追放された宮廷錬金術師、彼女が抜けた穴は誰にも埋められない~今更戻ってくれと言われても、隣国の王子様と婚約決まってたのでもう遅い~

まいめろ

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14話 交渉 その1

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「さてさて、如何でございますかな?」


 アラン王子殿下はとんでもないことを言っていることに気付いている様子はない。この人の面の皮の厚さはどのくらいあるんだろうか? 一度、計ってみたいくらいだった。

「アラン王子殿下……その質問に対して、私が何と回答するかはお分かりではないですか? もちろん、ウィンリーの回答も分かっていると思いますが……」


「……」


 私はこの場には居たけれど、いきなり発言をすることは避けていた。特にラグナ王太子殿下に止められているわけではないけど、空気を読んで。


「それは条件次第ではないですかな? 我々は給料面で今ままでの2倍を出す予定ですよ」

「2倍……ほう」


 あれ、本当に交渉っぽくなってきた……アラン王子殿下は本気で私を連れ戻す気みたいね。隣に居るヘンリックっていう人の入れ知恵かもしれないけれど。でも、こうして考えると本当にジドル王国の未来が心配になってきた。


「ウィンリー、今までの2倍の給料というのはどうなんだ? 待遇的に」

「ええと、そうですね……」


 確かジドル王国で働いていた時の1か月の給料は20万ゴールド。他の職業と比べて高いかどうかは置いといて、生活にそこまで苦労することはないレベルだった。


「2倍ということになりますと、40万ゴールド、ということになります。そうですよね、アラン王子殿下?」


 私は念押し確認をするようにアラン王子殿下に詰め寄った。なにせ、私は今までの給料の残額を没収されているんだから。ここに来て、腹立たしさが増してしまっていた。


「あ、ああ……その通りだ。40万ゴールドも出せば、問題ないだろう? この高級宿でも1泊出来てしまうんじゃないかという額ではないか!」

「確かに、この高級宿で泊まれる給料となれば……ただし、1つ大きな問題があります。あなた方が正式にその額を支払うのか、ということですね」

「ぬう……どういうことかな? ラグナ王太子殿下……?」


 アラン王子殿下の顔色が明らかに変わった。もしかして、支払う気はないのかしら? もしも出まかせを言っているんなら、許せないけれど……。


「ウィンリーにした行為を考えれば、信用できないのは当然でしょう? それに……ウィンリーは稀に見る錬金術師だ。そのアイテム精製の純度も非常に高い。そちらが40万ゴールドを出すというのなら、私達はその倍を出しても構わない」


「な、なに……80万ゴールドだと……!?」


「ええ、これで、ウィンリーがそちらへ向かう理由が無くなりましたね」


 なんだかオークション会場の競りの時の雰囲気になってきた。私をここに同行させたのは、こういう意味合いがあったのかもしれない。まだまだ交渉は続いていく……。


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