金に紫、茶に翡翠。〜癒しが世界を変えていく〜

かなえ

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第三章

第二十話 王宮で新年会〜新しいお友達ができました。よろしくおねがいします。

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 今日は王宮での新年会だ。
 今までの新年会は大人ばかりだったが、王太子マグヌスが6歳になり学園に入学した。王族は学園生になると公の場に出席することになっている。いわば社交デビューだ。
 マグヌスが6歳になってから大きな行事がなかったので、この新年会が初めての公式参加となる。侍従ロイがマグヌスの服装の最終チェックをしている。
 今日のマグヌスは新年にふさわしく白を基調とした礼服だ。金の飾りがあちこちについている。
 「重い」
 気持ちも衣装も重かった。
 唯一の慰めは何人かの学友たちが来ていることだ。マグヌス参加に合わせ、マグヌスと近い家門の子どもが出席しているはずだ。子どもたちは昼間だけの参加なので半日頑張れば良い。夜はヴァジュラと遊んで癒されようと心を決めてマグヌスは会場入りした。

 「マード国王太子マグヌス・マード殿下、ご臨席です」
 マグヌスの入場と共に会場がワッと沸いたのがわかった。王妃主催のお茶会と違い大人の多さと圧に押されるが、ポーカーフェイスで手を振った。素早く会場を見回しユリアンとリゼルを探す。
 すぐに見つけられた。ユリアンとリゼルはリディラとリオンとルゼルと一緒にいた。子どもだけの塊なのにやたらと光っている…ように見えたからだ。
 リオンとルゼルは「幼稚園計画」を発表する流れで出席を促したと父王から聞いている。他にもリオンたちと同じくらいの「幼稚園入園候補」の子どもが20人程いるはずだ。学園生未満の子どもが出席する新年会は初めてで異例のことだが大人ばかりの集まりよりずっと気が楽だとマグヌスは思っている。

 一方、マグヌス入場の声を会場の隅で聞いたリオンたちは声のする方を見てマグヌスを見つけると喜んだ。
 「ルゼ!マグヌス殿下よ!きらきらよ!」
 「うん、うん。まぐぬす殿下しゅごくかっこいい」
 興奮のあまり二人は手を取って跳ねそうになった。だが今日は会場で跳ねたり回ったりパンプキンは禁止と言われている。
 「あっ。ぴょんは、だめでした」
 「あ。…あとでぱんぷきんしよね」
 
 二人のやりとりを見てユリアンたちは笑っていた。ユリアンたちはマグヌスの入場でやっと笑えるようになったのだ。マグヌスが来る前の会場は、ユリアンたちの入場で人々の視線が集中していて、うかつに笑える雰囲気ではなかった。
 のコーク公爵家とクイン侯爵家の子どもたちだ。この頃には上位貴族の間で両家の子どもたちがいかに美しく賢いか知らぬ者はなかった。だからこの新年会は子どもたちが出席することで前々から話題になっていた。そして初めて見る者たちは、やはりその存在に圧倒された。特にあの小さい次男たちに目が吸い寄せられるのだ。
 ユリアンたちはリオンたちを隠すように会場の隅に行き、父や母が挨拶を終わらせるのを待っていたのだ。
 リオンとルゼルがマグヌス評をしている間、ユリアン、リゼル、リディラは「やはり二人は目立ちすぎるな」「もう少し裾幅のあるドレスにすれば良かったわ。これでは一人しか隠せないもの」「いや、私としてはリディラも隠したい」リゼルは妹に集まる視線も心配だ。なんかバークレイとやたら目が合うのも気になる。
「早く母上だけでも戻ってくださらないかな」「こういう時のために早くリオンとルゼルのお友達を見つけなくてはね」
 三人はお茶会の後や、学園の参観日の後などそれぞれのリサーチした情報を持ち寄り会議を重ねていた。
 「今日は沢山子どもたちがいるから、実際リオンたちとの相性もわかりそうだよね」三人は頷いた。今日のミッションはそれだと目で合図し合う。

