オサキ怪異相談所

てくす

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零章

祓花 ③

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骸:いや、とある地区の話でね
  山と言うには低すぎるんだけど
   甲斐那かいな山と、呼ばれている山が
  その地区には存在していて
  その中腹くらいに、抜け道があるんだ
  その抜け道を進むと、一つ小さな鳥居がある
  人が通れる訳がない鳥居がね
  あれは、人用じゃないと思うよ
  だから、それを右側から通るとその先に

槐:えっと……オサキ
  この方は一体?

尾先:言ったろ?面白いものを見せるってな

骸:あぁ、僕としたことが
  オサキから話を聞いて、少し興奮していたよ
  僕は骸…あぁ
  これはあだ名であり、ハンドルネームであり
  二つ名だったり、通り名だったり、異名と
  まぁそんなもんだよ

尾先:何色に見える?

槐:……正直、解らない

尾先:解らない?

槐:この色を、私は知らない

尾先:……そうか

骸:キミの目、興味があるんだ
  霊を色で認識するんだって?
  フフ、僕も目に関する力を持っていてね
  お揃いだ

槐:遠慮したいな、お揃いというのは
  得体が知れない

骸:知られては困るんだけどね
  さて、話の続き
  そこに、一つの祠がある
  それが結構周りが荒れててね
  多分、誰も手をつけてないんじゃないかな
  で、噂はこの後
  ある時間になると、その祠の前に
  『腕』が現れるらしい

槐:腕?

骸:その腕には花が持たれていて
  その花は、その腕を見た者の
  運命を決めているらしい

尾先:それで?

骸:うん、多分
  あれは神の類だよ

尾先:神、か
   祠に祀られた神か何か……か

骸:残念、祠は関係ないね
  関係があるのは鳥居

槐:人が通れない鳥居……だったね

骸:簡単に言えば、鳥居は分断だね
  人は通れないが、人が通れる

尾先:おいおい……頓知比べか?

骸:僕たちは、何?人?それとも……怪異?

尾先:魂の通り道か

骸:流石だね

槐:なんだ、それは?
  魂の通り道?

尾先:一種の幽体離脱現象
   右を通る意味は解らんが
   右の肉体と鳥居を通る魂
   二つに分断される

骸:神はその魂を認知し、運命を決める
  ハハっ、人が最も信頼できる占いだ
  なんせ、魂なんて偽ることができないから

槐:そんなモノが存在する……
  いや、神ならそれもできる……?

骸:さて、僕からも面白いものを見せよう
  長旅になるからそのつもりでね

槐:……私は、大丈夫だろうか

尾先:まぁ……アイツがいれば
   ……これを渡しておく

槐:これは?

尾先:狐の霊体が入っている
   名は聞くな

槐:……有り難く使わせてもらうよ


【間】


槐:本当にあるんだな…
  いや、疑っていた訳ではないけれど

尾先:甲斐那山……カイナ、か
   偶然にしては出来過ぎだな

骸:名は力を持つから
  名前が先で、それになぞられ生まれた
  そんな神かもしれないね

槐:人の信仰を得るために
  あえて人に目線を落とす
  傲慢ではなく、策略的に

骸:人智を超える、と言っても
  信仰を得ない神は、神ではなくなる
  噂レベルでも信じる人がいれば
  神としての威厳は保たれるワケだ

槐:悪いものではない、と

尾先:神にそんな基準はないだろうな

槐:今まで心霊に関してはある程度調べ
  関わりも得たが……神様、か
  宗教や地域信仰も調べてはいるが
  出会うのは初めてだよ

骸:本当に会えると信じてるの?

槐:勘、かな……これは
  君がいる事で余計に、ね

骸:はは、それは面白い言い方だね

槐:君は……人なのか?

骸:さぁ、どうだろう

尾先:無駄話はそれまでだ
   行くぞ

【間】


槐:無駄話、か

尾先:あぁ、言葉の意味そのまま
   無駄な話だ

槐:全く……本当に全くそうだよ
  人か、霊か……いや、怪異と呼ぶべきか解らない

尾先:解らないから怖い
   その点で言えば怪異だろうが
   アイツは、人であって人じゃない

槐:鳥居の様だね

尾先:人は通れないが、人が通れるか
   確かにな

骸:さて、今回は依頼でもなければ
  みんなで除霊でもしようって話じゃない
  見学みたいなものだから
  自分の運命を見る覚悟はできてる?

尾先:あぁ

槐:……行こう

骸:フフ、何が出ても恨みっこなしだ

槐:鳥居の右側を通る、だったね

尾先:魂の通過は見えるのか?

