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第三章
第二十三話 マグヌスは癒されたい。〜雪です!雪合戦します!
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初めての大役、新年会デビューを果たしたマグヌスは疲れていた。
先の大戦争の戦勝国となったマードは、なんとなく近隣諸国のリーダーのようなポジションになっているらしい。そこの王太子という地位にいるマグヌスは周囲に何かと期待されているのを新年会での大人とのやりとりでヒシヒシと感じた。
マグヌスにしてみたら大戦争は自分が生まれる前の大昔の話なので、大陸全土に平和をもたらすのは今後のマードの在り方にありますとか言われても困ってしまう。平和が良いに決まっているが、周囲の期待は今の平和の維持以上の発展ということのようだ。
わからなくもないだけに責任が重い。
そんなマグヌスは癒しを求めている。目下の癒しは弟のヴァジュラと従兄弟のリオンとそのまた従兄弟のルゼルだ。
というわけで、マグヌスの息抜きのために休みの今日、ユリアン兄弟とリゼル兄弟を王宮に呼んだ。母王妃の配慮だった。
「マグヌス殿下にリオン・コークがごあいさつします」
「まぐぬすでんかにルゼル・クインがごあいさつします」
二人とも言葉が上手になった。
「あぐにゅしゅしゃ」ぺこり。
今日はアロンも来ている。可愛い。こういう感じ、ルゼルに似てる。
「あにー!」ヴァジュラはいつまで経っても「あに」から進まない。もしかして「兄上」ではなく本当に「兄」と言っているのかもしれない。可愛いからいい。
今朝は朝から雪が降っているので、部屋は暖めているが外は寒い。
「寒い中すまないな」
とマグヌスが言う。
「とんでもないです。雪降る中の馬車は初めてなので楽しく来られました」
とユリアン。御者たちは寒かったろうからそこは後でしっかり労いの言葉をかけようと思いながら言う。
「マグヌス殿下!ゆきはね、よーくみるとかたちがあるんです」
「ろっこのとんがりがあります」
「ずかんのとおりでした!」
リオンとルゼルが楽しそうに報告してくる。紫と翡翠の瞳がキラキラしている。これこれ、この感じを欲していた、とマグヌスが笑う。多分、今自分は父王や母王妃が自分やヴァジュラを見る目と同じ目をしていると思う。
「お前たち本当に図鑑好きだな」
「はい、だいすきです。しらないことたくさんおしえてくれます」
「でもでも、ずかんにないこともいっぱいありました!」
「ふーん?どんなことだ?」
二人は話したくて仕方なかった海での話を始めた。
「海です。海のおとは、ずかんにかいてないでした」
そう言ってリオンが「こんなおとです」と言って「ざぶーんざぶーん」と両手を波のように動かしながら言った。それを見たヴァジュラとアロンが大喜びで「じゃぶー」と真似をする。
「かいもずかんのはわれてないでした。でもでもほんとの海には、われたかいのほうがおおいでした」とルゼル。
「マグヌス殿下にわれたかいあげたかったでしたけど、おうぞくのひとには、どうぞしてはだめなんでした」
「ざんねんなの」
しょんぼりする二人にマグヌスが優しく言う。
「お前たち、騎士団にその貝をどうぞしただろう?それをグイン団長から見せてもらったぞ。貝は裏が綺麗だとお前たちが言っていたとも教えてもらったよ」
ぱあぁ。二人の表情が明るくなった。団長がマグヌスに貝を見せてくれた。渡せなかったけど実物を見てもらえた。嬉しい。
「ね、ね、きれいだったですよね?」
「かいのうら、ぴかぴかのきらきら」
「ああ、ピカピカのキラキラだった」