 国王夫妻が入場すると国王の新年の挨拶をもって新年会の開始となる。例年は国民に労いの言葉と国の発展を祈る言葉で終わるが、今日はそこに新しい計画の発表が加わっていた。
 「日々国民の文字に対する関心、各技術の進歩、復興に向けての新しい人材育成、それらを鑑み、国全体の教育の見直しが必要な時期と考えている。その一つとして試験的に初等学園入学前の年代が学べる機関の開設を計画している」
 会場が一斉に騒めく。
 「以下詳細はコーク宰相…」
 と王がアーネストを呼ぶ。
 「あ、父上!」
 「あ、でしゅ」
 リオンとルゼルはうっかり手を振りそうになるのを我慢した。父上はだ。
 宰相の説明で、幼児のモデルケースに学習指導をしたところ有効であることが認められたため、試験的に開設する運びになったこと。新しい機関は「幼稚園」と名づけること。初年度は少人数にするため対象児は上位貴族かつ園舎の建設費の寄付ができる家門に絞ることなどが話された。選出方法は後日告知と言って締め括った。
 「はぁ、叔父様の声って素敵ね」
 と、リディラが言った。同じ事を思っていそうなご婦人方がバサバサ扇を開いている。
 発表ではあえてモデルケースがどの家門の誰かとは言わなかった。最終会議でくらいがちょうどいいと判断したからだ。おそらくそれはリオンとルゼルだと想像している貴族は多いだろう。だがそれを公爵や経済的に圧倒しているクイン侯爵に直接聞く者はいない。リオンやルゼルはこの計画を知らない。だからでいいのだ。 
 「幼稚園?」
 ユリアンとリゼルが顔を見合わせた後、リオンとルゼルを見た。
 「きっと、入る子…だよね?」
 ますます二人のお友達リサーチを急がなければ!

