ヒバリの話はだいたい空言

揺音

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第一話.時計屋の話

4.

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昼休みの終わり、僕が席に戻ると、ヒバリの机の上に何か置いてあるのを見つけた。細長い、透明の瓶。中にはキラキラした砂のようなものが入っていた。

「……それ、なに?」

ヒバリが振り返り、いつものニヤついた顔を見せる。

「お、触るなよ。それ、時の砂だから」

「はいはい、また始まった」

「いやほんとに。あの時計屋で貰ったんだって。時間がちょっと削れたときに出る、レアアイテムらしいぜ?」

「時間が削れる?」

「そうそう、気が付かない内に時間が経過することとかあるじゃん。そういう時に出来るんだってよ」

なんか変な汗が出た。昨日の事を少し考える。

「…で、これ何に使えるの?」

「舐めるとね、10秒だけ時間がもらえるらしい」

「10秒だけ?」

「そりゃそうだろ。そんなにいっぺんに時間を削られたら、あっという間におじいちゃんになっちゃうじゃん」

「…」

「でも、舐めるのはおすすめしないよ。塩辛くて美味しくはない」

「え、舐めたの?」

「うん、塩分濃度高めだった」

「それ単に塩のタブレットなんじゃないの……」

僕はため息をつきながらも、つい笑ってしまった。本当にどうでもいい嘘を、堂々とつけるその才能はある意味すごい。

「ていうか、ほんとに時計屋なんてあったのかよ?」

「え?昨日お前、入ったろ?」

「……?」

僕は過ぎた時間を少し思う。ヒバリは肩をすくめた。

「ああ、そうか覚えていないのか」

意味深に言う。

「夢でも見たと思ってた?まあ、夢かもしれないけど。俺らの人生って、わりとフィクション寄りだしな」

チャイムが鳴り、僕らは前を向いた。授業が始まる。

……ふと、ヒバリの机の端に目をやると、瓶のラベルに、英語でこう書いてあった。

"TIME SALT – FOR PASTA OR PARADOX"

僕はもう一度ため息をついた。ポケットの中で、小さく“かちり”と何かが鳴った気がした。
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