来客が多いね

樺涅:?
   先生?誰か来たの?

骸:鬼姫

鬼姫:何?

骸:今日はどうする?

鬼姫:……、また面倒臭そうなのに巻き込まれた
   いいよ、温羅も興味持ってる

遍外:面倒臭いと聞こえたのだが
   それは、もしかして、私のことだろうか?
   いや、どうやら僕の事のようだ
   だとしたら、本当にすまない
   僕のせいと言うより、道唵がいけない
   だって、彼が俺を此処に向かわせたんだから

椿:皆んな困ってますよ
  一人で喋りすぎるのは
  アナタの悪い癖です

遍外:あぁ!そうだった、そうだったね
   何せ、久しぶりのホンモノたちじゃないか!
   私も少し、興奮気味だ
   さて、勝手に入ったことは謝ろう
   しかし、入れたということはそういうことだろう?
   俺の来訪を待っていたのかな?

椿:話、聞いてましたか?

骸:ハハ!キミが遍外へんげ

遍外:少しの情報で、よく僕と解ったね
   素晴らしいじゃないか!
   僕も解るよ、キミが骸だ
   骸の陰に隠れているキミは樺涅だね
   そして、そこのキミ
   鬼姫、だろう
   鬼は見えないが気配は解る
   どうだろう?私の答えは

鬼姫:煩い人
   合ってるけどさ

遍外:はは!女子高生!いいじゃないか!
   どうだい?青春しているかな?
   うーん、若い割に苦労をしていそうだ

鬼姫:何、この人……
   アナタ

遍外:あぁ!それは私の能力、と言っても過言ではない
   フフフ、凄いだろう!

椿:あの、さっきから、聞いてますかね?
  アナタの耳は飾りですか?

遍外:いや、本当にすまない…

樺涅:先生、この人
   私と同じ…混ざってる

骸:うん…そうだね
  しかも、コレはまた別の

遍外:なるほど!樺涅!
   キミは呪いを受けていないのか!
   それは興味深い
   どれ、一度見せてあげよう

椿:殴りますよ

遍外:…すまない、椿

椿:申し遅れました
  この煩いのが遍外
  私は椿、遍外と共に在るモノです
  道唵から話を伺い、誠に勝手ながら
  本日、こちらに

遍外:堅い!椿、それくらいに!

椿:礼儀は必要でしょう
  アナタに欠落している部分です

骸:一度、落ち着いて喋ろうか
  すまないカバネ、頼むよ

樺涅:わかった


【間】



骸:改めて、僕は骸
  これはーー

遍外:偽名、うん、理解した

骸:……その話から先にした方がいいのかな?

遍外:いやいや、まずは自己紹介でいい 

樺涅:樺涅、不老不死

遍外:おお!簡潔!
   俺の事を理解したのかな?
   素晴らしい

鬼姫:鬼姫、高一

椿:アナタのせいですよ

遍外:うむ…すまない

骸:一度、道唵から話を聞いたことがある
  知り合いにヤバい奴がいる、ってね
  どうやら全くその通りみたいだけど

鬼姫:本当、会話のテンポが早すぎて疲れる
   おじさんの割にお喋りだし

樺涅:おじさん?

鬼姫:え?おじさんでしょ?

樺涅:私には女に見えてる

鬼姫:え?温羅、アナタは?
   …幼女?

骸:へぇ……

遍外:僕もある程度は話を聞いている
   骸、キミには俺の姿がどう映るのか
   それは答えないで貰いたい
   それは私が一番隠していることだ

骸:解った

樺涅:どういうこと?

骸:僕には遍外の本当の姿が見えている
  それ以上は答えてはいけないみたいだ

鬼姫:人によって見え方が違う?
   アナタ、一体何?