二人は見せたくて仕方なかった貝の真実をマグヌスに見てもらえていたことでテンション爆上がりだ。もちろん「きゃー」と言って手を繋いで、跳ねて回ってパンプキンだ。
それを見たヴァジュラとアロンもなんとなく手を繋いでぴょこぴょこしている。
マグヌスはクルクル回る四人を見て笑った。
「ユリアン、リゼル、お前たちはパンプキンしないのか?」
と、いたずらな顔で聞く。ユリアンたちも余裕の顔で
「さっきさんざんしたので」
「だから目が回ってしまって今はできません」
と冗談で返す。三人で笑った。笑っていてマグヌスは閃いた。
「あ、今ならアレができるかも」
アレとは?マグヌスは侍従のロイに向いて言った
「外でユリアンたちと雪合戦がしたい」
冬休みに入る前に一度だけ雪が積もる日があった。その日の学園の休み時間は皆が雪合戦に興じた。だが、マグヌスは参加を止められた。学園は身分の差は関係なく平等とは言っているが、全てにおいてではない。初雪でハイテンションな子どもの雪合戦の戦場に王太子を放てるわけがなかった。
マグヌスも聞き分けが良いので、理解して大人しく見学していたが、やってみたいに決まっている。
今ならあの雪合戦ができるのでは?ユリアンやリゼルは理性が強いから危ないことはしないし、リオンとルゼルとアロンは全力で投げたところでタカが知れているだろう。ヴァジュラの投げ玉にだけ気をつけていれば大丈夫なはずだ。
ロイも日頃マグヌスが色々我慢していることを知っている。最近は気持ちが疲れていることも知っている。ユリアンたちがむちゃをしないことも知っている。ヴァジュラの投げ玉だけ気をつけておけば大丈夫だろう。
かくして男児七人での雪合戦が実現した。
「ゆきがっせん!」わーい。
「ゆきがっせん!」わーい。
「ゆきー!」うおーっ。
「ゆきぃ?」
弟たちは外に出ると大喜びで走り回った。ユリアンたちに雪玉の作り方を教えてもらい、投げる。
ぽと。リオンもルゼルもたいして遠くには投げられないが、なんだかとても楽しい。アロンは投げずに雪玉作りに熱中している。ヴァジュラはやはり凄かった。「きゃー」と言いながらビュンビュン雪玉を投げてくる。ノールックで投げるのでマグヌスとユリアンとリゼルは逃げるのに忙しい。騎士たちはリオンたちにヴァジュラの雪玉が当たらないように阻止するのに忙しい。
いつの間にかアロンの作る雪玉をヴァジュラが投げまくり、残り全員が逃げるという雪合戦になっていた。
マグヌスは楽しくて大笑いした。みんな大笑いしていた。
そんな男児たちのめちゃくちゃな雪合戦をサロンにいた女性陣がお茶を片手に眺めていた。王妃マディとリリィラとシャロン、それにリディラだ。
リリィラとシャロンは座ってまったりしながら
「元気でなによりよね、男の子は」
「本当に。雪玉一つで楽しめるのも可愛らしいわよね」
と「うふふ」「おほほ」と会話している。一方のマディとリディラは立ち上がり、窓ギリギリまで顔を寄せていつものように盛り上がっている。
「ちょっとちょっとリディラ見ました?今のユリアンの身のかわし方、華麗でないこと?」
「王妃様!リオンがルゼルをヴァジュラ殿下の豪速球からかばいましたわ!」
「見たわよ!それを更にリゼルがかばっていたわよね!」
「結局それも騎士様がかばいましたけど」
「ああ、なんて気持ちの優しい子たちなの。それにしてもヴァジュラのお顔。陛下に似すぎていて笑っちゃうわ」
「ヴァジュラ殿下のお顔は凛々しくて力強くて素敵ですわよね!」
「え?」
マディが視線をリディラに移した。マディがリディラくらいの頃、ヴァジュラに瓜二つの陛下を見て怖くて泣いたことがある。しかも度々。リディラはヴァジュラの眼力が怖くないのか?というか、リディラはマグヌスのことはどう思っている?
