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友達以上愛人未満4
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友達だから食事をする。
恋人だから食事をする。
家族だから食事をする。
赤の他人と食事をするのは少し気が重い。
ただ、赤の他人が、一番近い人になり得るかもしれないからこの時間を楽しむのだ。
小夜子は、メニュー表を見るや否や私達に好みを聞くこともなく一番高いものを注文した。
小夜子と私はノンアルコールワインを、ツバメクンと近藤さんは赤ワインのボトルを注文した。
小夜子もツバメクンも客商売だけあって話題も豊富、私達を楽しませてくれた。小夜子は本当は近藤さんのことが気になって仕方ないとは思うけれど、根掘り葉掘り聞くことはしなかった。
心地よい時間が過ぎた。
デザートが出された時点ではすっかり打ち解けた感じで、近藤さんは小夜子のことはサヨさんと、私のことはユキさんと呼んでいた。
ツバメクンは、小林一郎という名前らしく彼のことは一郎クンと呼んでいた。
「お腹いっぱい!私と一郎は一緒に帰るわ。」
小夜子は酔ってもいないのに彼にしなだれるように寄り掛った。女の私でもドキドキした。続けて小夜子はこう言った。
「近藤さん、奢ったんだから私のために働いてくれない?ユキを送って行って。そして、ユキの体ほぐして上げてくれない?」
すごく色っぽい声で微笑みながら。
「何言ってるのー」
と、私が甲高い声を上げるのと同時に彼は、
「任せてください。」
彼らしくない大きな声で笑いながら答えた。
小夜子は、すでにタクシーを呼んでいた。私が逃げ出さないように私の家を指定していた。
酔っている近藤さんは私により掛かるように乗り込み、私の自宅まで一緒に向かった。10分程度の道のりだが、近藤さんは動いた瞬間、寝息をたてていた。私が降りたら、彼もこのまま帰ればよい。家はここから10分程度の公園の近くのマンションだと聞いていた。
「着きましたよ。降りますね。」
私が降りると、寝ぼけながらでも共に降りてきた。
タクシーは迷惑そうに立ち去った後、彼はこう言った。
「飲み過ぎた、お水貰えない?」
「・・・」
「駄目?」
と言って座り込もうとするから、
「どうぞ上がって、近所の目があるから」
私の家は角だから、目立ちはしないけれど。やはり近所の目が気になって。
「お水どうぞ。」
「ありがとう。」
うん?普通の声。何なのこの人!
水を一気に飲んで私を見つめた。
「ユキさん。サヨさんに頼まれたこと実行しないと。」
「何言ってるの!頭おかしいんじゃない。」
「ははは、冗談だよ。」
「・・・」
私は大声をあげた自分が恥ずかしくなって、言葉がでなくなってしまった。私を相手にする男がいるわけ無いのに。何意識してるんだろって、我に返った。
「コーヒー飲みます?」
「いいの?まだ居ても。」
いつの間にか、タメ口になっていて、私もタメ口で答えた。
「いいよ。淹れるわ。」
コーヒーを飲みながら、世間話に花が咲いた。
私は就職活動の話をして浩二の提案について相談した。彼はチャレンジしたほうが良いとアドバイスしてくれた。
「いきなり教師ってことじゃなく、サポートだろ。やってみたらどう。」
「でもその先生が休んだらって思うと不安で。」
「心の病ってさ、安心材料出来たらその先生も休まないようになるかもしれないし。」
「そんな単純なものかな?」
「そのうち、教師したくなるかも。」
「そうだよねー、その気になったりして」
「嫌ならすぐに辞めたら?市役所のバイトも聞いてみるよ。あっ、バイトっていえば桜井サンところ、バイト辞めたそうだよ。」
「そう。」
「そこは勧めない。」
「どうして?」
「店長がエロい」
「言えてる。近藤さん、もしかして被害者?」
「えっ、ユキさんも? マジ、あのエロ親父」
「本人は人間好きって豪語しているけど」
私と近藤さんは共に笑った。
ますます、夜も更けていく。時計をチラリっと見る彼を返したくない気持ちが増し続けて、私は一生懸命話しかけていた。
一瞬の会話の間が空いてた。
「帰るよ。酔いも冷めたし。」
「そう、泊まれば良かったのに。」
私は自然に冗談ぽく言えた。続けて自然に微笑んだ。
「じゃあ、泊まるよ。何もしないよ。」
と言ってリビングのソファーで寝そべった。
「おいでよ。隣に。」
大人一人が寝そべるくらいのソファーに二人で体を寄り添い目を閉じた。
彼の手が私の頬を撫でる。その手が優し過ぎて溶けてしまいそうだった。
彼の唇を私の指が確認した。私は自分がどんどん高揚して大胆になっていた。彼の唇を私自身が塞いだ。
彼の唇からお酒の匂いがしたので、私は酔ってしまった。私は酔っている。今の私はいつもの私ではない。そう言い聞かせて、彼の手が私の体を這う事を許していた。
