薔薇の耽血(バラのたんけつ)

碧野葉菜

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あふれる想い

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「う、うわあああ、す、すごいっ……! 本当に美汪ってなんでもできるんだね!?」
「飽きもせずよくそんなリアクションが取れるね」

 美汪はそう言いながら、手にした厚みのある本を穏花に差し出した。

「これは、何?」
「本当の歴史を記した書物だよ。主に僕ら吸血族のことについて書いてある。話好きのコーエンからもういろいろと聞いてはいるだろうけど、興味があるなら読んでみたら。それは日本語で書かれたやつだから……ああ、当然口外禁止の極秘資料だからね、クローゼットの奥にでもしまっておくんだね」
「えっ!? そ、そんな大事なもの私なんかに、いいの?」
「……いらないなら」
「いる! いります! 読まさせていただきます!!」
「まあ……君なら誰にも言わないだろうし」

 気のせいだろうか?
 美汪が少し気まずそうに目を逸らしたのは。
 先ほどの笑顔といい、たった今、大切にしている本を進んで貸してくれたことといい……もしかして美汪は、自分のことを嫌っていない? むしろ友好的に接してくれているのではないか? と、穏花の中で淡い期待が芽吹く。

「……僕の顔に何かついてる?」
「えっ!? あ、うううん!」

 無意識に美汪の横顔を見つめていた穏花は、指摘されると本を抱えたまま慌てふためいた。

「あ、な、なんていうか、美汪ってき、綺麗な顔してるよねぇ!? と思って、あはは!」
「……はあ? 鏡なんか滅多に見ないから知らないけど」
「そ、そうなんだ!? みちるも美人だけど、また系統が違うかなぁなんて、そうそう、圭太とはまったく違うよね!?」

 この気持ちを誤魔化そうと必死に並べた無駄口が、穏花自身を追い詰める墓穴を掘ることとなる。
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