 新年会はアーネストの話の後、再び王に戻り、王の乾杯の合図で正式に始まった。今日は子どもたちがいる間はお酒の提供はないことになっている。ダンスも子どもたちが居なくなってからのプログラムだ。その分、子どもが楽しみそうな大道芸や芝居といった出し物があり、子どもだけでなく大人も楽しんでいた。
 一通り出し物が終わるとだ。今日は庭園も一部開放されていて、子どもたちも出て良いことになっていた。特別にブランコや滑り台やシーソーなども設置されているということで、子どもたちは一斉に外に出た。
 真冬で少し寒いが今日は晴天だ。子どもたちには寒さはあまり関係ない。
 「ルゼ、いこ」
 「リオン、しゅべりだいしたい」
 きゃー。
 沢山の遊具がある。絵本で見たブランコより大きなブランコがあった。二つ並んでいるブランコだ。
 「いっしょにできる!」
 なんて凄いブランコだ。これも工夫というのか?シーソーを考えた人は天才かもしれない。同じ場所で上がり下がりするだけでこんなに楽しいのだから。
 絵本には世の中に遊園地というものがあると書いてあった。観覧車という部屋ごと回れる乗り物や、ポニーが引く小さい馬車などあるらしい。ここだけでこんなに楽しいのだから遊園地はどれだけ楽しいのだろう。
 遊具は沢山あったが、人気のあるものは並んで順番だ。だが順番を守ろうとしない子どもが時々いた。「やだーっ。すぐのる!」「どいて!」「おさないで!」大きな声で順番争いをしている。
 「…やくそく、きいてなかったのかな?」
 「おかお、こわいね」
 わがままの喧嘩など経験したことも見たこともなかったリオンとルゼルは怖くなった。
 ユリアンたちも心の中で「あれはどこの家門か?あそこはリオンたちに近寄らせたくないな」などとジャッジしていた。
 遊具での争いが激しくなっていたので、リオンとルゼルは「すこし、おにわみにいこ」
 と手を繋いで庭の奥に行くことにした。奥には噴水がある。そこの噴水は時間によって水の出るパターンが変わるのだ。見ていて楽しい。
 二人が噴水に向かっているとどこからか小さな泣き声が聞こえてきた。とても悲しそうに聴こえる。
 「だれか、かなしいってしてる」
 「うん、じゅんばん、おされちゃったのかな?」
 「しゃがす」
 「うん」
 二人は泣き声をたどって行った。そこには花の垣根に隠れるようにしてしゃがんで泣いている男の子がいた。
 「…だいじょぶでしゅか?」
 男の子はルゼルの声に驚いて顔を上げた。もう、長い事泣いていたらしい。目の周りが真っ赤だ。
 「あっ、あっ。ごめんなさい」
 男の子は反射的に謝った。よくわからなくて、ルゼルが聞いた。
 「え?なにかわるいことしましたか?」
 男の子はキョトンとした。
 「じゅんばんでおされたですか?」
 「いたい?」
 男の子は二人が心配してくれているとわかって少し落ち着いたようだ。首を振って否定した。
 「んー?」
 押されてないし、痛くない。だとしたら泣く理由は?
 「ぼく…かわいいものがすきだから」
 男の子は薄い金髪にグレイの瞳を二人に向けて言った。
 「ん?」
 かわいいものが好きで泣く?
 「ぼく、かわいいものがすきなんだ。ホールにかわいいおかしがいっぱいあったから…かわいいかわいいって言ったの。でも、おとこのこはかわいいものすきだと、だめって。おかしいって。おんなのこはなんにもいわれないのに。」
 「え?なんで?」とルゼル。
 「だれが?」とリオン。
 「リタ。いとこのお姉様。こわいの」
 「おんなのこは、こわいこがおおいって、あにゅーれがいってた」
 「あにゅーれ?」
 「アニューレはルゼの兄上だよ。私はリオン・コーク」
 「こーく?え?こうしゃくさま?」
 男の子はびっくりしている。
 「はるぜる・くいん」
 「あっ。えとえと、ぼくは、アデル・ライン」
 「あ、しってる。のおうちよね、らいん
 「え?なんでしってるの?」
 「ルゼのおうちのよんだの」
 「ねー」
 「ねー」
 「はい?」
 どうしてこの人たちは自分の家門を知っているんだろう。それにリタは僕が泣くと「また女の子みたいに、すーぐ泣く」とバカにするのに、全然普通に話してくる。泣きすぎて焦点が合わなかったけど、よく見たらビックリするくらい綺麗な子たちだ。…天使様かな?光ってるし、天使様だな。でも公爵家の名前言ってなかった?あれ?ここどこ?
 「ねえ、かわいいものがすきだと、どうしてだめ?」
 とルゼル。
 「え?あ…。えと、おとこのこらしくないって」
 「えー?私の兄上はね、私のこと、リオンかわいいかわいいって。かわいいからだいすきーっていうよ。でも兄上、かっこいいよ」
 「うん。もアロンがかわいいいうけど、だめっていわれたことないでしゅ」
 「ぼくがすきなのは、お花とか、きらきらしたものとか…おんなのこがすきなものがおおいから…」
 「えー、へんだよ」とリオン。
 「うん、すきなものはすきでいいよね」ルゼルも同じ意見だ。
 「…それ、リタ様がおかしいね」
 「ね」
 「え」
 アデルは考えたことがなかった。リタの方がおかしい?でも自分はいつも皆にもっと男の子らしくしなさいって言われる。だから自分がダメなんだと思っていたのだけど…
 「おとこのこが、お花すきでも?」
 「おかしくないよ。のケンじぃさんは、おとこのこだけど「おはながすきー」っていって、おはなのせわしてるよ」
 リオンに言われてアデルは考えた。確かに自分の家の庭師も男の人で「お花が好き」って言ってたし、母上のところに来るキラキラの宝石を売る人も男の人で「自分が作りました」って言っていた。あれ?好きな物は好きでいいの?
 「ね、アデル、あっちにがすてきながあるの。いっしょいこ」
 「う…うん」
 「ね、アデル、私たちになれる?」とリオン。
 「わ!!すてき!アデル、おともだちになろ」とルゼル。
 「う…うん」ためらいがちにアデル。
 「「きゃー、おともだちできたー」」
 にこにこの二人と「え?え?」と言っている一人が噴水に向かって走って行くのをユリアンたちはしっかり見ていた。
 「一人見つけましたわね!」
 リディラが早口で言った。
 
 
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