猫の罪深い料理店~迷子さんの拠り所~

碧野葉菜

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奇妙な仲間たち

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 どれだけ相手が手を差し伸べてくれても、自分が手を伸ばさなければ、繋がることはない。
 それを猫宮さんは、行動で示したのだ。

「……相手がオーケーでも、私が認めなければ見えないままってことですね」
「うん。記憶のお土産だってそのためだからね。一度この店に来るきっかけはあっても、そのあと続けるかはその人次第」

 そうか。だから昨日帰る時、牛坐さんが「少しでも興味があるなら」って持ち帰りを薦めていたんだ。
 この店に継続して通えるか否かの分岐点。記憶を拒否したもう一方の道を想像して、ゾクリと肌が冷えるのを感じた。

「ちづちゃんって本当、反応が素直で可愛いね」
「――かっ……ガワッ……!?」

 向けられた記憶がない言葉に、自分でも聞いたことのないダミ声が漏れる。
 
「イヤッ、そ、そゆことはあまり言わない方がっ」
「大丈夫だよ、聞きたくないことは聞こえないから」

 私が言いたかったのは、そういう甘い台詞は誰にでも言っちゃダメですよ、ということだ。
 それを猫宮さんは、他のお客様に聞こえたらいい気がしないでしょう、という意味で受け取ったらしい。
 目と同じく、耳までも……ここでは五感すべてが自身の深層心理に基づいているようだ。
 猫宮さんがずっと自分に向けて接客しているように見えるのも、他のお客様の存在をまだ容認できていないせいか。
 見たくないもの、聞きたくないこと、全部取り除かれて提供される極上空間。
 なんて都合のいい、人をダメにする店なのだろう。
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