蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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仙界

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「その娘にも来てもらうぞ――仙界に。狐雲様がお待ちじゃ」

 有無を言わさぬ鷹海の強い口調に、不安気な表情を見せるいろり。蛇珀はそんな彼女を安心させようと手を握った。

「大丈夫だ。俺がついてる」
「蛇珀様……」
「一緒に来てくれるか? 神々の住処……俺が生まれた場所に」

 いろりは恐怖は感じなかったが、自分のような一介の人間が赴いていいものかと戸惑った。

「私なんかが、お伺いしてもよろしければ……」
「いろりなら大丈夫だ」

 蛇珀は自身の左手首にした翡翠色の数珠を、いろりのそこにつけた。
 
「俺の神力が込められてる。これがあればある程度の神圧じんあつには耐えられるはずだ」
「じん、あつ……?」
「仙界に流れてる空気のことだ。行くぞ。手を離すな」
「は、はいっ!」

 姿を消した鷹海を追い、蛇珀といろりもそこから消え去った。

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