そのうち、彼の唇が私の体を開かせていた。
恋人だから食事をする。
家族だから食事をする。
赤の他人と食事をするのは少し気が重い。
ただ、赤の他人が、一番近い人になり得るかもしれないからこの時間を楽しむのだ。
小夜子は、メニュー表を見るや否や私達に好みを聞くこともなく一番高いものを注文した。
小夜子と私はノンアルコールワインを、ツバメクンと近藤さんは赤ワインのボトルを注文した。
小夜子もツバメクンも客商売だけあって話題も豊富、私達を楽しませてくれた。小夜子は本当は近藤さんのことが気になって仕方ないとは思うけれど、根掘り葉掘り聞くことはしなかった。
心地よい時間が過ぎた。
デザートが出された時点ではすっかり打ち解けた感じで、近藤さんは小夜子のことはサヨさんと、私のことはユキさんと呼んでいた。
ツバメクンは、小林一郎という名前らしく彼のことは一郎クンと呼んでいた。
「お腹いっぱい!私と一郎は一緒に帰るわ。」
小夜子は酔ってもいないのに彼にしなだれるように寄り掛った。女の私でもドキドキした。続けて小夜子はこう言った。
「近藤さん、奢ったんだから私のために働いてくれない?ユキを送って行って。そして、ユキの体ほぐして上げてくれない?」
すごく色っぽい声で微笑みながら。
「何言ってるのー」
と、私が甲高い声を上げるのと同時に彼は、
「任せてください。」
彼らしくない大きな声で笑いながら答えた。
小夜子は、すでにタクシーを呼んでいた。私が逃げ出さないように私の家を指定していた。
酔っている近藤さんは私により掛かるように乗り込み、私の自宅まで一緒に向かった。10分程度の道のりだが、近藤さんは動いた瞬間、寝息をたてていた。私が降りたら、彼もこのまま帰ればよい。家はここから10分程度の公園の近くのマンションだと聞いていた。
「着きましたよ。降りますね。」
私が降りると、寝ぼけながらでも共に降りてきた。
タクシーは迷惑そうに立ち去った後、彼はこう言った。
「飲み過ぎた、お水貰えない?」
「・・・」
「駄目?」
と言って座り込もうとするから、
「どうぞ上がって、近所の目があるから」
私の家は角だから、目立ちはしないけれど。やはり近所の目が気になって。
「お水どうぞ。」
「ありがとう。」
うん?普通の声。何なのこの人!
水を一気に飲んで私を見つめた。
「ユキさん。サヨさんに頼まれたこと実行しないと。」
「何言ってるの!頭おかしいんじゃない。」
「ははは、冗談だよ。」
「・・・」
私は大声をあげた自分が恥ずかしくなって、言葉がでなくなってしまった。私を相手にする男がいるわけ無いのに。何意識してるんだろって、我に返った。
「コーヒー飲みます?」
「いいの?まだ居ても。」
いつの間にか、タメ口になっていて、私もタメ口で答えた。
「いいよ。淹れるわ。」
コーヒーを飲みながら、世間話に花が咲いた。
私は就職活動の話をして浩二の提案について相談した。彼はチャレンジしたほうが良いとアドバイスしてくれた。
「いきなり教師ってことじゃなく、サポートだろ。やってみたらどう。」
「でもその先生が休んだらって思うと不安で。」
「心の病ってさ、安心材料出来たらその先生も休まないようになるかもしれないし。」
「そんな単純なものかな?」
「そのうち、教師したくなるかも。」
「そうだよねー、その気になったりして」
「嫌ならすぐに辞めたら?市役所のバイトも聞いてみるよ。あっ、バイトっていえば桜井サンところ、バイト辞めたそうだよ。」
「そう。」
「そこは勧めない。」
「どうして?」
「店長がエロい」
「言えてる。近藤さん、もしかして被害者?」
「えっ、ユキさんも? マジ、あのエロ親父」
「本人は人間好きって豪語しているけど」
私と近藤さんは共に笑った。
ますます、夜も更けていく。時計をチラリっと見る彼を返したくない気持ちが増し続けて、私は一生懸命話しかけていた。
一瞬の会話の間が空いてた。
「帰るよ。酔いも冷めたし。」
「そう、泊まれば良かったのに。」
私は自然に冗談ぽく言えた。続けて自然に微笑んだ。
「じゃあ、泊まるよ。何もしないよ。」
と言ってリビングのソファーで寝そべった。
「おいでよ。隣に。」
大人一人が寝そべるくらいのソファーに二人で体を寄り添い目を閉じた。
彼の手が私の頬を撫でる。その手が優し過ぎて溶けてしまいそうだった。
彼の唇を私の指が確認した。私は自分がどんどん高揚して大胆になっていた。彼の唇を私自身が塞いだ。
彼の唇からお酒の匂いがしたので、私は酔ってしまった。私は酔っている。今の私はいつもの私ではない。そう言い聞かせて、彼の手が私の体を這う事を許していた。
そのうち、彼の唇が私の体を開かせていた。
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