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奇妙な仲間たち

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「猫宮さんと部長には、私には見えないものが見えてるってことですか?」
「そうだとも。けっこう奥まで、わしが見る限り満席だ」
「――え……ええっ!?」

 知らないうちにたくさんの人の中にいたなんて、マジックミラーに囲まれているような気になり急に落ち着かなくなる。
 抱えた頭を右往左往させる私に、猫宮さんはプーッとはっきり音が聞こえるほど吹き出した。
 
「だ、大丈夫だよ、周りからもちづちゃんの姿は見えないから」
「へっ、そ、そうなんですかっ?」
「言ったでしょ、気持ちが大事って」

 そう答えている間も猫宮さんは右手で口を、左手で片腹を押さえていた。
 よほど私の動作が間抜けだったのか、それにしても笑いすぎではないだろうか。私にこんなに人を笑わせるだけの要素があることに驚く。猫宮さんのツボはよくわからない。
 一頻り声を弾ませた彼は、息を整え私に向き直る。
 そしてその流れのまま「はい」と、右手を私の前に差し出したのだ。
 猫宮さんの意図が汲み取れない私は、目を丸くして首を傾げるしかできない。
 緋色のゆったりとした袖口から伸びる腕は、ほっそりとして透き通るように白い。けれど、うっすら浮かび上がった血管や骨、筋や肉のつき方が彼の性別を物語っていた。
 ぼんやりする私。
 だから猫宮さんの手は宙ぶらりんに放置されたまま。

「こういうことだよ?」

 それ以上は、言わずとも彼が伝えたいことがわかった。
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