蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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仙界

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 シャラン……と、蛇珀よりもやや重みのある鈴の音が鳴り、二人はその方向を振り返った。

 蛇珀は自身を制止したその声の主が、誰なのか理解していた。

「呑気なものじゃな。未熟者の小童こわっぱめが!」
 
 二人の前には黒髪に褐色の肌をした、体格のいい青年らしき者が立っていた。

 絹のように滑らかな漆黒の長い髪。高い位置で結われたそれは腰まであり、下ろせば腿まではあるかと思われた。
 その髪や肌に反し、色素の薄い藍玉色あいぎょくいろの瞳が実に神秘的である。

「……鷹海おうがい

 いろりは蛇珀と鷹海と呼ばれた者に、交互に視線を巡らせた。
 海色の狩衣に白い袴姿、蒼白い輝きを纏う、その出立ちに間違いなく人ではないと悟った。

「なぜわしが迎えに来たか、心当たりはあるじゃろ」

 にじり寄る鷹海に、蛇珀はいろりを庇うように前に出ていた。


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