蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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仙界

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「あ、え、ええと、その、こ、心を読まれたのですか……!?」
「読まずともわかる。蛇珀が煩悩に負け、天獄様の許しなく神の身体でそなたと睦み合おうものなら、たちまち神力でそなたは絶命し、神の聖域を侵した蛇珀は露となり消えるところであった。……あやつの鬼のような理性に感謝するのだな。そなたを大切に扱いたいという想いあっての忍耐である」

 神は人間のように欲や刺激に慣れていない。そのため女に好意を抱こうものなら、人間の男の倍は強く誘惑を感じる。
 いろりを想う故、肉体の快楽に身を投じなかった蛇珀の精神力は並大抵ではなかった。
 
 いろりは何も考えずに蛇珀の側に寄り添っていた自身を恥じ、そして心から感謝した。

「は、はいっ……」

 そしてふと、あの話がまた頭に浮かぶ。

「あの、三百年前に戦神様が消えられたというのは、もしかしてそれが原因で……?」
「蛇珀に聞いたか。……いや、あやつはそこまでは通過できたのだがな」
『狐雲、そこまでである。神と人の恋路を手助けするような言葉が禁じられておるのは、主が一番わかっておろう。破ろうものなら主とてただでは済まぬぞ』
「心得ております」

 天獄の言葉に、いろりはやはり、狐雲も人との恋愛を経験したのだと確信した。

「天獄様、あ、あの、恐れながら、お伺いしてもよろしいでしょうか?」
『許す。申してみよ』
「ありがとうございます。蛇珀様は……いつまで、苦行に耐えなければ、ならないのでしょうか……?」
『それは蛇珀次第。十年かもしれぬが、百年かもしれぬ。また、途中で力尽きれば露となり、二度と逢えぬこともあろう』

 嘘である。
 これは試練の一つ。
 本当は人の年月にして最大一年の期限が設けられている。
 人はいつまでと明確な時を決められればそれを希望に生きることができる。
 しかしいつまでかわからないとなると、途端絶望する。
 その先の見えない状況の中、いかにいろりが蛇珀を想い待てるのか。天獄はそれを見ている。
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