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13話 アラン王子殿下がやってくる その3
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ジドル王国のお偉いさん達が、隣国のイシューマ王国を訪れた出来事。本来であれば宮殿内で最高級のもてなしをするのが当たり前のはずだけれど、今回は貴族達がよく使っている高級宿「メロンパン」に招待することになったみたい。
「イシューマ王国の王太子殿下……ラグナ・イシューマ殿が直々にもてなしてくださるとは。これは勿体ない待遇でございます」
「お気になさらずに、アラン・ジドル王子殿下……」
「しかし、まさかレンブラント王宮内ではなく、その近くにある宿屋に案内されるとは予想外でしたが」
「ええ、まったくでございますわ……」
具体的に口に出しているわけではないけど、アラン王子殿下やマリーナ様は、やや不満を持っているようだ。自分達が低く見られているのかもしれないと感じた結果なんだろうけど。
相手側はアラン王子殿下とマリーナ公爵令嬢……それからヘンリックという魔法鑑定人に、護衛達で構成されていた。私達の方は、ラグナ王太子殿下を筆頭にマリアベルや私、王太子殿下直属の護衛で構成されていたので、ほぼ構成員としては同じになる。
今回は公式の訪問ではないので、ジドル王国の国王陛下などは来ていない。できれば来てくれていた方が、王国として私の追放をどう見ていたのか分かるんだけどね。まあ、それは仕方ないか。
現在、私達は高級宿「メロンパン」の一番大きな部屋を借りている。この部屋は両国の構成員全てが入れるだけの部屋でトイレやお風呂も完備、魔法技術により自動で軽食まで出て来る仕様だ。
一般人も泊まれるらしいけど、1泊の価格が平民の給料2か月分くらいに相当するらしいので、ほぼ貴族階級しか泊まれないとのこと。
「……と、いうように一般人の平均的な給料の2か月分相当の、大変豪勢な部屋となっております。今回はこちらで、許してもらえないでしょうか?」
「まあ……王太子殿がそのようにおっしゃるのであれば、今回はこちらで良しとしましょうか」
アラン王子殿下は渋々ながら認めたようだった。どこまでも、自分のことを特権階級と思っているのね。
「さて……それでは本題に入りましょうか? ご用件はなんですか?」
ラグナ王太子殿下はとっくに相手の用件は知っている。それでも敢えて、質問から入っていた。これは相手への敬意なのか、皮肉なのか……おそらくは後者かしら?
「……用件は」
「ええ、なんですか?」
「そちらに居るウィンリー・トレートを是非、我がジドル王国に戻したいと考えている」
びっくりするくらいの直接的な回答だった。回りくどいことは言わなかったので、ある意味では清々しいとさえ言える。
「……今更、だとは思わないのですか?」
「なぜそう思う必要があるのですか? ウィンリーは元々、我がジドル王国の住人だ」
「そうですわよ、ラグナ王太子殿下。まあ、私としましては必要ない存在なのですけど」
「マリーナ……少しだけ大人しくしてもらえないか?」
「……わかりましたわ」
アラン王子殿下の軽い叱責によって、マリーナ様は黙った。不満気な顔を募らせながら。
「率直に言いましょう、ラグナ王太子殿下。今、我が国のポーションなどの生産ラインは大きな穴が開いている。その穴は本来であれば、マリーナ一人で埋められたのですが……少々、難しいことが分かりました。それで、ウィンリーに再び戻ってもらい、穴埋めをしてもらいたいんですよ」
アラン王子殿下から反省の色は感じられない……私がどのように回答するか、予想していないのだろうか? いえ、流石にそれは予想出来ているはず。つまりここからは、私を連れ戻す為の交渉が始まることを意味していた。
「イシューマ王国の王太子殿下……ラグナ・イシューマ殿が直々にもてなしてくださるとは。これは勿体ない待遇でございます」
「お気になさらずに、アラン・ジドル王子殿下……」
「しかし、まさかレンブラント王宮内ではなく、その近くにある宿屋に案内されるとは予想外でしたが」
「ええ、まったくでございますわ……」
具体的に口に出しているわけではないけど、アラン王子殿下やマリーナ様は、やや不満を持っているようだ。自分達が低く見られているのかもしれないと感じた結果なんだろうけど。
相手側はアラン王子殿下とマリーナ公爵令嬢……それからヘンリックという魔法鑑定人に、護衛達で構成されていた。私達の方は、ラグナ王太子殿下を筆頭にマリアベルや私、王太子殿下直属の護衛で構成されていたので、ほぼ構成員としては同じになる。
今回は公式の訪問ではないので、ジドル王国の国王陛下などは来ていない。できれば来てくれていた方が、王国として私の追放をどう見ていたのか分かるんだけどね。まあ、それは仕方ないか。
現在、私達は高級宿「メロンパン」の一番大きな部屋を借りている。この部屋は両国の構成員全てが入れるだけの部屋でトイレやお風呂も完備、魔法技術により自動で軽食まで出て来る仕様だ。
一般人も泊まれるらしいけど、1泊の価格が平民の給料2か月分くらいに相当するらしいので、ほぼ貴族階級しか泊まれないとのこと。
「……と、いうように一般人の平均的な給料の2か月分相当の、大変豪勢な部屋となっております。今回はこちらで、許してもらえないでしょうか?」
「まあ……王太子殿がそのようにおっしゃるのであれば、今回はこちらで良しとしましょうか」
アラン王子殿下は渋々ながら認めたようだった。どこまでも、自分のことを特権階級と思っているのね。
「さて……それでは本題に入りましょうか? ご用件はなんですか?」
ラグナ王太子殿下はとっくに相手の用件は知っている。それでも敢えて、質問から入っていた。これは相手への敬意なのか、皮肉なのか……おそらくは後者かしら?
「……用件は」
「ええ、なんですか?」
「そちらに居るウィンリー・トレートを是非、我がジドル王国に戻したいと考えている」
びっくりするくらいの直接的な回答だった。回りくどいことは言わなかったので、ある意味では清々しいとさえ言える。
「……今更、だとは思わないのですか?」
「なぜそう思う必要があるのですか? ウィンリーは元々、我がジドル王国の住人だ」
「そうですわよ、ラグナ王太子殿下。まあ、私としましては必要ない存在なのですけど」
「マリーナ……少しだけ大人しくしてもらえないか?」
「……わかりましたわ」
アラン王子殿下の軽い叱責によって、マリーナ様は黙った。不満気な顔を募らせながら。
「率直に言いましょう、ラグナ王太子殿下。今、我が国のポーションなどの生産ラインは大きな穴が開いている。その穴は本来であれば、マリーナ一人で埋められたのですが……少々、難しいことが分かりました。それで、ウィンリーに再び戻ってもらい、穴埋めをしてもらいたいんですよ」
アラン王子殿下から反省の色は感じられない……私がどのように回答するか、予想していないのだろうか? いえ、流石にそれは予想出来ているはず。つまりここからは、私を連れ戻す為の交渉が始まることを意味していた。
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