枯れる前に

みよし

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 あっという間に夏休みが終わり、2学期が始まった。私は野上先生の補助をこなしたことを評価され、正規採用された。
 これは明らかにコネ採用。松村浩二教頭先生による力であった。
 この学院は元々父の親族が経営していて、父も銀行時代、学院のために骨を折っていた。
 私も当然のようにこの学院に入学し、大学卒業後は母校に就職した。
 私と4つちがいの浩二は、私が、結婚退職後に私の代わりにこの学院にやってきた。
 浩二は、絵に書いたようなスポーツマンで小学校から野球を始め、高校入学時には野球の有名校からお誘いを頂くほど活躍していた。成績も優秀でS県立教育学部大学を卒業。何故か保健体育の教員資格を取得していた。親族から将来の経営者候補として強く望まれS学院に就職した。
 親族の期待通り頭角を現し、理事長の目に止まり孫娘の夫になることになった。
 浩二は、姉の私から見てもなかなかヤリ手の教頭だとは思う。
 そんな経緯もあってか、私の採用については何も言われることはなかった。私は、2年生の普通科を受け持つことが決まった。
 当面は野上先生の授業の進め方を踏襲することになった。新学年からは独り立ちしなくてはならない。野上先生は、私が授業している間に、他のクラスの準備などを行うため職員室での待機となった。彼の業務量の軽減と心のケアが本来の目的である。
 夫に正規採用の件を報告した。すると仕送り額変更の申し出があった。すごく事務的な言い分で笑えたが、申し出は却下した。
 世話するのが可愛い本物の猫ちゃんなら許すが、お喋りで強欲な物言う猫ちゃんの世話をする気はサラサラない。
 この家を渡すなら離婚しても良い。
 もう少し、自信がついたら協議しようとも思う。
 彼も出来て私は強くなったのかもしれない。
 今日は彼とデートだ。
 さっさと片付けて、スーパーでお弁当買おうか?それとも店長の店でパン買おうかな?
 そんな事を考えながら私は、明日の授業で使用するプリントを眺めていた。
    
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