枯れる前に

みよし

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友達以上愛人未満3

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「いらっしゃい。肌も髪も酷いわね。でも、すぐに綺麗にするわ。まずは肌から。こっちにどうぞ。」
 小夜子に言われるがまま、後ろを着いていく。
 担当の子に変わって、私はベッドに仰向けに寝転んだ。まずはエステ。顔をマッサージされることは気持ちが良い。何年ぶりだろ?
「おでこの傷、触っても大丈夫ですか?」
 優しい声で聞いてくれた。
「大丈夫。傷の痛みはないので。」
 心地よい声で優しく話しかけてくれる。
 何気ない世間話。
 私は口が開けないので、微笑むだけだった。
 気がついたら30分程度だがぐっすり眠ってしまった。
 一通りの施術が終了して、大きな鏡の前に移動をするよう促された。温かいハーブティーが出されて、一口頂いた。癖のある香りと味にハマってしまいそう。潤いたっぷりのローションをつけてもらい、素早く薄化粧してもらった。眉や顔そりも合わせて。
 人は手入れすれば本当に変わる。
 薄化粧なのに、シミやそばかすは、きちんも隠されていた。
「次は髪よ。」
「はい。」
 美容師の彼は優しく髪を整えてくれた。
「どうしましょう?希望の髪型はありますか?」
 ヘアカタログを見せてくれた。
 軽くパーマをあてようかとも思ったが、とりあえず切り揃えてもらう程度にしておいた。
 後は、オマカセ。
 美容師の彼は、
「サヨさんの友達は、僕の友達です。任せて。」
 と。
 ピーンときた。
「あなた、サヨの今カレね。」
「はっきり言って若いツバメです。」
「自分でいう?」
 ツバメちゃんは、手際よく切り揃えてくれて、カラーをしてくれた。
 今までより少し明るい色で。
 洗髪の後、綺麗にブローしてくれて、私はすごくさっぱりした気持ちになった。
     すべての工程が終了した時点で、小夜子が私を呼びに来た。
 店の裏に10畳程度の部屋があった。
 表の華やかな雰囲気とは全く違う質素な事務所。小夜子は本当に経営者なんだなーと感心した。
「コーヒーでいい?」
「うん」
「どうぞ」
 コーヒーは決して美味しいものではなかったが、なんとなくホッとした。
「ありがとう。綺麗にしてもらって。」
「お見舞いに行けなかったから。快気祝いよ。ついでに、これからはうちの美容室使ってよ。」
「ええ、ツバメクン指名するわ。」
「よろしく。一番人気だから予約は早めにね。」
「いつからなの?カレと。」
「1年程度。」
「羨ましい。」
「ウワッ、ついにユキもそんな気になった?あんな最低な旦那捨てちゃいなよ。まー、居ても居なくても同じだから好きな事したら?もちろん恋愛も。」
「無理無理、したくても相手いないよー」
「そこ?普通は、しないよーでしょ。何かあった?」
 私は今回の事故の話をした。3週間弱の入院で夫が顔を出したのは2日。うち1日は私の事故の書類の確認と、加害者と保険会社との話合い。終われば私のところには5分もおらず地方に戻っていったこと。浩二に嫌味言われたことが頭にきて私のところには苦情のラインが届いたこと。私がついに終わったと悟ったことなど。小夜子は笑いながら言ってくれた。
「馬鹿を相手するだけ時間の無駄よ。人生の無駄!」
「ホントそうね。」
「私、もう店出るから、帰りご飯行かない?」
「ええ。」
 私は時計を見た。もうこんな時間!時計は5時半を指していた。
「実は、臨時収入あって少しリッチなの。駅前のステーキハウスいかない?奢るわ。」
「いいの?」
「もちろん。その代わり、ツバメ同伴でも良い?」
「いいよ。」
「ねえ、ユキ用に誰か声かける?多いほうが楽しいでしょ。帰り送る子も必要だし。それとも桜井ちゃん誘う?」
「店長はいいわ。浩二でも誘おうか?」
「やめてよ。真面目すぎて興醒めしちゃうわ。母校の教頭なんて。」
「あっ、一人だけ聞いても良い?」
 私は近藤さんにラインした。相談ラインは彼の既読スルー。迷惑かとも思ったけれど、今なら市役所も終業したところ。
(お疲れさまです。突然ですが、食事につきあってもらえませんか?)
 既読。送った瞬間だった。
(いいですよ。)
 既読。
(駅前でお待ちします。)
 既読。
(はい。)
 1分足らずの応答だった。小夜子は目を輝かせ、
「やるじゃん、誰それ?」
「事故の時に助けてくれた人。お礼のかわり。」
「ふーん。まぁ、今回は私の奢りだしお礼にはならないから、本当のお礼は改めてしなくっちゃねー」
「もう、サヨったら。」
「行こ。ユキの彼氏候補に会いにレッツゴー!」
 私はサヨの車に乗り込んだ。
 彼が待っているかもしれない駅前に向かって。
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