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数奇な始まり
日記帳(ep.1)「月明かりに堕ちて」
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アリアドネの雫が夜の闇に溶けて
私を追憶の月光の中へと導いていった
彼女の優しさはふわりと広がるドレスのように
風に柔らかく揺れている
揺蕩う夢のリズムに身を任せて
彼女の腕に引かれるまま
抗うことなく
そっと深い眠りに落ちていく
私を照らす
月明かりの魔法だろうか
その光る帯が瞼の裏に
在りし日の虚像を投影していく
その一つ一つはどれも
見知ったものであるはずなのに
どこか知らない場所へと
迷いこんでしまったかのような
混乱が渦を巻く走馬灯
脳裏に見た彼女は
一体何者だったのか
僕は誘われる死者のように
ただ従うことしかできない
コンコン
窓を叩く音がする
優しい眠りから引き戻されて
徐々に覚醒する瞳でとらえた場所には
窓際のアリアドネ
まだ夜明けには程遠く
もう一度月光の見せる夢の中へと
沈んでしまおうと試みる
しかし
その目論見はあっけなく外れて
徐々に白み始めた窓枠にため息を一つ
優雅に微笑む薄月とアリアドネが
僅かばかりの余韻を残して
朝焼けの中にゆっくりと
消えていくのが見えた
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