骸:僕?視えると思うけど
  一応まだ、推測だからね

尾先:……じゃあ、俺から行く
   ……通ったぞ

骸:…………

槐:次は私か
  ……何か変化がある訳ではないみたい

骸:成程、其処に境界が
  と、すれば鳥居すら道具か
  ……うん、問題なく通れるね

尾先:視えたのか?

骸:どうやら、鳥居の右側が境界だね
  鳥居の正面には何もなかった
  右側に境界があって、其処を通ると
  正面に魂が移動していた
  ただ、分かりやすく説明すると
  移動したのはほんの僅か
  幽体離脱とも言えないし、影響も無い程度
  爪切りで切った爪みたいなもの
  元は身体にあったけど切り離しても問題ない

尾先:その認識が俺にはよく解らんが
   問題ないんだな

槐:それで、魂は何処に?

骸:先に行った
  神様の所じゃないかな?
  進もうか、二人とも

【間】


尾先:あれか
   何もいないな

骸:そこは領域
  関係が無いにしろ、祠の前まで行かなきゃ

尾先:律儀に守って流石だな

骸:一種の禁足地と捉えて構わないよ
  相手は神様だから

槐:ルールはあるのかな?

骸:いや、特にない
  無礼じゃなきゃ大丈夫

尾先:ある時間ってのは
   丑三つ時でいいんだな?

槐:この時間ならそうじゃないかな?

骸:流石にここから何時間も待たせないよ   
  さ、待ってようか

そして、時は進み

槐:っ…寒い……

骸:来るよ

尾先:これ……は…

骸:何が視える?

尾先:神……なのか?
   いや、クダの様子からして
   間違いはないだろうが

骸:花は視えるかい?

尾先:アスター、だな

骸:美しい思い出、または信じる恋?
  ハハっ、そんな訳ないよね

尾先:変化、追憶……追悼

骸:……近い将来、変化があって
  そして、キミの思い出が関係するのかな

尾先:……俺の、思い出……

骸:……キミはどうかな?

槐:ハァ……ハァ……
  これ、が…神、だと?
  確かに、これは……

骸:何が視えている?

槐:複雑、なんだ
  君を見た時の様な……複雑な色…
  それで、解る
  君は、一体……

骸:残念ながら、僕は神様じゃない
  キミの運命はどうなのかな

槐:……マンサク
  霊感、呪文、か

骸:キミに霊感は無いんだったね
  もしかしたら、色以上に視えるようになるのかな

槐:悪い意味で捉えればの話だけど
  幸福の再来でもある

骸:幸福、ね

尾先:『葛葉』

槐:っ!?尾先!?

尾先:骸の番だ
   結界の中にいてくれ
   俺もクダに守られている

槐:……なるほど

骸:残念ながら
  僕に贈る花は無いそうだよ
  何も持ってない、けど
  降魔印か

尾先:釈迦如来印!?どういうことだ?

骸:さぁ?僕の事を悪霊とでも勘違いしてるのかな
  別にキミたちの結界に対してじゃないし
  あんまり居座ると影響でそうだね
  花は贈られないけど、退魔の印を組まれるなんて
  フフ、少しだけ楽しめたよ

槐:結界の色が変わった!

尾先:チッ、俺らにも影響が出だしたぞ

骸:観察はできた
  帰ろうか


【間】


槐:あながち、間違いではなさそうだよ

尾先:運命か?

槐:結界の色まで認識してしまったし
  骸や神様の色も見ているわけだ

骸:学者として、良い勉強になったかな?

槐:……学者としては
  何と言っていいか迷うところだね

尾先:アレはあのままなのか?

骸:怪異ならまだしも、一応神だからね
  今の所、放置で構わないかな
  噂が出回れば人も訪れる
  それが信仰になって格も穢れも失わない

尾先:そうか

骸:さて、運命を決めるのは自分次第とも言う
  キミたちの運命はどうなるだろうね

尾先:それが解れば苦労はしない
   今日のことは占いだろ?
   信じるも信じないも
   それこそ、自分次第だ

槐:そうだね、それが一番だよ

骸:はは、人らしい答えだ
  じゃ、僕はこれで

尾先:あぁ、俺たちも帰ろう

槐:本当、君といると退屈しなさそうだよ    
  退屈というより、命が幾つあっても足りない気もする

尾先:怪異に関わるなら常にそうだよ
   それでもお前は続けるんだろ?
   学者としても、槐としても

槐:あぁ、それは変わらないかもね
  じゃあね、尾先
  私も帰るとするよ

尾先:あぁ、またな

槐:運命は自分次第、か
  ……だけど、確実に私の目は
  変わりつつあるようだよ、尾先




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