椿:この人の能力です
  それについては、今から

遍外:うん、まずはこれを見て欲しい

包帯の様なモノを巻き付けた左腕を出す遍外

遍外:私は、幼い頃に呪いを受けた
   それは、禁忌を犯した罪だと、私は認識している
   しかし、何故だろう、私はその時から異様に
   その禁忌が愛おしい

鬼姫:酷い…人の腕じゃない…

樺涅:これは…なぜまだ機能しているのか解らない…

椿:全くその通りです
  腐っている、と言うより腐り果てている
  そう表現する方が正しいと思います

遍外:ジャンケンでもするかい?
   フフ、案外動くんだよ

椿:…キツい冗談ですね

遍外:あっはは!少しは紛らわそうとね

鬼姫:触ると駄目だね
   移りそう

遍外:小学生のイジメみたいだ

鬼姫:…本当、なんかムカつく

樺涅:気持ち、解る

骸:変なところで意気投合してるね
  確かに、触らない方がいいけど
  指一本くらい欲しいくらいだ

遍外:おっと、それは目と対価かな?

骸:……へぇ、価値が解るのかい?

遍外:怒らせたようだ
   全く、冗談だって

椿:そういうところですよ
  さぁ、早く本題を話しましょう

遍外:キミはせっかちだ
   しかし、椿から怒られるのも飽きたところだ
   さて、僕は人によって見え方が違う
   これはつまり、私の能力であり
   俺の能力では、無いのだ

鬼姫:誰かから奪ったってこと?

遍外:ううん?察しが良すぎるね

鬼姫:舐めてる?

樺涅:顔が変わる体質……?

遍外:あぁ、凄いね
   正解だよ、全くその通り
   その妖怪で間違いない

樺涅:私、まだ何も言ってないけど

遍外:うん…そうだ、そうだった

椿:悪い癖ですよ、全く

遍外:俺のコレは妖怪の力だ
   さて、鬼姫
   何の妖怪だろう?

鬼姫:急なクイズ…本当、調子狂う
   のっぺらぼう

遍外:素晴らしい

骸:のっぺらぼうの肉を喰ったのか
  その左腕は代償、かな

椿:この封をすれば、日常生活において不便はないのです
  全くもって代償と呼ぶべきなのか疑問ですが

骸:椿、と言ったね
  キミの事については後程聞くよ

椿:……えぇ

遍外:さて、私の話だ
   僕が物心付いた頃、それに出会った
   他を見た事はないが、身長が同じだった
   もしかしたら、子供だったのかもしれない
   ちなみに、俺の両親は公務員であり
   霊感なんてモノは一切ない
   ……と、そんな平凡な家庭に生まれ
   平凡に生きる筈が、出会ってしまってね
   私は、駆られたんだ

鬼姫:食べることに?

遍外:あぁ、そうだ
   食べたくて食べたくて仕方なくなったのを
   昨日の様に覚えている…いや、昨日じゃない
   ついさっきの出来事の様に

椿:遍外はその時、食べた代償で左腕を腐らせ
  人によって見え方が変わる力を手に入れました
  のっぺらぼうの、力を
  私について話すと、その左腕を封じたのが私です

樺涅:年齢が合わない?
   アナタも混ざってる?

椿:えぇ、そうですね
  私の場合、少し特殊ではありますが
  実年齢を言えば、60を超えているでしょうが
  私の欠落した部分で、身体も精神もこの歳の時で止まっています
  つまり、26歳から先に進めません

鬼姫:羨ましい限りだと思うけど
   完全な不老不死ではないから
   いつ、動き出すか解らない恐怖があるのかな?

椿:えぇ、そうですね
  無いと言えば、嘘になります 

骸:遍外……
  変化ではなく、あまねく、外道外法
  それがキミか

遍外:言葉の意味を理解し紐解く
   案外、知的な戦いをするのか
   力に頼りきったものだと思っていたが

骸:僕は蒐集家だからね
  会話や言葉は商売道具だよ
  この目も使い所があるんだ

遍外:では、そんな君たちに
   依頼でもしようかな

樺涅:依頼?

遍外:あぁ、ここは怪異屋
   店であるなら、客として来たからには、それなりのものを、ね

鬼姫:はぁ、本当面倒臭いのが来た
   温羅、後で解ってるよね?

椿:道唵から伺っています
  骸に会うなら手土産に面白い話を持っていけ、と

骸:ハハ、道唵も気を使いすぎだよ
  じゃあ、折角だし


骸:その依頼、受けようか



【間】



樺涅:血箱ちばこ

椿:正式名称は解りません
  しかし、それが怪異である事は間違いないと

鬼姫:誰の血が入っているの?