「ねぇ、リディラ、マグヌスのお顔はどう思う?」
「マグヌス殿下ですか?いかにも令嬢受けする綺麗なお顔立ちと思います」
サラッと言った。
「やだわ、全然脈なしじゃない」
と言ったマディに、リリィラとシャロンが笑った。
今日は皆が楽しめた。沢山笑った。楽しかった。
夜、寝る前にマグヌスは、こんな日がまたあると良いなと思いながら気持ちよく眠りについた。
先の大戦争の戦勝国となったマードは、なんとなく近隣諸国のリーダーのようなポジションになっているらしい。そこの王太子という地位にいるマグヌスは周囲に何かと期待されているのを新年会での大人とのやりとりでヒシヒシと感じた。
マグヌスにしてみたら大戦争は自分が生まれる前の大昔の話なので、大陸全土に平和をもたらすのは今後のマードの在り方にありますとか言われても困ってしまう。平和が良いに決まっているが、周囲の期待は今の平和の維持以上の発展ということのようだ。
わからなくもないだけに責任が重い。
そんなマグヌスは癒しを求めている。目下の癒しは弟のヴァジュラと従兄弟のリオンとそのまた従兄弟のルゼルだ。
というわけで、マグヌスの息抜きのために休みの今日、ユリアン兄弟とリゼル兄弟を王宮に呼んだ。母王妃の配慮だった。
「マグヌス殿下にリオン・コークがごあいさつします」
「まぐぬすでんかにルゼル・クインがごあいさつします」
二人とも言葉が上手になった。
「あぐにゅしゅしゃ」ぺこり。
今日はアロンも来ている。可愛い。こういう感じ、ルゼルに似てる。
「あにー!」ヴァジュラはいつまで経っても「あに」から進まない。もしかして「兄上」ではなく本当に「兄」と言っているのかもしれない。可愛いからいい。
今朝は朝から雪が降っているので、部屋は暖めているが外は寒い。
「寒い中すまないな」
とマグヌスが言う。
「とんでもないです。雪降る中の馬車は初めてなので楽しく来られました」
とユリアン。御者たちは寒かったろうからそこは後でしっかり労いの言葉をかけようと思いながら言う。
「マグヌス殿下!ゆきはね、よーくみるとかたちがあるんです」
「ろっこのとんがりがあります」
「ずかんのとおりでした!」
リオンとルゼルが楽しそうに報告してくる。紫と翡翠の瞳がキラキラしている。これこれ、この感じを欲していた、とマグヌスが笑う。多分、今自分は父王や母王妃が自分やヴァジュラを見る目と同じ目をしていると思う。
「お前たち本当に図鑑好きだな」
「はい、だいすきです。しらないことたくさんおしえてくれます」
「でもでも、ずかんにないこともいっぱいありました!」
「ふーん?どんなことだ?」
二人は話したくて仕方なかった海での話を始めた。
「海です。海のおとは、ずかんにかいてないでした」
そう言ってリオンが「こんなおとです」と言って「ざぶーんざぶーん」と両手を波のように動かしながら言った。それを見たヴァジュラとアロンが大喜びで「じゃぶー」と真似をする。
「かいもずかんのはわれてないでした。でもでもほんとの海には、われたかいのほうがおおいでした」とルゼル。
「マグヌス殿下にわれたかいあげたかったでしたけど、おうぞくのひとには、どうぞしてはだめなんでした」
「ざんねんなの」
しょんぼりする二人にマグヌスが優しく言う。
「お前たち、騎士団にその貝をどうぞしただろう?それをグイン団長から見せてもらったぞ。貝は裏が綺麗だとお前たちが言っていたとも教えてもらったよ」
ぱあぁ。二人の表情が明るくなった。団長がマグヌスに貝を見せてくれた。渡せなかったけど実物を見てもらえた。嬉しい。
「ね、ね、きれいだったですよね?」
「かいのうら、ぴかぴかのきらきら」
「ああ、ピカピカのキラキラだった」
二人は見せたくて仕方なかった貝の真実をマグヌスに見てもらえていたことでテンション爆上がりだ。もちろん「きゃー」と言って手を繋いで、跳ねて回ってパンプキンだ。
