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奇妙な仲間たち

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「確かに猫宮くんと話してると隅田川くんが穏やかに見えるね」
「部長だって」
「わしはいつもと変わらないぞ」
「私だって変わりませんよ」
「まあまあ、二人とも」

 謎の小競り合いを始める私たちを、困ったように笑う猫宮さんが宥めに入った時だった。

「ここに来た者は皆、猫宮に絆されるからな」
「猫宮ならでわのおもてなしでちからね」

 低音の美声と幼児の高い声。
 細めた目を徐々に移動させると、部長の反対、私の左側に予想通りの姿を確認する。
 いきなりパーソナルスペースに飛び込んでくる、大胆不敵な和服の二人組。

「……で、出た」
「出たとはなんだ、この色男を幽霊のように扱うとは失敬な」
「そうでちよ、牛坐が一番カッコイイんでちから」

 丑年の白を基調とした着物の肩に乗り、銀色の三つ編みをした子年が宣う。
 昨夜と同じ組み合わせでの再会。
 牛とネズミって仲がいいのだろうか。
 干支の順番は近かったはずだけれど、それが関係しているとか?

「そんなに警戒するな、今日は練乳抜きだから酔いはしない。渋くブルーマウンテンで決めているからな」
「単なるコーヒー牛乳だけどね」

 腕を組んでカッコをつける牛坐さんの前には、泡茶色の飲み物が入った牛乳瓶が置かれていた。
 銭湯のあと売店で買う、あれとまったく同じやつだ。それをそのまま出すなんて、牛坐さんに対して手抜きをしているように感じる。
 とはいえコーヒー牛乳は美味しそうだ。
 あの時、手が出なかったから、なおさらそう見えるのかもしれない。
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