椿:その捉え方は間違ってますね

鬼姫:間違い?

遍外:箱と聞けば、何かを入れるモノとして捉える
   つまり、そこが落とし穴であり、人間らしい
   鬼に聞くといい

鬼姫:温羅、余計なことは言わないで
   ……そうね、血で作られた箱…

骸:血という言葉こそミスリードの可能性は?

鬼姫:……そこまで追うの?

骸:鬼姫の場合、温羅がいるから正しい道に行ける
  もし、ただの霊感のみだった場合は
  全ての可能性を考えて動かないと
  予想を超えたナニカに襲われる
  それが、怪異だよ

遍外:流石は骸
   何故か見えていたモノが見えない
   格の違い、聞いていた時より成長していた
   そもそも話自体が捻じ曲がってしまっている
   などなど、人の範疇を超えるのが怪異の専売特許だ
   全ての可能性を考えても無駄なことも多い
   いや、人がそもそも全てを考え尽くすことはあり得ない

鬼姫:なるほど
   確かに、温羅のおかげってことは、解ってはいたことだけど
   なんかムカつくのよね

樺涅:鬼に勝てる人なんて限られてる
   それを従えてるだけでもアナタは特別

鬼姫:嬉しくない

椿:まだお若いですから

遍外:寿命は沢山あるだろうから

鬼姫:その話、した?

遍外:そうだった、そうだったね
   いけない、いけないね
   集中を切らすといつもこうだ

椿:しっかりしなさい

遍外:あぁ、うん…そうだね
   血箱、について少し話そう
   コトリバコは知っているようだね
   あぁ、いや、忘れてくれ
   コトリバコは知っているかい?

樺涅:逆に掴みにくい
   普通に話して

遍外:……コトリバコは材料に女か子供と血を入れる
   水子の身体でもいいらしいが
   生きたモノを使うとより効果的だとも聞いた
   と、これは呪具であり生き物ではない
   一人でに勝手に動き出したり
   コトリバコに意志があり、呪う訳でもない
   では、血箱とは?
   そう、生き物だ

樺涅:血を吸う箱?

遍外:違う
   鬼姫、実はあまり間違ってはない
   血で出来た箱なんだが
   それには意志があり、選別をする

骸:へぇ、呪う相手を箱自体が決めるんだ

遍外:作り方は簡単だよ
   人間の女、もしくはメスの狐、犬、牛、あとは蛇
   それの血で箱を満たす
   箱は何でも良いそうだけど
   とりあえずは箱全体に血を巡らせる
   これが所謂

鬼姫:血管…?

遍外:そうだね、合っている
   その後、箱の中に髪を入れる
   これは、人間の女の髪のみ
   本数というより、一束と言おうか
   それに呪いではなく、祝詞のりとを込める

樺涅:祝詞のりと?神降ろしでもするつもり?

椿:ええ、そうです
  血箱とは、神様の憑代が入っている怪異
  しかし、箱自体が穢れているため
  降りた神は穢れ、神では無くなる

骸:フフ、アハハ、ハハハハ!
  それは誰が持ち込んだ怪異なんだ?遍外

遍外:ある村にだけ伝わるもので
   俺の能力があるからこそ聞けたものだ
   私は、見え方が違うが、見せ方も変えられる
   元々、のっぺらぼうとはそういう妖怪だ

骸:村人の誰かに化けたとでも?

遍外:あぁ、うん、そうだ

鬼姫:それで、そんな血箱が此処にあるわけ?
   アナタが作ってみましたとか言うの?

遍外:違う
   生きていると言った筈
   来たんだよ、此処に

樺涅:人を呪いながら動く呪具…いや、怪異

椿:それを結界にて封印した
  対処方法は、呪具関係と同じで
  破壊、封印といったところです
  怪異であるものの、除霊等は効きません
  元は神なので

遍外:呪われた者は身体中の穴から血が噴き出る
   またその血で箱が満たされ、穢れる
   対象は女、子供だけじゃなく、男もだ
   混ざり合うことでより穢れを増す
   つまりは、堕ちた神が更に堕ちて
   厄災になる

鬼姫:それで?私たちに何をさせたい訳?
   その箱を壊せとか言うつもり?

