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「そう急くでない、我が総大将のうちは息災であれよ、貴様に先立たれてはつまらぬゆえな」
誰よりも付き合いが長く、互いに己の世界を守るため努めてきた。
実力を認めているだけに食えない奴だと警戒はしてきたが、嫌い合っているわけではない。
双方の理念を尊重し、適度な距離を保ってきた二人には細くも確かな絆があるのだ。
「……まったく、無茶を言いますよ」
幼い日と変わらない残月の誇らしげな瞳と笑み。
これだからあやかしを嫌いになれなかったのだと、業華は目尻をしならせた後、困ったように微笑み返した。
正反対に見えてどこか似ている二人を夢穂は不思議な気持ちで眺めていたが、今は他に言うべきことがあると思い直した。
「ちょっと残月、さすがに毎日は来すぎじゃない? 今日こそは食事のお代、きっちりいただきますからね」
夢穂は怪訝な顔で指を差しながら、口を酸っぱくして言った。
頻繁にやって来てはただ飯を食らうあやかしたちに、細々と暮らしている兄妹の家計は風前の灯火だったので仕方がない。
しかし残月は、そんな夢穂の注意を待っていたかのようにほくそ笑んだ。
「安心せよ、この残月、受けた恩は今生忘れぬ」
その台詞が合図となり、すらりと襖が開く。
かと思うと、外から入ってきた黒い影が居間中を飛び回り、気づいた時には全員の食事台におにぎりが行き渡っていた。
機械が作ったのではないかと疑うほど、寸分足らず同じ形をした三角のおにぎりたち。
「残月様、ご所望の品、ただいまお持ちいたしました。純金百パーセントの握り飯にございます」
食事台にピラミッドのように山積みにされた輝きは、金箔を巻いた白米かと思いきや、おにぎりの形をした金塊だった。
誰よりも付き合いが長く、互いに己の世界を守るため努めてきた。
実力を認めているだけに食えない奴だと警戒はしてきたが、嫌い合っているわけではない。
双方の理念を尊重し、適度な距離を保ってきた二人には細くも確かな絆があるのだ。
「……まったく、無茶を言いますよ」
幼い日と変わらない残月の誇らしげな瞳と笑み。
これだからあやかしを嫌いになれなかったのだと、業華は目尻をしならせた後、困ったように微笑み返した。
正反対に見えてどこか似ている二人を夢穂は不思議な気持ちで眺めていたが、今は他に言うべきことがあると思い直した。
「ちょっと残月、さすがに毎日は来すぎじゃない? 今日こそは食事のお代、きっちりいただきますからね」
夢穂は怪訝な顔で指を差しながら、口を酸っぱくして言った。
頻繁にやって来てはただ飯を食らうあやかしたちに、細々と暮らしている兄妹の家計は風前の灯火だったので仕方がない。
しかし残月は、そんな夢穂の注意を待っていたかのようにほくそ笑んだ。
「安心せよ、この残月、受けた恩は今生忘れぬ」
その台詞が合図となり、すらりと襖が開く。
かと思うと、外から入ってきた黒い影が居間中を飛び回り、気づいた時には全員の食事台におにぎりが行き渡っていた。
機械が作ったのではないかと疑うほど、寸分足らず同じ形をした三角のおにぎりたち。
「残月様、ご所望の品、ただいまお持ちいたしました。純金百パーセントの握り飯にございます」
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