それを見たヴァジュラとアロンもなんとなく手を繋いでぴょこぴょこしている。
マグヌスはクルクル回る四人を見て笑った。
「ユリアン、リゼル、お前たちはパンプキンしないのか?」
と、いたずらな顔で聞く。ユリアンたちも余裕の顔で
「さっきさんざんしたので」
「だから目が回ってしまって今はできません」
と冗談で返す。三人で笑った。笑っていてマグヌスは閃いた。
「あ、今ならアレができるかも」
アレとは?マグヌスは侍従のロイに向いて言った
「外でユリアンたちと雪合戦がしたい」
冬休みに入る前に一度だけ雪が積もる日があった。その日の学園の休み時間は皆が雪合戦に興じた。だが、マグヌスは参加を止められた。学園は身分の差は関係なく平等とは言っているが、全てにおいてではない。初雪でハイテンションな子どもの雪合戦の戦場に王太子を放てるわけがなかった。
マグヌスも聞き分けが良いので、理解して大人しく見学していたが、やってみたいに決まっている。
今ならあの雪合戦ができるのでは?ユリアンやリゼルは理性が強いから危ないことはしないし、リオンとルゼルとアロンは全力で投げたところでタカが知れているだろう。ヴァジュラの投げ玉にだけ気をつけていれば大丈夫なはずだ。
ロイも日頃マグヌスが色々我慢していることを知っている。最近は気持ちが疲れていることも知っている。ユリアンたちがむちゃをしないことも知っている。ヴァジュラの投げ玉だけ気をつけておけば大丈夫だろう。
かくして男児七人での雪合戦が実現した。
「ゆきがっせん!」わーい。
「ゆきがっせん!」わーい。
「ゆきー!」うおーっ。
「ゆきぃ?」
弟たちは外に出ると大喜びで走り回った。ユリアンたちに雪玉の作り方を教えてもらい、投げる。
ぽと。リオンもルゼルもたいして遠くには投げられないが、なんだかとても楽しい。アロンは投げずに雪玉作りに熱中している。ヴァジュラはやはり凄かった。「きゃー」と言いながらビュンビュン雪玉を投げてくる。ノールックで投げるのでマグヌスとユリアンとリゼルは逃げるのに忙しい。騎士たちはリオンたちにヴァジュラの雪玉が当たらないように阻止するのに忙しい。
いつの間にかアロンの作る雪玉をヴァジュラが投げまくり、残り全員が逃げるという雪合戦になっていた。
マグヌスは楽しくて大笑いした。みんな大笑いしていた。
そんな男児たちのめちゃくちゃな雪合戦をサロンにいた女性陣がお茶を片手に眺めていた。王妃マディとリリィラとシャロン、それにリディラだ。
リリィラとシャロンは座ってまったりしながら
「元気でなによりよね、男の子は」
「本当に。雪玉一つで楽しめるのも可愛らしいわよね」
と「うふふ」「おほほ」と会話している。一方のマディとリディラは立ち上がり、窓ギリギリまで顔を寄せていつものように盛り上がっている。
「ちょっとちょっとリディラ見ました?今のユリアンの身のかわし方、華麗でないこと?」
「王妃様!リオンがルゼルをヴァジュラ殿下の豪速球からかばいましたわ!」
「見たわよ!それを更にリゼルがかばっていたわよね!」
「結局それも騎士様がかばいましたけど」
「ああ、なんて気持ちの優しい子たちなの。それにしてもヴァジュラのお顔。陛下に似すぎていて笑っちゃうわ」
「ヴァジュラ殿下のお顔は凛々しくて力強くて素敵ですわよね!」
「え?」
マディが視線をリディラに移した。マディがリディラくらいの頃、ヴァジュラに瓜二つの陛下を見て怖くて泣いたことがある。しかも度々。リディラはヴァジュラの眼力が怖くないのか?というか、リディラはマグヌスのことはどう思っている?
「ねぇ、リディラ、マグヌスのお顔はどう思う?」
「マグヌス殿下ですか?いかにも令嬢受けする綺麗なお顔立ちと思います」
サラッと言った。
「やだわ、全然脈なしじゃない」
と言ったマディに、リリィラとシャロンが笑った。
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