遍外:いいや、そんな事はしなくていい
   見ていて欲しいんだ

鬼姫:見る?血箱を?

遍外:……この世を生きる者は役割を持っている
   全て、そう、全てのモノが

骸:……

遍外:鬼姫、キミは鬼を宿し、従え
   鬼の姫としてその生を全うする運命があり
   キミの物語ならば主人公、ヒロインと言ったところか
   案外、鬼は元は人で呪いによって鬼に変えられた話ならば
   ラブロマンスだ
   しかし、今、この場ではキミは鬼の姫という役割

鬼姫:温羅とそんなことはあり得ないけど
   役割……そうね

遍外:樺涅、キミは助手、それとも弟子かな
   骸を先生と呼び、慕い、一緒に在る存在
   あぁ、これも案外、恋心があればラブロマンスだね

樺涅:私が先生と?それもあり得ない

遍外:そして、骸
   キミは超越者、どの物語にも介入し
   その力を振るうだろう
   だが、ここでは怪異屋
   そして、蒐集家という役割がある

骸:そうだね

遍外:働いている者は社会人
   勉学に勤しむ者は学生だったり
   自殺志願者は死に向かう物語を
   人を殺す者は殺人者の物語を
   愛する者は甘酸っぱい恋愛を描くのか否か
   物語を紡ぐ者もいれば、演じる者もいる
   それぞれの役割を全うし、死ぬ
   それが人だ

樺涅:言いたいことは解る
   して欲しいことが見えない
   血箱を見るだけってどういうことなの?

遍外:依頼、と言ったがこれは手土産だ
   私から骸への
   しかし、骸は怪異屋という役割
   店に客が行くのに、手土産ではおかしい
   たがら、依頼なんだよ

骸:手土産は蒐集家としての僕にってことかな

椿:そういうことです

鬼姫:ふぅん、まぁ温羅も興味あるみたいだから
   見るだけで良いって言うなら
   それはそれで面倒臭くなくていい

樺涅:本当に
   今回は無事に終わりそうでよかった

骸:無事…フフ、無事に終わるかな?

樺涅:ちょ、先生、それって

骸:遍外、それに椿
  僕たちに対しての考察は楽しかったよ


骸:じゃあ、キミたちは一体何なんだろうね?
 

椿:やはり、気づきますか

遍外:俺は、それを食べた時
   自分の中のナニカと繋がった気がした
   私という存在が、何を意味し、何を求めるのか

鬼姫:私が温羅に初めてゆるしを与えた時
   繋がる感じは体験した
   それってこと?

遍外:お前たちは悪霊に取り憑かれたことはあるかな?
   自分が自分じゃない感覚を味わったことも
   四肢が千切れそうな痛みも…
   内臓が外側に出そうな不快感
   腕が段々と腐っていく歯痒さを

骸:……

遍外:怪異と出会う時、何を感じる?
   何を求める?何に、恐怖する?

樺涅:っ……この人…

椿:呪いを受けた感覚
  それを身に宿した超越感
  自分が自分じゃ無くなる恐怖と虚無感     
  それら全てが混ざり合う時の光を見た事は?

遍外:あぁ、怪異だけじゃない
   この世の全ての謎と不可思議も


遍外:お前たちは、味わったことがあるかい?

椿:味わいたいと思わないですか?
   
遍外:自分の身体で、脳で、六感で

椿:その全てを

遍外:そして私はーー


遍外:全てを食べたい


遍外:骸、キミなら解る筈だ
   僕たちは狂っているんだ
   自分で自分のナニカと繋がった時から
   あの時から、僕は

樺涅:明らかに私と違いすぎる
   私は好きでこの身体になったわけじゃない

鬼姫:私は……解る
   私は、あの時からーー

骸:そうだね、僕たちは狂っている
  君が言った言葉も、僕は以前、話したことがある
  同じような言葉を使ってね

遍外:そう、俺たちは特別だ

骸:総じて僕はソレを指と呼んでいる
  人であり、人でない者たち
  やはり、キミも指だ

遍外:光栄だね
   …話を戻そう
   僕たちの役割についてだが
   私は美食家であり
   椿は謂わば、毒見役だ

樺涅:毒味?

