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お礼

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「急いだ瓜坊が壁に激突した時、門木が心配して声をかけてやったからな。そこから奴らの友情は続いている」

 キッチンに立つ牛坐さんは、まな板の上で包丁を動かしながら淡々と説明する。
 そのすぐそばのキッチン台にお尻を乗せた子々子ちゃんは、牛坐さんの言葉に頷きながら横顔を眺めていた。
 さすが十二支の一番手と二番手。神様との待ち合わせ場所で起こったことはすべて把握しているらしい。
 
「瓜坊がどうしてもって言うから来てやっただけだ。まあ、猫さんには何度もタダ飯もらってるしな」
「んなこと言って、宮さんリスペクトしまくってるくせに。ピアスも宮さんの影響だろ」

 犬斗くんの指摘に門木くんは「そ、そんなんじゃねえよ!」とわかりやすく狼狽えた。図星なのは明白だったが、猫宮さんは鈴のピアスが一つだけ。がんばってつけすぎだと思う。

「んで、そのカジュアルな雰囲気は俺っぽいよなぁ、おまけに最近ミーチューブ始めたらしいじゃん?」

 門木くんの目にさらなる焦りが生じる。
 犬斗くんは彼のことをよく心得ているようだ。

「こないだまでボクサー志望って言ってなかった? その前は小料理屋か銀行員始めようとか」
「門ちゃんったら、相変わらず人の真似をするのが好きなのね」
「ただの猿真似だろうが、個性のねえ奴」

 犬斗くんに続き、卯瑠香さんや繁寅さんにまで追い討ちをかけられ、門木くんは黙って部屋の片隅に縮こまってしまった。
 どうせ、どうせ俺なんて……と、ボソボソ口にしながら完全に塞ぎ込んでいる。
 なかなか自分探しの旅のゴールにたどり着かないようだ。
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