蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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仙界

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「わかりました。お答えいただきありがとうございます」
『……待てると申すか? 帰って来ぬかもしれぬのだぞ』
「その時は蛇珀様を想いながら朽ちます。待たせていただけるだけでも……光栄です。感謝いたします」

 この禍々しき空気に反し、いろりの迷いない返答は実に清々しかった。

『東城いろり……また会う日を待っておるぞ。……次は天神の姿にて』

 その言葉を最後に、巨山は姿を消し、天は澄みきり、仙界は嘘のように凛とした静寂を取り戻した。

「もう立ってもよいぞ」

 狐雲の手を借り、いろりはその場に立ち上がった。

「しかしあいつもバカじゃな」
「鷹海様……?」
「貴様の罪まで被ると言って、自ら苦行を増やしよったのじゃ」

 鷹海は驚くいろりの額に手を当て、ある映像を流して見せた。
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