椿:ええ、そうです

遍外:さぁ、まずは見てもらおう
   これが、血箱だ

鬼姫:強力な結界に護られてる
   これは、アナタの?

遍外:あぁ、結界とそれに加えて
   家畜と椿の尿を混ぜて撒いた

鬼姫:は?キモいんだけど

遍外:あぁ、こういう方法は好まないね
   たしかに、古い考え方は嫌われる
   しかし、穢れに対しては有効だ
   ん?これは温羅かな?
   そうだ、やり方は知っている

鬼姫:……温羅の言葉まで先取りした…

樺涅:先生…?

骸:初めて見た
  穢れ過ぎているね、これ
  呪いというより、なんだろう
  中に入っている神はもう駄目だね
  これを食べるって、一体何をするつもりかな?
  あぁ、凄いね…これは蒐集したい

遍外:すまないが、渡せないね
   あくまで見るだけだ

鬼姫:……温羅、どう?
   近寄りたくはない…うん、そうだね
   この穢れごと自分の中に入れるなんて
   それって人なの?もう化け物だよ

椿:……

樺涅:私でもこれは…食べたくない

遍外:食べるのは美食家の役割だ
   キミたちはそこで見ているだけでいい
   これは見るだけで価値が……骸?

骸:……話をしよう、遍外

樺涅:!?先生!何してるの?

骸:少し、話をしてくるよ

鬼姫:私は?

骸:カバネと、椿の動きを見ておくんだ

鬼姫:ふぅん

遍外:椿、渡しておく

椿:たしかに



【間】



遍外:へぇ、これが骸の結界

骸:僕の為の僕だけの結界だよ
  不便だろうけど

遍外:口以外動かせない、なるほど
   キミが言葉を大切にしているのは役割のせいか

骸:キミは何を食べたんだい?

遍外:のっぺらぼうさ

骸:さとりも、だろう

遍外:……それは、解るだろうね
   集中を切らすと、すぐに先読みしてしまう
   骸、キミはすぐに頭を空にして対策したみたいだけど

骸:解りやすいからね
  最初に食べた怪異はなんだい?

遍外:……そこまで

骸:僕はカバネを知っている、見ている
  カバネの中には二つ入っている
  だが、キミの中身は多すぎる

遍外:フフ、フフフ
   あぁ、凄く、キミは…怪異だ
   いつかキミの目も食べてみたい

骸:僕も君を蒐集してみたくなったよ

遍外:ハハ!しかし、この結界
   口が動けば問題ないこともあるだ

骸:へぇ……

遍外:いやぁ、まぁ、聞いてくれ


【間】


樺涅:先生…一体何考えて

鬼姫:その血箱、どうするつもり?

椿:私には私の役割がありますから

鬼姫:毒味、だっけ?

椿:ふふ、その意味が解りますか?
  まだお若いですからね、アナタは

樺涅:ソレを少し取り込んで呪いの深度を測るんでしょ?

椿:……なるほど

樺涅:私は何故か妖怪の肉を食べても、呪われなかった
   先生は死にかけていたせいだと言っていた
   じゃあ、普通の人が食べたらどうなるの?
   それは遍外の腕のように呪いを受ける

鬼姫:……なるほど
   遍外も普通の人ってワケね
   ただ、怪異を食べることに魅了された
   そして、食べることが可能な特別な人間
   だけど、呪いは受ける
   その程度を測る為だけの存在
   それが、椿…毒見役

椿:流石です
  しかし、アナタたちに止める理由はない
  そこで、少し見ていてください

鬼姫:そんなモノ、取り込んでどうなるか解ってんの?

椿:私は、どうなろうと構わない

鬼姫:っ!

樺涅:アナタの中には怪異はいない
   何故平気なの?

椿:それが、椿
  そういうことです

箱に付着していた血を舐める椿

椿:グッ…アッ……ッッッ、ァアッア!!

鬼姫:嘘でしょ!?一切躊躇しないの!?

樺涅:鬼姫

鬼姫:暴れられても困るからね
   温羅、“許す”


一方、骸たちは

遍外:……何?

骸:あぁ、効かないんだ
  そういうの

遍外:化け物だよ、キミは

骸:僕からすればキミも化け物だ
  殺したかったらナイフや銃でやるしかないよ
  色々聞いて解った
  これで6人目だ

遍外:指、か

骸:それと、僕とキミは似ている
  だから、僕としてはキミに興味がある
  ここで何をしようと殺す事はない

遍外:殺せると?

骸:まぁ、そのくらいならできるよ

遍外:……おや、もう毒味は終わりか

骸:…結界の外が解るのかい?

遍外:あぁ、そうだった、そうだったね
   いや、もういい
   雲外鏡だよ、これは

骸:キミは妖怪しか食べない、グルメなのかい?

遍外:いや、そういうわけじゃない
   使い勝手がいいのが妖怪に多いだけだよ

骸:…もう終わったなら仕方がない
  会話もこれで終わりにするよ

骸の結界が解けていく

樺涅:先生!

骸:血箱の呪いか

遍外:神を宿している割にはこんなものか
   さぁ、椿
   残りは僕が、いただこうじゃないか

椿:カッ…ハッ

吐血を繰り返す椿

遍外:椿

椿:ハァ…ハァ…
  終わりました……

遍外:よし、じゃあ食べようか

鬼姫:『おいおい、一声だと?』

遍外:キミが温羅か
   どう?キミも一杯飲むかい?

鬼姫:『あー、俺と姫なら大丈夫な気がするが
   やめておく、それは忌物だ』

椿:身体の中から燃える感覚と内臓を幾つか
  本来の呪いでは血を吸う筈ですが、それはないです

樺涅:違う
   アナタの中の血液が沸騰したの
   燃える感覚はそれ
   この程度って言葉で済ますには危険

遍外:いいや、私にとってはこの程度なんだよ
   さぁ、食べよう

そう言い、血箱の中身を全てその腹におさめる
しかし、何も起こらない

遍外:……あぁ、ああ、これは素晴らしい…
   ご馳走様

骸:その左腕かな

遍外:フフ、それは秘密だよ

鬼姫:ふぅ、なんか疲れた
   私に害ないから今回はいいけど

樺涅:先生、後で色々教えて

骸:カバネ、言える事は少ないよ

樺涅:むー…

椿:では、帰りましょう
  いい手土産も依頼も達成しました

骸:うん、僕にとっては最高のものだった

鬼姫:温羅、後で話そう
   うん、私ももう少し知る必要がありそう

骸:遍外

遍外:いや、いずれだろうそれは
   うん?なぜ読ませた?

骸:ハハ!こうすれば口が滑ると思ってね

遍外:……あー…本当だ
   私の悪い癖だよ、全く

骸:僕たちも帰ろうかカバネ

樺涅:うん、先生

鬼姫:骸、また来るから

骸:あぁ、解った

椿:帰りますよ、遍外

遍外:……今回の血箱
   その抜け殻はあげるよ

骸:……いいのかい?

遍外:はんぶんこ、だ

骸:随分取られたみたいだけどね

遍外:じゃあ、おまけだ
   骸、僕はね

一瞬で骸の側により、耳元で…

骸:……ッ!

遍外:じゃあね

骸:…あぁ、また



後日



樺涅:私の蒐集には使え無さそう

骸:遍外のことかい?

樺涅:あれから少し考えてみたけど
   私とは違いすぎるから

骸:…そうだね


あの日ーー


遍外:骸、僕はね


遍外:魔王を食べているよ



その言葉を思い出す骸

骸:本当、怪異って面白いね全く
  フフ、アハハ!益々…


骸:蒐めたくなっちゃうじゃないか…!


喰 終


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普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

意味が分かると、分からないと怖い話【体験談+】

緑川
ホラー
ショートショートの寄せ集め。 幻想的から現実味溢れるものなど様々、存在。 出来の良し悪しについては格差あるので悪しからず。

女子切腹同好会

しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。 はたして、彼女の行き着く先は・・・。 この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。 また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。 マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。 世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

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